04
克太は駅の自動改札を抜けて、ホームのベンチに座った。
ホームには、人影は少なく、ぱらぱらと数人のグループが二つ三つあるだけだった。
大学生だろうか、その多数は私服で容姿も若かった。
ある一つのグループは、女子男子が混じって楽し気に大きな声で笑い合っていた。
「今度鎌倉行こうよ!この皆でさ」
「きゃぁ、いいわね。行きましょう」
「俺、車出すよ!親の車借りてさ」
そのグループの話し声は、離れた克太の耳にまで嫌でも入ってきた。
克太はその様子を憧憬の眼差しで眺めて、ため息のかたまりを吐いた。
――この間まで俺も大学生だったんだな…。今、思い返すともっと色々と 〈なにか〉をやっておけばよかったな…。遊びにしろ、勉学にしろ。
後悔の思いは矢継ぎ早に克太の頭に湧いては、ため息として外に漏れた。
しばらくの間、そうやって後悔の念を帯びながら、その賑わっているグループを眺めていた。
そのうちに、電車到着のアナウンスがホームに響き渡った。
――今日はどこへ行こう…。
克太の頭に思い浮かぶのは、全国チェーンの古本屋か、長居できる喫茶店、もしくは図書館と、片手で足りる数しかない。
克太はもそもそとベンチを立ち上がった。
――どうせどこへ行ったって同じだ…。何も変わらないんだ。むしろ俺は何を期待しているんだ?あぁ、もうどうでもいいや。今日も喫茶店で呆けていよう…。
克太は到着した電車に乗った。
どの車両も座席はある程度空いていたが、わざわざ空いている車両まで移動してから座った。
そうしてから、克太は腕を組み、眼を閉じて、意識を薄めていった。