第93話 扱いはここでも同じ
タイトルを少し変更しました。
間違えて83話で投稿してたのを93話に訂正
所々のルビの振り方を間違えてたのを訂正しました。
「では契約する為、まずは私に名前を下さい」
精霊王との契約には、どうやら名前を与えなければならないらしい。
思い返してみると、確かにサラの時も先に名前を付けていたのだ。
さて、いったいどのような名前にすべきだろうか?
火の精霊王であるサラにはサラマンダーと名付けた。
となると水の精霊王ならばアレしかないだろう。
「では、水の精霊王である貴方には[ウンディーネ]という名前はどうだろうか?」
水の精霊王は目を閉じて、その名を小さく呟くき、再び目を開いた。
「良い名をありがとうございます。それではこれより契約の儀に移らせていただきます」
そう言うと水の精霊王改め、ウンディーネが俺の前までフヨフヨと飛んで来る。
そしてウンディーネは「失礼しますね」と言いながら、両手で抱えていた丸い水晶を俺の額に当て、ウンディーネ自身もその水晶に額をくっ付けた。
『汝を主と認め、我と魂の契約をここに結ぶ、魂契約』
ウンディーネの足元と、俺の足元に青白い魔方陣が浮かび上がり、サラとの契約の時とは違う、優しい温もりが体の中を巡り始めた。
その温もりが全身を巡った後、ソレは右腕へと集まって行き、右腕の肘から先が優しい温もりに包まれ多と思うと、直ぐに治まり、二人の足元の魔方陣もスゥっと消える。
「これにて私たちの契約は無事結ばれました。これからよろしくお願いしますねヌシ様」
「こちらこそよろしく。後、できれば今後はあの姿にはならないようにしておいてね」
契約している水の精霊王は、異様な存在感を放つ姿になったりする、なんていう噂が立たのだけは御免こうむりたい。
折角今みたいなかわいい姿があるのに、あんな姿になる必要などないだろう。
「そうですね、せっかくサラに人間の男女の好みというものを教えてもらい、それらを全て兼ね備えてみたのですが、どうやら失敗の様でしたし」
普通に考えてバランスがおかしいことに気付いてほしいのだが、精霊王達の様な精神体にはそういう感覚がわからないのかもしれない。
今度暇な時にでもウンディーネとその辺の事を話し合ってみるとしよう。
「まぁまぁ、そんな過ぎたことはもういいでしょ!」
そう言いながらサラが俺とウンディーネの間に割り込んで来た。
「さぁ、これで水の王との要件は終わったよね!だからナツキ、首輪の事を教えてもらおうか」
「後でな」
会議室にはミールたちだけじゃなく、マルガやゴルド、そしてリカルト王とフローリア王女が居る。
流石にこのメンツの前で女神様から貰ったなんて言えるわけがない。
「水の王との要件が終わったら説明してもらうって言ったよね!」
「俺は説明するとは言ってないんだが?それと、いつまでも水の王なんて呼び方じゃなく、ウンディーネ、もしくはディーなんて愛称で呼んであげろよ」
俺の知識にある各属性の精霊の名前からそのまんまパクらせてもらっているとはいえ、せっかく付けた名前なんだから、今後はそっちで呼び合ってもらいたいものだ。
「ソレはわかったから、これの説明してよ!」
というか、精霊王にすら効果のある代物を用意出来るのは、女神様くらいだと気づけそうだと思うのだが?
「はぁ、仕方ないな」
あまりにしつこさに小さなため息を吐き、サラの耳元に近づく。
そしてサラの行動を見ていた女神様から頂いたと教えてやる。
「そ、そんな危険なものをナツキに託すなんて」
現実を知ったサラがうなだれてしまった。
とりあえず今はそっとしておくとしよう。
それよりも、さっきからずっと、俺とディーとサラ以外が蚊帳の外状態になったままだ。
「なんか俺たちだけで話をしてて、すみません」
ミール達の方はいいとしても、リカルト王とフローリア姫までほったらかしにしてしまっていたのはまずいと思い謝罪する。
すると、コッチを見たままで固まっていた二人はハッ!とし、その後リカルトから気にしなくて良いと言ってもらえた。
「『お二人共、私とヌシ様の契約の儀を見て驚き固まっていたようですね。
まぁ、本来なら我々精霊王が人と契約をする何て事はまずありえなかった事ですから仕方ないかもしれませんが』」
俺の謝罪に反応するように我に返った二人の様子を見ていたディーが、念話でコッチを見て固まっていた原因について教えてくれる。
確かに目の前でありえない状況を見ていたらリカルト王とフローリア王女の二人の様になるのも仕方ない事なのだろう。
「とりあえずこれで、フローリア王女様の受けたディーからのお願いは完了のようです」
「そ、その様ですね。しかし、まさかフローリアが水の精霊王様から受けた願いがナツキ様との契約をする為だったとは・・・」
リカルト王の俺に対する言葉遣いが、サラと契約した事を知った日の国の王と同じ様に変わっていた。
やはり火の国同様、ディーと契約した俺はこの国でも王よりも上の存在として見られるのだろうか?
というか、フローリア王女がものすごくキラキラした目でこちらを見ているのだが!?
まさかゴルドがこの部屋に入る前に言っていた、フローリア王女の思い込みの強さが何らかの方向に働いているのだろうか・・・
フローリア王女の考えている事は分からないが、とりあえずその事を考えるのは後回しにし、先にリカルト王への対処をする事にしよう。
「あのリカルト王?何も言葉遣いを変える必要も、私を様付けで呼ぶ必要もありませんから」
「だがしかし、ナツキ様は我が国の守り神様の契約し主となったのだ、そういう訳には」
「いえいえ、寧ろ一国の王にそんな風に敬われる方が落ち着かないので、どうか今まで通りの対応でお願いします」
リカルト王の言葉を遮るようにして、本音を伝えてみる。
「うむ、ナツキ殿がそういうのならば、そうするとしよう」
どうやら分かってもらえたようだ。
名前の方は様付けで呼ばれる事はなくなったのだが、代わりに[ナツキ殿]と呼ばれる事となっていた。
「さて、それでは話を戻させてもらおうと思ったのだが、どうも先程の事が衝撃過ぎて、ワシも何を話したら良いのかわからなくなってしまった。
それに、ナツキ殿達も今日はこの国までの旅で疲れているはず、そこで今夜はナツキ殿達の為に用意した部屋があるのでそちらに泊まってもらい、明日もう一度この部屋で話をしたいと思うのだが、いかがだろうか?」
そんなリカルト王の提案に、今夜のところはこれにて解散となり、俺とミール達はマルガの案内で、用意してもらったという客室へと向かっていったのだった。
次回 第94話 これからの予定
もう少し進んだら、ちょっと冒険者らしい事をしてみたいと思っています!
ってかそういう事をそろそろ書きたいってだけですが!




