第89話 登城
遅くなりました!
事実はともかくとし、味には大満足した俺達一行は、既に人気が殆どない暗い夜道を、街灯の光を浴びながら再び冒険者ギルドへと歩いているのだが、共に行動している、ノア、シア、ミリー、エル、レイ、マルガ、ルークの7人の視線は、俺とミールに集まっている。
何故かと言うと・・・
「あ、あのナツキ様、ま、まだでしょうか?」
俺に尻尾をモフモフされ、ミールは頬を紅くしながら体をモジモジさせ、自身に襲いかかる快楽に耐えている姿のせいだろう。
「まだ全然足りない」
あの食後に知ってしまった現実により、精神的ダメージを受けた俺は癒しを求め、ミールの尻尾に手をかけたのだ。
始めはミールも俺の手から尻尾を逃がそうとしたのだが、ご主人様権限を振りかざしたせいにより、今は大人しく耐えてもらっている。
しかし、流石にこれではミールも可哀想なので、後で俺のお仕置きポイント帳からミールのポイントを引いておいてあげようとは思っている。
あ、どうせならノアやシア、それにミリーのお仕置きポイント分をそろそろ使っておこうかな?
そう思い視線をノア達に向けると、何かを感じ取ったのか、俺達に視線を向けていた女性達が警戒し始めた。
ノアとシアはバッ!っと耳を隠し、レイはミリーとエルの二人守るように抱きしめていた。
マルガに至ってはルークの後ろに隠れてこちらを見ており、その壁役にさせられてるルークはジト目で見ている。
精神的ダメージを癒す為なんだよ!
っていうかエルとレイとマルガの3人はポイントが無いから何もするつもりは無いぞ!?
「仕方ない、今日のところはミールだけで我慢しよう」
そうボソリ小さく呟いた俺は、再びミールの尻尾と頭のお耳を可愛がり始め、目的地である冒険者ギルドに辿り着いた所で、漸くミールは俺から解放されたのである。
再びギルド前まで戻って来ると、入り口の横には豪華な幌付き馬車があり、その側面にはマルガが街の入り口で見せていた短刀についていた紋章と同じで、円の中に五芒星が描かれ、その中心に雫の模様が描かれている。
誰かそれなりの身分の人が冒険者ギルドに来ているのか、もしくはギルドマスターがコレに乗って戻って来たかのどちらか、あるいはその両方だろう。
そんな予想をしつつ、建物の中へと入り皆で受付へと向うと、食事前に来た時と同じ、ひょろ長い感じの男性がそこにいた。
男性が俺達に気づくと、ギルドマスターは先程戻って来たとの事で、そのままギルドマスターの居る部屋へと案内される。
コンコン
「ゴルド様、例の方々がお見えになられました。
「入れ」
扉が開かれ、その先に見えた部屋の内装は、やはりと言うべきかフレムストと同じ作りとなっており、正面にある、テーブルを挟んで向い合わせで置かれてあるソファでは、黒に近い茶色の短髪で、顔の左側に大きな傷のある厳つい顔した60歳前後のオッサンが書類を睨むように読んでいた。
他に高貴そうな客も居なさそうなので、建物の前にあった馬車は目の前に居るゴルドと呼ばれていたこの街の冒険者ギルドのマスターが乗って戻って来たという事だろう。
「もうすぐ終わるから、少しの間座って待っててくれ」
書類を睨みながらではあるが、ゴルドは俺達に気を使ってくれたのだろう。
俺とマルガとルークの3人はゴルドの向かい側のソファに腰を降ろした。
ミール、ノア、シア、ミリー、エル、レイの6人は俺の後ろに経っている。
部屋こそ作りは一緒だが、ここは何度か入った事のあるフレムストのギルドマスターの部屋ではなく、水の国のギルドマスターの部屋である。
フレムストの方では俺と一緒に座っても大丈夫だが、ここは違う国、だから彼女達は奴隷としての振る舞いをしていた。
それから5分程経ち、ゴルドは手に持っていた書類を机の上に伏せて置く。
「ふぅ、さてと、挨拶もせぬままで待たせてすまなかった。
ワシはこのアクルーン国の冒険者ギルドのマスターをしているゴルド=バーミアルだ」
「私はナツキ=カガ、後ろに並んでいるのは俺の、ゴホン!私の大切な妻達です」
「見たところ彼女達は奴隷の様だが・・・いや、人様の事情に口を出すのは無粋と言うものだな。
おっと、そんな事よりもだ、この後すぐ、お客人達にはワシと共に城へと向ってもらいたいのだ。
城の方ではお客人達に使ってもらう部屋も既に用意されておるらしいから、寝る場所に着いては安心してくれ」
今夜はどこかで適当に宿を取らないと等と考えていたが、どうやら必要は無くなったようだ。
「それは助かります。流石に今日は日が暮れてしまったので、どこかで宿を・・・なんて考えていました」
「はっはっは!お客人にそんな手間はかけさせぬよ」
ゴルドの言葉に、マルガとルークは当然だ!と言わんばかりに頷いていた。
「よし!ではすぐにでも向うとしよう」
そう言うとゴルドは立ち上がり、俺達も腰を上げる。
そしてゴルドを先頭にギルドマスターの部屋を出ると、俺達もそれに続き、受付の所までくるとゴルドは俺達を案内してくれたひょろ長い男性に城に行って来るだけ伝え、建物の外へと向う。
建物の前では、先程まで入り口の横に居たはずの馬車には御者が付き、何時でも出発出来る状況で待機していた。
俺達は後ろから幌の中へと乗り込みむと、御者の合図で馬車は動き始め、城へと続く道を揺られながら進み始めたのだ。
次回 第90話 国王と姫
2日程続けて、花粉症の薬による眠気に負け、作業が手付かずのままになってしまいました。
やはり薬は侮れません・・・




