第94話 これからの予定
用意された客室の前までやって来た俺達一行。
流石に1部屋で7人が眠ることは出来ないという事で、2部屋用意してくれたようだ。
用意されていた2部屋は隣同士で、どちらの左右が対象なだけで、部屋の中は同じ造りとなっている。
部屋の右奥には4,5人で寝れるようなキングサイズのベッドがあり、部屋の中央には豪華なテーブル、それからその周囲には4つのイスが置かれているだけのシンプルな部屋だ。
2つの部屋の扉の前に立っている俺たちは、今夜はどのように分かれるかと話し合った。
その結果、向かって右側の部屋には俺とノアとシア、それに未だに落ち込んでいるサラとそれを慰めているディーの3人と2匹が、そして左側の部屋の方にはミールとミリーとエルとレイの4人という感じに分かれる事となった。
部屋割りがきまり、分かれて部屋に入ろうとしたところで、眠る前に少しでもさっぱりとしたいと思い、マルガに身体を拭くための湯を頼んでみると、案内された二つの部屋の正面がお客様専用のお風呂らしく、そちらを利用してよいとの事。
そこの風呂は5人程が一緒に入れる広さで、いつでも利用出来るよう湯が張られているようなので、交代で使わせてもらうことにした。
「それじゃ先にミール達から入ってきなよ」
「わかりました、それじゃ先に使わせてもらいますね。ミリー、エルちゃん、レイさん、行こ」
4人が風呂場へと入っていくのを見た後、マルガが俺達の泊まる部屋のさらに右奥にある部屋の前へと行き立ち止まるとこちらに向かい振り向く。
「それでは私はこちらの部屋に控えておりますので、何か御用があれば部屋のベッドの横に置いてあるハンドベルをお鳴らし下さい」
「わかりました。後でミール達にもその事を伝えておきます」
「では、失礼します」と言うと、マルガは部屋の中へと入って行く。
残った俺達3人と2匹も、このままここに居ることもないので、部屋へと入った。
ベッドダイブするのは風呂に入ってからにしたいので、とりあえず俺たち3人はイスに座り、サラはテーブルの上に着地、続いてその隣りにディーも着地した。
「サラ様、元気出して、ね?主様もサラ様が主様の為に頑張ればきっと外してくれますから」
「そうだよ、それに主様だってむやみやたらにお仕置きなんてしないって!」
テーブルの上に着地した後、右前足で[の]の字を書き始めたサラを見て、エルフ姉妹もディーと一緒に励まし始めた。
二人共こちらをチラチラと見ながら。
「残念だが、外し方については聞いていない、けど、お仕置き云々はよっぽどの事をしない限りはしないと約束する」
外せないという事実を聞いたサラはその体をテーブルに預けるかのように、ペタンと倒すのであった。
「後もう一つその首輪には効果があるんだが、聞く?」
「もう一つの効果ってなにさ」
サラは顔だけをこちらに向け、少し泣きそうな声で尋ねる。
「その首輪つけてる限り、俺の許可無しに精神だけの移動は無理」
ガーン!とバックに見えそうな程にショックを受けた表情になるサラ。
そしてテーブルをまるでトカゲが這うようにして俺の前まで来るなる、泣きそうな表情を俺の眼前へと持ってきた。
「やだやだやだ!せめてそれだけは自由にさせてよ~!
自由気ままにあちこち行くのは僕にとって大事な気晴らしなんだよ~!
お願いだよ~神様女神さまナツキ様~~~!!]
かつてこれ程までに本気でお願いしてくる姿を見たことがあっただろうか、いや、無い。
それほどまでに必死に訴えかけてくるサラの姿に、少し同情の余地があるような気がする。
まぁ、まだ出会ってそんなに長いわけではないのだが…
「ヌシ様、私からもお願いします。私達のような存在にとって、精神体として自由に世界を見て回るのは生きる上での数少ない楽しみの一つなのです」
「主様、さすがにサラ様がかわいそうだから、それくらいは許してあげて?ね?」
「そうですね、私もこのようなサラ様の必死な姿は見たことありませんし、それにウンディーネ様の言っていた、数少ない楽しみの一つというのなら尚更」
二人と二匹にこうもお願いされると、流石にそれくらいならという気にもなって来る。
もし俺自身、人生の楽しみの一つである嫁たちとのスキンシップを禁止されてしまうと、多分今のサラの様になってしまうだろう。
そんなもしもという状況を考えた末、小さくため息を一つ零し、未だに目をウルウルさせながら俺の顔を見ているサラと視線を合わせた。
「サラ、流石に俺に許可をもらわずにという事は出来ないようだが、今後はちゃんと俺に念話なり口頭でなり言えばその都度許可はしてやるよ」
「ホントに!?」
「ああ、それと今度女神様にソレの外しかたも聞いておいてやる。
但し、もしサラが何かしらの悪さや俺を怒らせるような事をさせた場合は、もう一度取り付けてお仕置きだからな!」
「うん!うん!大丈夫!僕良い子にするから!」
お仕置きがよっぽど聞いたのかどうか分からないが、サラの性格が更生されている気がする。
まぁ、自由になれそうな未来を知り、一時的にそう言っているだけという可能性もまだ捨てきれないわけだが、どちらにせよ、もしもう一度取り付けるなんていう事になった場合は、それなりに厳しくする事にしよう。
人生の楽しみだけは許してもらえると知ったサラは喜び、ディーは「よかったですね」と一言、そしてそれに続いてノアも「ホントに」とにこやかな表情でサラを見ていた。
そんな二人の姿をシアもニコニコと笑顔になってみていたのだが、シアは何かに気付いたのか「あ!」と言うなり、俺の方を向く。
「主様、女神様に外し方を聞けるのっていつくらいになるの?確か主様から女神様にはを届ける事が出来ないっていってたよね?」
シアのこの言葉に、サラ、ディー、ノアが同時に「「「あ!」」」と声を上げた。
「俺が女神様と話せるのは、女神さまにこの世とあの世の狭間の世界へと呼ばれた時だな。
前回は水の国に来る前の夜だったから、次はまたある程人々が幸せになって世界樹の苗木が成長した時になる」
「それって何か大事が起こってそれを解決でもしない限り、まだまだ先って事じゃない!」
サラの言う通りである。
そもそも、人々を幸せにする、なんて事は簡単には出来ないものである。
人によって幸せの形とは様々なのだから。
「まぁ、頑張って沢山の人を幸せにするしかないな」
「具体的にはどうするのさ」
「さぁ?とりあえず今はこの国での要件を明日にでも終わらせるとして、予定している1週間後の帰国までの間、この国の冒険者ギルドで依頼でもこなしてようぜ。
温泉旅館で働く人たちの給料とか、それ以外にも必要な資金を稼がないとな」
「僕の自由、いつ戻って来るんだろ…」
まだしばらくは自由になれない事を知り、どこか遠くを見る目をしたサラの姿に、ディーとノアとシアは苦笑いを浮かべるのであった。
次回 第95話 他所の街




