第95話 城での一夜と目覚め
タイトル変更しました。
初めて会った頃、自分の事を「我」なんていったり、偉そうな話し方をしていたはずの面影はどこにもなく、今はただひたすらに「僕の自由、僕の自由…」と、壊れたラジオのように遠くを見つめたまま呟くサラ
そんなサラの姿に、ノアとシアとディーは励ま続けていたのだが、お手上げとばかりに今では諦めて放置し、俺達は時間潰しとしてディーに今までの出来事等を話をしていた。
ノアとシアがメインに話をし、俺が所々美化された部分の訂正といった感じで話をしているのだが、それを楽しそうに聞き続けるディーの姿に、ノアとシアのテンションと美化率がアップしていき、途中で俺は訂正する事を諦めたほどだ。
そしてそんな風にしてしばらくの時間が経ち、先に入っていた女性陣を代表し、ミールが俺達にお風呂が空いたと知らせに来てくれたのだ。
それを聞いた俺達は話を区切り、未だに壊れたラジオ状態のサラをつかみ上げた俺は俺の頭上に載せてから、ノア、シア、ディーの二人と一匹を連れてお風呂へと向かった。
風呂場に入ると、お客用とはいえ、流石は一国の城に設けられたお風呂、洗い場や湯船は木材で作られており、その湯船には5,6人がのびのびと浸かれる程の広さがあった。
いつもならば風呂場でもそれなりにイチャついたりしているのだが、今日は我が家で無く他国の城という事もあり、イチャつきタイムは控えめにし、ゆっくりと湯船に浸かり、今日の疲れを癒していた。
それから10分程経ち、十分過ぎるほどに体が温まったところで揃って風呂から上がった。
既に時間は夜の10時を過ぎている。
起きていても特にする事も無い、しいて言うのなら今夜一緒に眠るエルフの双子姉妹をじっくりと可愛がる位なのだが、今いるのは他国の城の客室である。
しかも今この部屋にいるのは俺達3人だけではない、お風呂の中でもみくちゃに全身を洗われた事で、壊れたラジオ状態から復活したサラと、契約したことにより今日から我が家の一員となったディーの2匹がいる。
確かに風呂場では2匹が一緒でありながらもイチャついていた訳だが、流石に夫婦の営みの本番まで見られながら致すつもりは無い。
なので今夜は抱きしめて寝る程度にしておこうと思う。
「さぁ、それじゃ今日はもう寝ようか」
「そうですね、ウンディーネ様にまだまだお話をお聞かせしたいところですが、続きはまた今度にしましょう。
時間はいくらでもありますしね」
「そうだね、ボクもう眠いや。主様、お布団の中に入ろ?」
右腕をノアに、左腕をシアに掴まれ、ベッドへと引っ張られ、3人仲良く布団の中へと潜り込む。
そしてベッドの空きスペースにサラとディーも寝転がり、丸くなる。
「それじゃ、灯り消すぞ?」
「うん。おやすみなさい主様」
「おやすみなさいませ主様」
「おやすみ~ふぁ~」
「ヌシ様、良い夢を」
部屋の明かりを消すための魔石がベッドの横に置かれてあり、それに手を伸ばして部屋の明かりを落とすと、両サイドに眠る二人に抱き着かれるようにして眠りへとつくのであった。
翌朝、ドアをノックする音に俺の意識は目覚めて行く。
そして次に扉の向こう側いるマルガの声が聞こえてくる。
「おはようございます。朝食の準備が整いましたのでお持ちしました」
どうやら俺達の朝食を運んできてくれたらしい。
「どうぞ」
「失礼します」
そう言うと、マルガが扉を開き朝食を乗せたカートを押して部屋の中にあるテーブルの前へ運んでくる。
そしてカートの上に置かれたパンやサラダ、そして野菜のスープをテーブルの上へと並べていく。
その間、未だに俺の両サイドですやすやと眠る二人を起こす為、その体を優しく揺さぶる。
「んっ・・・・ん~?」
「ふゎぁ~、はぁ、おはよう主様」
身体を揺さぶられてようやく目を覚ました二人。
だがノアはまだ完全には起きていないのか、すこし寝ぼけた感じになっている。
それに対し、シアは大きく欠伸をしたかと思うと、直ぐに布団から起き上がりテーブルへと歩いていく。
そんな目覚めの良いシアの姿を見た後、まだボ~としたままのノアの手を引き、朝食の用意がされているテーブルへと連れて行ってやることにした。
ノアをイスに座らせ、俺も空いているイスへと座ると、カートから朝食をすべて出し終えたマルガは俺に向かい、この後の予定を告げる
「ナツキ様、国王様より伝言でございます。本日午前9時に会議室に来て欲しい、との事です」
部屋の入り口の扉の上に備え付けられている時計を見ると、今は午前7時52分を指している。
つまり約1時間後という事になる。
「わかった。それまでに準備は済ませておくよ」
「では、5分前にお迎えに参りますので、それまでごゆっくりどうぞ」
そう言い残し、マルガは空のカートを押しながら部屋から出ていくのであった。
「それじゃ頂こっか」
「うん。いただきまーす」
「いただきまふ」
目の前に並ぶ朝食へと手を伸ばし、朝の活力を得て行く。
ゆっくり味わいながらも食べ続けていく。
そして20分程経った頃、全てのお皿が空になり、朝食が終わる。
マルガがこの部屋を訪れるまで残り30分と少し、その間の時間に皆との朝のスキンシップをしておこうと思い、シアに頼んで隣の部屋からミール達を呼んで来てもらう事にした。
そうして全員がこの部屋に集まったところで、ミールから順に、ノア、シア、ミリー、エル、レイの順に髪を梳き、それぞれに似合う髪型へと纏めて行く。
ミールは頭の可愛いお耳が目立つよう、その腰まである長い髪を背中の中心あたりで一つに束ねるだけにし、ノアとシアは二人の髪の長さは違えど、左右対称になるようにサイドアップにしてみた。
そしてミリーは両耳のあたりを編み込みにし、残りはそのままストレートに、エルは背中の白くきれいな翼が隠れないようサイドテールにして肩から前に流す感じに、レイは本人の希望でポニーテールになった。
こうして全員の髪のセットが終わり、その完成した皆の姿を見て、ここ最近でどんどん髪のセットがうまくなっている事に満足していると、部屋の扉が軽くノックされる。
どうやらちょうど時間となったようだ。
ミール達を連れ、部屋から出ようと扉を開くと、その先で俺たちを待っていたマルガは「それではこちらです」と、俺達はリカルト王の待つ会議室へとマルガの案内される。
俺達が泊まった客室から会議室まではそう距離も無く、すぐに到着する。
俺達を案内していたマルガがその扉をノックする。
「国王様、ナツキ様達をお連れしました」
「おお、来たか!入ってもらいなさい」
そのリカルト王の返事を聞き、マルガは「失礼致します」と扉を開き、俺達は昨日の続きを話すべく、会議室へと入るのであった。
次回 第96話 他所の街
この1話を読み終えて、全く話進んでないじゃん!って思われた方もいらっしゃると思います。
はい、まったくもってその通りでございます。
すみません!
個人的にはもっとストーリーの進行速度を上げるべきでは?なんて思っています。
なので、次回からすこ~~~しだけでもストーリーの進行速度を上げて行こうと思います!
但し、1話の投稿速度は上がる事は無いかと思われます。
(上がるように努力はしますよ?眠気に負けない限り)




