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克太とソフィアを乗せた電車は、アパートの最寄り駅に到着した。
ぎゅうぎゅう詰めの電車から、二人はやっとのこと降りる。
ソフィアはひぃひぃ息を切らせながら克太に話しかける。
「こんなに人が密集した所、初めてです…」
「まぁこの時間帯はしょうがないね…」
克太もげっそりと疲れた表情で答えた。
駅を出た二人はアパートに向かって、並んで緑道を歩いた。
「ソフィアが言っていた縁っていうのは、穂村花音の事だったんだね」
「はい、彼女と出会えば協力者になってくれると私の能力が告げたので」
克太はぽりぽりと鼻の頭を掻いてソフィアに言う。
「まぁ、ソフィアが天使だってこと、少しは信じてもいいかな…」
ソフィアはぱあっと表情を花開かせて、
「ホントですか!わぁ、嬉しいなぁ」
と、笑顔で答えた。
「ま、少しだよ、少し」と、克太は付け加えた。
克太の頬は、アルコールのせいでほんのり赤みを帯びていた。
一方ソフィアは、酔ったような様子はまるで無かった。
ふと克太は疑問に思っていたことを思い出した。
「そういえば、天上界には飲み会っていうものは無いって言ってたけど、お酒はあるの?」
「はい、アルコールはありますね。ちなみに飲んだこともあります」
「あ、そうなんだ。道理で酔ってないわけだ」
ソフィアは自慢げに鼻息を鳴らして、
「そうですね、あの程度なら全然平気ですね」
と息巻いた。
二人はそんな他愛のない話をして緑道を歩いて行った。
アパートについた二人は、どっと疲れが押し寄せたのかすぐに寝る支度を始めた。
克太は冬用の布団を収納から出して、床に敷いた。
ふと克太は、昨晩ソフィアがスーツのまま寝たことを思い出した。
「あ、そうだ。昨日は気がつかなくてごめん…。寝巻、貸してあげればよかったね」
「そんな。準備してこなかった私が悪いんです…」
克太は、タンスから一組のスウェットを取り出してソフィアに渡した。
「これ、使ってよ。新品じゃなくて悪いけど」
「そんなことないですよ。ありがとうございます」
「着替える場所、台所しかないけど…」
「はい、着替えてきますね」
着替え終わったソフィアが部屋に戻ってくる。
「昨日もそうだったけど、ソフィアはベッドで寝ていいから」
ソフィアは申し訳なさそうにそれに答える。
「なんかすみません…」
「いや、いいよ。それよりもう寝よう…。今日は疲れたよ」
克太はそう言うと布団の上に身体を放り投げた。
ソフィアも、ベッドに横になり、布団を被った。
「はい、克太さん、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ…」




