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 克太とソフィアは二人とも自分のスマホの時計に集中していた。

 「「あっ」」

 二人同時に声を上げた。

 「五時に…なったね…」

 ソフィアは固唾を飲んでから答える。

 「そう、ですね…」

 ――いらっしゃいませー。

 喫茶店のドアが開き、一人の女性が入って来た。

 黒い長髪にすらりと伸びた四肢がきびきびと動く。生真面目そうなその顔は、凛々しさを帯びている。

 その女性は、丁度空いていた、二人の席の隣に案内された。

 克太はちらりと目線だけ、その女性に向けた。

 その女性も克太の方を見ていて、視線がぶつかった。

 二人は見つめ合ったまましばらく体を固めた。

 ((どこかで見たことある顔だな…))

 ソフィアはおろおろと二人の顔を見比べる。

 少ししてから、その女性ははっと何かを思いだして克太を指さした。

 「あなた、もしかして克太君?八幡克太君だ?」

 克太の方は、未だにその女性のことがわからないままで、質問に答えた。

 「え、ええ。そうですけど…」

 「えーっ、やっぱり!」

 その女性は、驚きと喜びで、両手を口の前に持ってきて叫んだ。

 ――やばい、思い出せない…。

 克太は必死で記憶を遡って、その女性を思い出そうとする。

 「私のこと覚えてる?もう忘れちゃったかなぁ…」

 克太は焦りながら、ぼりぼりと頭を掻く。

 「あー、いや、その」

 と、もごもごと言いつつ視線を泳がせた。

 そんな克太の様子を見て、ソフィアが身を乗り出して耳打ちする。

 「克太さん、小中高と同級生だった穂村花音さんですよ…!花音さん!」

 克太は慌てて姿勢を正し、取り繕って花音に答えた。

 「穂村花音、花音じゃないか!いや久しぶりだなぁ高校以来かな」

 克太は両手を広げて大げさな身振りをした。

 「覚えててくれたんだ。ホント久しぶりだねー」

 花音はそう言いながら、克太たちの隣の席に座った。

 それから花音は、両手いっぱいに抱えていた荷物を下ろすと、店員にコーヒーを注文した。

 花音は克太の隣に座っているソフィアに視線を向けた。

 「どうも、初めまして。穂村花音って言います」

 ソフィアは慌てて背筋をぴんっと伸ばして、

 「あ、あ、天塚ソフィア希と言います。初めまして」

 克太はソフィアが名刺を出すのではないかとハラハラした。

 花音は二人を交互に見るとニヤリと頬を上げて、克太に視線を移し身を乗り出し尋ねる。

 「…もしかして、克太君の彼女さん?」

 克太は慌てて頭を振って、

 「違う違う、ただの友人、友人だって。ね、ソフィアさん」

 急に話を振られたソフィアは慌てて、

 「え、え、あ、そうです。友人です友人」

 と、話を合わせた。

 花音は少しつまらならなそうな表情になって、

 「ふぅん…」

 と息を漏らした。


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