02
「テレビの前の皆さんこんにちは、今週も趣味の園芸の時間がやってまいりました。今回は…」
だしぬけに携帯のバイブレーションが部屋に響いた。
克太はびくりと身体を跳ね上げてから、恐る恐る携帯に手を伸ばした。
――前にバックレたバイト先からだろうか…。
克太がその発信者を確認すると、そこに大学一年になったばかりの妹の名前が表示されていた。
克太は、大きくため息の塊を吐きだすと、携帯をベッドに放り投げた。
しばらくの間、携帯は振動し続けたが、やがて鳴りやんだ。
克太はそれを確認するとまたテレビの方をぼんやりと眺め始めた。
ふと、克太は自分の空腹に気がつく。
――腹減ったな…。
そういえば昨日の晩から何も食べてなかったな。はぁ、面倒だけど何か食べるか。
何かすぐ食べれるものあったかな…。
克太は腰を重そうにのっそりと上げると台所に向かった。
台所の収納を一つ一つ開けていく。
「あ、乾麺があるな。これでいいか」
克太は小さめのアルミの鍋を出すと水道水をなみなみと注いだ。
かちかちとガスコンロに点火して、水が沸騰するのをぼうっとして待った。
手持無沙汰になった克太は、先ほどのニュースを思い返して煩悶した。
特に作家のコメンテーターの言葉に腹が立ってきた。
――無職全員が全員、犯罪者になる訳でもないだろうに。
確かに社会を蔑視しているという点は否定できないけど…。
そもそもこの無職が増えた社会、誰が悪いとか決められることなのだろうか。
俺自身が悪い、きっとそうだろう。社会が悪い、きっとそうだろう。
親が悪い、遺伝と環境か…、それもあるかもしれない。
いや、原因はもうどうでもいいんだ…。
俺はこう育ってしまった。もう働きたくないという気持ちが強くなり過ぎた。
これからどうするかが、問題なんだ。
これからなんだ…、これから…。
鍋の水はすでに沸騰してぼこぼこと湯だっていた。