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異世界で第2の人生を  作者: 一雫
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第88話 知らない事が幸せだった!

少し予定より遅くなったのですが、なんとか寝落ちする前に書き終えました。

もし誤字等あればお知らせ下さい。



街に入ると、そこからはルークが冒険者ギルドまでの案内をしてくれるという事で、俺達はルークの後ろで、王都アクルーンの町並みを眺めながら歩いていた。

その道中、マルガが楽しそうにこの街の事について説明してくれる。


マルガの話しによると、この街には上空から見ると「◎」の形に2つの川が流れているらしい。

街の中心にはお城があり、内側の(マル)と外側の(マル)の間には商業区や冒険者ギルド、それから宿や一般人達の家が立ち並んでいるらしい。

因みに今向っている冒険者ギルドはその西側にあるのだとか。


そして外側の円と、街を囲う石壁の間には、平民や貴族達の家が建っている。

といっても平民の家と貴族の家がごっちゃに建っている訳ではなく、街の中央より南側に平民の家があり、それより北側はそこそこの金持ちの家があり、最北端の方は貴族の家のみとなっている様だ。


ということで、北側の住居区には近寄らないようにしよう。

貴族とからんでたら、面倒事が起こりそうだからだ。


そんなフラグが立ちそうな事を思っていると、突然脳内に優しげな声が響く


「(・・・キさん、ナツキさん。聞こえますか?と言っても、そちらから私に声は届きませんが)」


この聞き覚えのある声は女神様だ。

突然の声に驚き立ち止まると、立ち止まる俺を不思議に思ったミールが俺の顔を覗きこむ。


「ナツキ様?突然立ち止まったりして」


三角お耳が可愛いなぁ、なんて思いながら「ちょっと女神様からね」とミールにだけ聞こえる声音で伝え、その愛らしいお耳と頭をナデナデする。

だがしかし、このまま棒立ちしているわけにもいかないので、再び歩き始める。


っていうか、イヤリングから声がするわけじゃないんだな。

俺はてっきり、スピーカー的な感じで聞こえてくると思ったんだが、違ったようだ。


「(えっとそれよりもですね、ナツキさんがサラと名づけたあの子の事なのですが、最近ナツキさんの下から離れ、色々と勝手な事をしてご迷惑をかけてしまっているようなので、あの子がこれ以上勝手な事が出来ないようにする為の物をアイテムボックスの中にお送りします)」


そう言われ、歩きながらアイテムボックスの中身のリストを開き中を確認すると、木材やら木やら切り株やら岩といった物より更に下に[繋ぎの首輪]という名前があった。

確かに何時も唐突に居なくなっては存在を忘れてしまうし、勝手に水の精霊王と約束してきたりはするが、そこまで迷惑とは思っていない。

むしろ、偶にあるサラの心無い一言にイラつかされる事の方が俺にとって問題な気がする。


「(あ、確認出来ましたね。ソレを精神が入っていない抜け殻状態の内に取り付けておいてください)」


ちょっとまってくれ女神様、その言い方からするに、俺の行動が見えているのか?


そんな俺のツッコミなど意味も無く、脳内ボイスは続く。

こんな女神様の声を聞きながらも、俺はルークとマルガの二人が仲良く話しながらあるいている後ろをついて歩いている。


「(そしてサラの精神が戻ってきたら、すぐに魔力を込めながら[施錠(ロック)]というキーワードを言って下さい。

そうすれば今後、サラはナツキさんの許可無く、勝手に精神だけで出かける事はできなくなります)」


それは良い事だ。

良い事なんだが・・・果たしてそこまでする必要はあるのだろうか?

確かにサラが必要になる時、勝手に(精神が)居なくなって存在を忘れてしまっていたら、困る事になるかもしれない。

しかし、そんな状況になる事はまず無いだろう。

勝手な約束をしたりしないようにさえ言っておけば問題は無いような気もするのだが・・・


「(そして更に、その首輪にはお仕置き機能もあります)」


その一言に、俺はサラの身体に[繋ぎの首輪]を即座に取り付けた。

迷う余地など無い!

そして使い方はよ!


