第85話 見えて来ました水の国
今回文字数が少なく、ちょっとばかり短いです。
風のシールドでレイの身体と龍カゴを包み込み、冷たい向かい風を防ぎつつ大空の旅を始めた俺達は、水の国を目指して順調に進んでいた。
マルガから聞いた水の国との距離から計算すると、今のレイの速度ならば日が沈み始めるよりも早く到着出来る予定である。
レイ曰く、頑張ればもっと早く飛べるらしいが、それだと今度はレイの体力が持たなくなるだろうと思い、余裕を持った速度で飛んでくれと伝えてある。
なので現在、約6割程の速度で移動している。
それでも現在の速度は、時速200km以上は出ていると思う。
この世界に速度計が無いから実際の速度は分からないが、きっとそれ位、もしくはそれ以上出ているはずだ。
おかげでオルリア村を出発して30分もしない内に、王都付近の上空を通りすぎ、そして1時間ちょっと経過した頃には、遠くに国境の山が見え始めて来た。
「(もうすぐレイとマスターの出逢った山です)」
レイと同じく前方に広がる景色を見ていた俺に、レイが念話で話しかけてきた。
「(ああ、そうだな。あの時は石をぶつけて悪かったな)」
「(あはは・・・)」
出逢った時の事をお思い出したのか、乾いた笑いが帰ってくる。
「(まさか人間に、しかもたった一度の投石で落とされるとは思いませんでした。
あれすっごく痛かったんですから)」
「(ホントにゴメンな)」
「(いいですよ、もう気にしていませんから。
それに、今はマスターがレイのマスターになってくれましたし、名前だってつけてもらえました。
ミールさん達とも仲良くなれて毎日が楽しくて幸せですから)」
「(そっか)」
軽い返事を返したように言ったが、内心では、レイがもう気にしていないと言ってくれた事が、すこし嬉しく思えていた。
「(今だって、こうして皆をつれて空を飛ぶのが楽しいんですよ)」
「(そうなのか?)」
「(ええ!そうなのですよ)」
レイの返事は声が弾んでいる。
きっと本当にそう思っているのだろう。
「(だったらいいんだ、おかげでこうして順調に水の国へと向う事が出来てるし。
ありがとなレイ)」
今は龍カゴ(大)に乗っているのでレイの頭を撫でる事は出来ないのが、気持ちは伝わったようだ。
レイは大きく一鳴きし、更に速度を上げていく。
もうすぐ時速300km台に乗るんじゃなかろうか?
「(レ、レイ?そんなに飛ばしてると体力が持たないんじゃないか?だからちょっとスピード落とそう!な?」
決してこの速度が怖くて言っているわけでない!
なんせ俺が走ると、きっとそれ以上の速度がでるからだ。
ただ純粋にスピード上げたまま飛び続ければ、レイの体力がすぐに尽きてしまうのではという、心配からである。
「(あ!も、申し訳ありませんマスター。つい浮かれてしまいました)」
俺の想いが伝わったのか、レイは謝りつつ徐々にスピードを落とし始めた。
まぁ、落としたところで時速200kmという速度は保っているので十分に速いのだが・・・
こうしてレイと話している内に、俺達一行は国境の山を通り過ぎ、水の国へと入っていた。
ここから先は俺にとって始めての景色である。
そんな景色を眺めつつ、俺はレイと他愛の無い念話を続けていた。
「(ところでマスター?ミールさん達は何の話しているのですか?なにやら凄く楽しそうなのですが)」
レイに聞かれ、今まで意識を向けないようにしていた背後を見る。
そこには、龍カゴ(大)の床に輪になるように座りこむミール、ノア、シア、ミリー、エル、マルガの6人と、その輪の向こう側で凄く居辛い感じの顔をしたルークがいる。
彼、彼女達も、オルリア村を出発した頃は周囲の景色を一緒に見ながら何気ない会話をしていたのだが、空の旅が始まって20分程経った頃だろうか、シアの「マルガさんとルークさんって結局どういう関係なの?」という一言から二人の関係についての質問タイムが始まったのだ。
色々と質問を投げかけるミール達をよそに、俺はレイに話しかけられるまでの間、今後のオルリア村の発展について考えつつ景色を眺めていたのである。
そして今、レイの問いに答える為、まったく気にしていなかった女性陣の会話に耳を傾けると、いつの間にか立場が変わり、ミール、ノア、シア、ミリーの4人がマルガとエルの二人に夜の営みについて質問する形になっていた。
・・・というか、なぜミール達4人は嬉し恥ずかしそうにしながらも、正直にマルガとエルの質問に答えているのか?
そういう事は人に話す事では無いと思うのだが?
そんな女性陣の会話に、ルークは凄くばつの悪そうな顔で三角座りになっている。
うん、これはもう今更止めに入るのも手遅れだろう。
俺は女性陣の会話は聞かなかった事にする。
うん、それがいいだろう・・・
俺は静かに背後から顔をそらした。
きっとこの時の俺の表情には哀愁漂っていたかもしれない。
「(イッタイナンノハナシヲシテイルンダロウネ)」
「(マスター!?なんでそんな棒読みなの!?)」
「(ボクニハナニモキコエナイ)」
「(・・・そ、そうですか・・・)」
俺の気の無い返事に、レイは何となく察したのか、深く聞こうとはしなかった。
優しい娘である。
「(あ!マスター!遠くに沢山の湖が見えて来ましたよ!)
レイの声に反応し遠くの方へと目をやると、平原には沢山の湖があり、そのどれもが日の光りを眩く反射させていた。
次回 第86話 水の国の王都




