第92話 二つ目の契約~後半~
書き終わって思った。
思ったより文字数少なかった!
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開かれた扉の先には、とてもおかしな存在が立っていた。
まずは頭部。
サラサラ金髪のショートカットなイケメンフェイス。
次に上半身。
筋肉ムキムキのボディービルダーそのものなのだが、胸部には女性特有で、とても豊満な2つの膨らみ。
尚着ている服はピッチピチなタンクトップである。
次に下半身だ。
これまた競輪選手もびっくりな太ももの筋肉が特徴的。
そして下に向かうにつれて徐々に細くなっていき、足首はとても細く、足のサイズは女性並みに小さいものとなっている。
あれでは足首に、とても大きな負担がかかっているのではないだろうか?
因みに下半身の装備は男子水泳選手が穿くような感じのビキニパンツのみ!
最後にその存在のとっているポーズ。
両手でつくった握りこぶしを口の前に持ってきて、ぶりっ子ポーズ。
以上の事からまとめるに、こいつはクリーチャーではないだろうか?
「お・ま・た・せ!」
そういってウィンクするクリーチャー。
待っていない!俺はこんなクリーチャーを待ったりはしていない!
それよりも恋のトキメキとは全く違う、別ベクトルのドキドキが止まらない!
このアンバランスを極めた様なおかしな光景に、室内にいる全員が明らかに引いているというか怯えている。
いや、そんな中で一人だけ大笑いしているのがいた。
サラである。
「あははははは!ひぃ、ひぃ、ダメ、これ以上笑わせないでよ!水の王」
水の王?
このアンバランスを極めたようなクリーチャーが水の精霊王?
そういえば少し前、サラが水の精霊王がもうすぐ来るって言ってたが…
けどなんであんな姿で!?
「え、えっと水の精霊王、なのか?」
目の前の存在の異様さに、本当にそうなのか自信が持てず本物なのか尋ねた俺だが、よくよく考えてみれば、肉体の形を自由に変えることの出来る精霊王でなければ、この異様な存在を作り上げる事は出来ないのである。
「ええ、私は水を司る精霊の王でございます」
本人も言っているのだから間違いないだろう。
ただ、その見た目でそのおっとりした女性のしゃべり方はどうかと思う。
「あの、やはりこの姿はおかしいでしょうか?何やら皆さんは近くにいるはずなのにものすごく距離を感じるのですが」
「そ、そうですね、せめて性別だけでも統一すべきかと思います」
欲を言えばきれいなお姉さん、もしくは可愛い女の子の姿になってもらいたい。
それは兎も角、どうやら本人も今の姿が正常だと信じてはいないようだ。
よかったよかった。
水の王が異常ではなさそうだとホッとすると、突然水の精霊王の体が光り、そこに映るシルエットは徐々に形を変えていく。
やがて光が収まるとそこには、全長80㎝程のとても可愛らしい生き物が大事そうにまん丸な水晶を抱え、宙に浮いていた。
その可愛らしい生き物の姿とは、全身の毛が薄い青色をしており、体格はまるでフェレットの様だ。
顔つきもまさにフェレットに似ている気がするが、額には小さな青い宝石が付いており、頭部にある耳はフェレットのようにちいさな丸いものではなく、ウサギのような細くて長いものである。
そして首回りは、ライオンの鬣の様にフサフサしていた。
「か、かわいい」
その可愛さに一同が見惚れている中、俺は小さく呟いた。
「どうやらこの姿の方が気に入っていただけた様ですので、これからはこの姿でいることにしましょう」
俺の呟く声が聞こえてしまったのだろうか?
まぁ何はともあれ、あのクリーチャー姿をもう見ないで済むので一安心だ。
「水の精霊王様、とりあえず中にお入りください」
未だに室内に入ってきていない水の精霊王に平常心を取り戻したフローリア姫が中へと招く。
それに対し「お邪魔しますね」と答えながら、かわいい姿になった水の精霊王がフヨフヨと浮かびながら移動を始め、俺たちの座るテーブル上の中央へとやって来た。
「さぁ水の王、ちゃっちゃとナツキを呼んだ要件を済ませちゃって。
じゃないとナツキが僕の質問に答えてくれそうにないんだ」
「はいはい。それじゃ来て早々だけど」
そう言って俺の方へと体を向けた水の精霊王の表情は真剣なものへと変わる。
「ナツキさん、私とも契約して頂けませんか?」
この一言に俺とサラ以外の全員が驚いている。
サラは兎も角、なぜ俺が驚かなかったのか、それは今回呼ばれた理由についてなんとなく予想していたからだ。
そしてその予想していた事は、少し前にサラがセリフ「さぁ水の王、ちゃっちゃとナツキを呼んだ要件を済ませちゃって」という一言により、更に可能性があがっていた。
俺を呼んだ要件をちゃっちゃと済ませる事が出来る、つまりはこの場でそう時間を掛ける事無く済ませれるという事。
となれば、この場ですぐに終わらせる事とは契約ではないか?という考えに至ったのだ。
もちろん、もしかしたら他の要件だった可能性も無いとは言えないが、結果としては俺の予想通りだったという事。
だから今の俺は平静を保っている、という訳だ。
さて、折角の水の精霊王からの申し出である。
断る理由も特に何も思いつかない。
むしろ俺の勘が、絶対にすべきだと告げている。
もしかしたら運のステータスが働いているのかもしれない。
だから俺は水の精霊王に向かい、笑顔で答えた。
「ああ、むしろこちらからお願いしたいくらいだ」と
次回 第93話 扱いはここでも同じ