「(お仕置きを始めるキーワードは[お仕置き(パニッシュメント)]です。

[施錠(ロック)]の時と同じで、魔力を込めながらじゃなければ発動しません。

お仕置きを止めるキーワードは[終了(エンド)]です。

以上がお仕置きの方法になりまが、悪用はしない様にお願いします)」


こちらからの声は届くことはないが、心の中で「了解!」と返事をする。


「あら?何か良い事がありましたか?」


前を歩いていたマルガが俺の方を見ながら問いかけてくる。


「何やらとてもニヤけておりますよ?」


女神様から頂けたお仕置き手段が嬉しくて、ニヤけてしまっていたらしい。

でも流石に内容を教えるわけにはいかないので、とりあえず「いえ、なんでもありませんよ」と答えておく。

俺の返事に、マルガは「?」と頭上に視えそうな表情をしていたが、すぐに何かと勘違いをしてくれたのか「あ~」と言いながら、再び前を見て歩き始める。


何と勘違いしたのかは知らないが、取り合ず良しとしておこう。


それ以降女神様の声は聞こえてくることは無く、暫く歩いた後、俺達は冒険者ギルドへと辿り着いた。


この国の冒険者ギルドも、フレムストにある建物と似た作りになっていた。

違うところというと、入り口の扉くらいか?

フレムストのギルドは普通の扉だったのだが、こちらのは、スウィングドアと呼ばれる、西部劇に出てくるようなタイプだった。

それ以外はホントに瓜二つの作りになっている。


何かギルドの建物を作る上での規定でもあるのだろうか?


「この国の冒険者ギルドの建物、フレムスト王国とまったく同じ造りをしてますね」


「それもそのはず、なんせ各国にある冒険者ギルドはとある建築士の方が同じ設計図の元に作って回ったそうなのですから」


「確か、板使いのボンドという御方だと聞いた事があります」


冒険者ギルド内を見回していたミールも、俺と同じ事を思ったらしくちいさく声に出すと、それにミリーが答え、更にエルが補足する。

その話をミールの後ろで聞いていたノアとシアも「へぇ」と答えながら、再度周囲を見渡していた。


そんな俺達がいるギルド内には、俺達以外にも幾つかのパーティと思われる集団がおり、皆が入って来た俺達を横目で見ている。

これはもしやテンプレである、他の冒険者からの絡みが来るのか!?と期待したが、そんな事は一切起こらなかった。


何故か少し残念に思える。

といっても別に絡まれたいわけでは無い。


多分、彼等冒険者達は王国騎士の一人であるルークが一緒にいる事で、誰も俺達に近寄ろうとは思わなかったのだろう。

もし王国騎士といざこざを起こす様な事があれば、国相手に喧嘩することになりかねないのだから。


そんな事を思っている中、マルガとルークの二人は空いていた受付に向い要件を伝えていた。

相手をしている職員は、ひょろ長い感じの男性のようだ。


俺達はそんなマルガとルークの二人を少し離れた所から見ていると、少しして二人は戻って来た。

どうやら現在ギルドマスターは席を外していて、少し時間を空けてからもう一度来てほしいと言われたらしく、そこで丁度お腹が空いていた俺は食事を提案する。

現時刻は、我が家における夕食時である。


食事の件を了承してくれたマルガとルークの二人は、先程受付で対応してくれていた男性に、食事の後にもう一度来る事を伝えに行き、その後俺達はルークのお勧めする店へと出発する。

ルークによると、このあたりで一番腕の良い料理屋らしいのだが、ご飯時に行ったら満員なのじゃないだろうか?


