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人生最後に見る君  作者: Re:over
第2章〜中学校編〜
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32話 拳を掲げて


「敵チームは守りを固めるらしい。攻めの人数を少なくして、連携を取りやすくするつもりなんじゃないかな」


 僕は偶数クラスの作戦を盗み聞きして、その内容に僕の考えを付け足して発表した。その場にいた各クラス代表の2名は口々に質問をぶつけてくる。


 各階にあるスタディルームというオープンスペースがある。そこの一角には机と椅子が固定された場所があり、休み時間に他クラスの友達との憩いの場になっていた。僕も休み時間に熊雄や渉なんかとここで集まって雑談したり、勉強したりする。


「守りが固くなるのなら、攻められないんじゃない?」


「それを知っても対策できなくね?」


「もっとちゃんと聞いてきた方がいいんじゃない?」


 自分の言い方が悪かったことを少し後悔し、代表を落ちつけるように手のひらを見せた。そして、静かな声で言う。


「守りを固めるってことは、棒の近くに協力な壁を作るから、外側の壁は比較的簡単に攻略出来るってこと」


 僕はペンでノートに図を描いてみせた。


「だから、僕たちは壁を剥がすように棒へ近づけばいいんだよ。攻撃チームを2グループに分けて、一方は外側から、一方は内側に潜り込んで、そこから防御を崩していく」


 僕はドヤ顔で図にある敵チームの壁に線を入れる。他に意見がありそうな人がいないか代表それぞれの顔を覗いた。どの顔にも、疑念を抱いているような表情は浮かんでいない。


「よし、とりあえず棒倒しはこれでいいかな?」


 全員が異論無しということを確認すると、次の話に進んだ。想像以上に手応えがあって安心した。


「よし、じゃあ次は騎馬戦。これは囮作戦がいいと思う」


 今度は騎馬戦の図を描いた。


「敵の陣営へ無謀に突っ込み、敵陣の真ん中で敵の気を引きつける。その間に、他のメンバーで鉢巻を奪うって作戦でいいと思う」


 言葉に合わせて線を引き、敵の騎馬隊にバツをつけていった。


「どう?」


「なるほど。いいと思う」


「なんか、これなら余裕で勝てそうだな」


「よし、じゃあこれで」


 一方的な作戦会議になってることに気がついたが、もう遅かった。その後解散して、僕は教室に戻った。放課後ということもあり、教室に残っているのは1人しかいない。


 教室に夕日が差し込み、その光を机が乱反射する。窓は全開にされており、風が吹くたびに心地よい涼しさを味わえる。


「あ、啓太! 早かったね」


 自分の席で教科書とノートを広げて勉強していた亜子が僕に気づいた。


「まぁね。意見がすんなり通ったから早く終わった」


「ねぇ、この後時間予定空いてる?」


「うん。今日はアルバイト休みだから、空いてるよ」


 亜子は空いてるという言葉を聞くと嬉しそうな表情をした。そして、上目遣いで僕の目を見つめる。


「その……ここ教えてくれない?」


 そう言って練習問題を指した。僕は全ての全てを押さえつけてやっとの思いで自分という人間の人格を保つことができた。何という破壊力だろうか。この地球はおそらく、既に壊れてしまった後の姿なのだろう。


「もちろんいいよ」


 そう言いながら、亜子の前の席から椅子を借りた。そして、日が暮れるまで2人で勉強した。この上ない幸せを感じながら。




***




 体育祭の前日。


 残暑がグランドを覆い尽くし、太陽は堂々と僕たちを眺める。風は砂を宙に浮かせて遊ぶ。


 練習に練習を重ね、ついにリハーサルの日がやってきた。クラスのやる気は暑さを忘れさせるほどで、爽快にも感じられる。整列から入場まで滞りなく進み、準備運動が終わると、僕たちは出番が来るのを待った。


 2、3年生の試合はえげつないもので、観客視点では、何が起こっているのかわからないし、何より迫力があって、見ている人たちを釘付けにする。運動場に熱気が溢れかえったように闘志が揺さぶられる。たった1年間で、僕たちもあんな風になるのかな。そう考えると恐怖すら感じた。


 そんな演技を披露された後に、僕たちの出番が控えている。順番が逆のような気がするが、先生方の意向なので仕方がないことだ。まず最初の出番は、女子の騎馬戦。次に男子の棒倒しで、最後に障害物競争である。


「よーし! みんな、張り切っていくぞ!」


「おう!」


 平井が士気を高めようと拳を空へ向かって伸ばした。すると、クラス全員が後に続いて拳を掲げた。


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