表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/23

06

 八幡克太は、いつものコースである、古本屋、喫茶店、図書館と逍遥を終えた。

 日は既に暮れ、飲み屋の客引きの声が甲高く街に木霊する。

 克太は古本屋で買った数冊の本を片手に抱えて夕方の街を闊歩した。

 人は芋洗い状態に増え、仕事を終えた者、学校を終えた者たちの祝祭的な雰囲気に街は染まった。

 克太は早くこの中心街から離れたい気持ちから足取りを速めた。

 ――どいつもこいつも飲みに行くって雰囲気だな…。畜生。

 克太はぶつけどころの無い苛立ちを積もらせていた。

 また、この人混みが苛立ちを加速させた。

 克太が足早に歩いていると、

 「あの、もし…」

 と、声を掛けてくる女に捕まった。

 克太はちらりとその女に視線を向けた。

 スーツ姿にタブレット、きっとなにかの勧誘かアンケートだろう、と克太は思った。

 克太は顔を向けもせずすたすたと無視して歩き続けた。

 克太の横顔を見た女は、

 「あっ!」

 と、声を上げて、タブレットと克太の横顔を見比べた。

 それから、克太に並んで歩き始めて、必死に声を掛ける。

 「あのっ、待ってください!もしかして、あなたは…」

 克太は聞く耳持たずといったように徹底して無視して歩き続けた。

 スーツ姿の女は、克太の歩幅についていけなくなって段々と距離を離されていく。

 「あの!待ってください。お願いだから…」

 女の声が弱弱しく響くも、克太の耳にはもう入ってこなかった。

 女は諦めたように歩みを止めて、克太の背中が人混みの中に消えていくのを呆然と見詰めていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