「ルークさん、この時間帯だと、その人気のある店は客で一杯なんじゃないか?」


「ああ、それは大丈夫ですからご心配なく」


そう笑顔で答えるルークについて行くと、酒場の様な店に辿り着いた。

但し、店の規模はかなり大きい。

そんな店の扉を開き中に入ると、中もかなり広く100人位の客が軽く入れる程の広さだったのだが、俺が思ってたように、すでにどのテーブルも客で一杯になっていた。


そんな店内を見た俺は、やっぱり一杯だなぁ、なんて思っていると、ルークは入り口近くにいたウェイトレス姿の犬耳の女性を呼び止め、何かを伝えている。

そしてその後犬耳の女性が厨房の奥に入って行き、すぐに戻ってくるなり、俺達は店の奥へと案内され、そのまま個室へと入った。


部屋の中には20人程が座れるテーブルと椅子があり、ちょっとした会議が開けそうな程の広さがある。

先頭を歩いていたルークは奥の椅子に座り、俺達もルークの向い側で、奥から順に座っていく。


「ここの店には、こういう一定以上の身分の人のみが使える部屋が幾つかあるんです」


「なるほど、だから大丈夫って言ってたわけか」


「はい」


男の笑顔を評価したいわけではないが、俺の言葉に返事をしたルークの表情はとても優しげで良い笑顔をしていた。

その後、俺達を案内してくれた犬耳のウェイトレスに「お勧めの料理を人数分」とルークが注文を伝えると。

暫くして沢山の料理が運ばれてきた。

料理を運んできたのは犬耳の人ではなく、普通の人族の女性で、その人曰く、当店自慢の魚介類をふんだんに使ったモノらしい。


運ばれてきた美味しそうな料理を目前に、俺達は一斉に端を伸ばし、ジューシーに焼かれた魚や、コリコリとした歯ごたえの貝の中身を甘辛く炒めた料理などを次々と口に運び、舌鼓を打つ。

ルークが勧めていた事や、コレだけの客が入っているだけの事はあり、本当に美味しい。


皆で楽しく美味しい食事が続き、全てを食べ終えたのは1時間程経った頃だった。


「いやぁ、ここの料理マジうまかった!魚料理は偶に食べるけど、貝が久しぶりに食えたのは嬉しかった」


「それほど喜んでもらえると、私も勧めたかいがありましたよ」


「土産にこの貝をどこかで買って帰れないかな?」


出来れば沢山買っておいて、時間の経過しないアイテムボックス内にでも保存しておきたい。


「あ~、それはちょっと難しいかと。あれはジャイアントシェルというモンスターの身で、あまり店には出回ってないんですよね。

どうしても手に入れたいのなら、自分達で討伐するか、冒険者ギルドに討伐依頼を出すしかないかと」


なるほど、あの食材()はジャイアントシェルというのか。

ならば水の国での用が終わった後にでも倒しに行くとしよう。


「ただ、ジャイアントシェルはAランクモンスターなので、そう簡単には入手する事は出来ないかもしれません」


「大丈夫、食材の為なら俺本気出すから!」


「ナツキさんがどれ程の強さを持っているのかは分かりませんが、ジャイアントシェルはその名の如く、凄く大きくて強いモンスターです。

あの渦巻き状の殻はとても硬く、内部にその身を引っ込まれると討伐はかなりの・・・」


「ちょっとまて!渦巻き状の殻だと?」


ルークの話すモンスター情報に聞き捨てなら無い点が3つほどあり、ルークの台詞を遮るように俺は質問する。


「もしかしてそのジャイアントシェルって、20m位のサイズだったりしないか!?」


「ええ、その通りです」


待ってくれ、それってもしかしてあの時見た巨大なカタツムリの事じゃないのか!?

もしそうだとしたら、俺はソレを食ったって事になる。


「この時期だと、ここに来る途中の湖地帯の何処かに居たんじゃないでしょうか?」


「あ、マスター、それなら私見ましたよ?」


どうやらジャイアントシェルというのは、あの時見た巨大なカタツムリモドキである事は確定の用だ。

そして俺は、あまりの美味さに、苦手な形状のモンスターの一部を沢山食ってしまっていたらしい。


いかん、真実を知った俺の精神力はもう底を尽きそうだ・・・・



次回 第89話 登城


一応書いて起きますが、サラ(精神)はまだ戻ってきていない設定です。

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異世界で気を付けるべきは?←こちらは2作目となるものです。主人公が別の世界に行くお話ですが、[異世界で第2の人生を]のキャラも登場します。 是非読んでいただけたら嬉しいです! (尚、基本的に毎週月曜日の午前0時と木曜日の午前0時に更新していますが、時々ずれる事もあるかもしれません!)
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