第7話 主人公チートへまっしぐら!?
鳥の囀る声で目覚めると、俺はベッドに大の字になり、そこにミールが俺に抱きつく形になっていた。
そして俺のムスコも目覚めたばかりで元気いっぱいだ、いやそれはどうでもいいか。
今朝は妙に肌寒く感じ、はだけた布団を治しているとミールも目を開ける
「おはようごじゃいます、なつきさまぁ」
目を開けてはいるが、どうもまだ寝ぼけている様だ
「おはよミール、今日もおはようのキスいいかな?」
「ふぁい♪」
軽いキスから今日の一日が始まる。
まずは顔を洗い、ミールの髪を梳き、形を整える、今日はゆったりと編んだ三つ編みにしてみた。
準備が整うと今日の朝ご飯をお願いしに行くと、料理担当のロークがすぐに作ってくれた。
今日のメニューはスクランブルエッグにサラダとパンだ、コーヒーが欲しくなるが、これもまたこの世界には存在しないようで少し残念。
「そう言えば今日で3日目か、宿の延長をお願いしておかないとな」
食事が終わって食器を返しに行くついでに宿の利用を更に3日ほど延長のお願いをして支払いを済ませる。
その後二人でギルドに向かうと壁に人だかりが出来ていた。
「なんだろ、あれ・・・」
「さぁ・・・なんでしょうか、あの様子じゃ見えそうにないですからコロンさんにでも聞いてみませんか?」
「そうだね、その方が早そうだ」
ここ最近ギルドの受付はコロンの所にしか行ってない気がするが、まぁ個人的に専用の受付と認定しておこう。
慣れた人の方が話しやすいもんね。
「すみません、あの人だかりはいったい何事です?」
「あ、ようこそナツキさん、あのですね・・・・」
コロンさんに聞いた話では、この村から南西に馬車で半日ほどの所でゴブリンが異常発生しているという情報があり調査団を送った所、ゴブリンの集落が発見されたとの事。
「ゴブリン達はもともと集団で行動しているんです、そして別の集団と出会っていき大きな群れとなって集落を作るそうなのです。
そして、今回見つかった集落が町からも近いと言う事で被害が出る前に討伐をする事が決まりまして、いくつかのパーティーを募集しているのですよ。」
「なるほど、それって、俺達も参加する事はできますか?」
「はい、ただ参加はできますが、この討伐依頼はゴブリンの群れが相手になりますのでランクの低い冒険者の方は後方に配置となります。」
「えと、それでもいいので参加します。」
「分かりました、それでは二人のギルドカードを出してください。」
ギルドカードを渡し依頼を受理してもらい、詳しい依頼内容を聞く。
「今回のリーダーはギルドマスターのハスマ=ローエル様が務めます。出発は今夜9時ですので8時頃までには準備を完了させて町の門に集合してください。
移動はギルドで用意する馬車で向かいます、そしてゴブリンの集落から少し離れたところで馬車を止め、パーティーの配置や編成を行い、明日の昼頃に討伐開始となる予定です。
尚、道中の食料は各自で準備なので、忘れないようにお願いしますね」
「なるほど、ありがとうございます。」
説明をしてくれたコロンに礼をいうと、ギルドから立ち去り宿へと戻る
宿に着くとアロンさんに今夜からゴブリンの集落襲撃の旨を伝え部屋へと戻った。
「ナツキ様、コロンさんが言ってた道中の食料の事ですが、後で買いに行きませんか?」
「そうだね、遠征とか予定して無かったから保存食とか持ってないしね、っていうか突然あんな依頼受けちゃってごめんな」
「いえ、気にしないで下さい、それにこの依頼だとたくさんのゴブリンを倒す事になります、そうすればナツキ様のステータスをたくさん上げる事ができますよ?」
「実は俺もそれ目的だったんだ、後衛って事は、打ちもらした敵の処理だろうから、うまくすれば他の人が倒したゴブリンからもスキルやステータスが手に入るかもしれない」
「そうですね、では今回はスキルとステータスの確保をメインと言う事で頑張りましょうね」
「ああ、んじゃもう少ししたら商業区の方へ買い物へ行こうか」
「はい」
部屋で、今持っているアイテムボックス内の荷物を確認し、必要な物をメモに書き込んでいく。
といっても、道具類は昨日買っておいたばかりなので、基本は食料だけなのだが、念には念を入れておくに越した事は無い、その後俺とミールは噴水広場西側の商業区へと足を運び、食料の売っている店へと向った。
最初に付いたのは[山の幸]という八百屋のような佇まいの店だ、この店には野菜類と肉が売ってある。
「保存食っていうとやっぱりこの干し肉がいいかな?」
「そうですねぇ、ここで野菜とパン屋さんでパンを買っていけばサンドイッチにも出来ますね」
「あ~そうだね、よし、それじゃこの干し肉とパンに挟むのによさそうな野菜、それから・・・お、ジャガイモもあるな、あ、こっちは人参に玉ねぎもある」
店の中の野菜を見て行くと、この世界の野菜は俺の知っている野菜同じな物がが幾つか存在する、自分も知っている物だと安心して食べられるってものだ、もし自分の知らないものだと、それが本当に食べていいものか解らないのだ。
「それらも買っていきますか?」
「ああ、いや、今回は干し肉とそっちのレタス、それから・・・お、チーズも売ってるじゃん、これも買っておこう」
「はい、あとは干し肉を少し多めにして、ジャガイモも買っておくといいかもです」
「これで以上かな?」
選んだ食料をミールにも確認させた後、清算を済ませ店を出る。
「ところでナツキ様、水袋を買っておきませんか?」
「水袋?名前からするに、水を入れる袋ってこと?」
「そうです、遠征などに行くと、いつ水の補給が出来るか解らないので、買っておいた方がいいと思います」
ミールの提案に道具屋で売ってるらしい水袋という、まぁいわゆる水筒を買いにいく事にする。
そうして道具屋で水袋を買うと、次はパン屋へで探し、サンドイッチ用のパンを買う、これで食料の方は買い終わったのだが、夜の集合時間までまだ結構余裕がある。
「さて、これからどうしようか・・・思ったより時間に余裕が出来てしまった」
「それなら町の外へいって訓練でもしますか?」
「うーん、そうだな、じゃあ少しだけ訓練して、その後夜まで休むか」
買った食糧をアイテムボックスに入れ、二人で町の外へ向い、探知スキルで近くの敵を探しながら、昨日キングボアを倒した町の東側へと歩いていくと、探知スキルに1つの反応、ボアだ
ミールと二人そちらへと向かっていく。
「よし、それじゃミール、先にあのボアでレベルアップした自分を試して見るんだ」
「はい!」
元気に返事をし武器を構えると、ボアに向って掛け出して行く
「ヤァッ!」
掛け声と共に、ミールはボアの横腹を斬りつけながらボアの横を走りぬけ、そして・・・
「フギャッ!」
そのまま勢いあまって前方の木へ顔から突っ込んでいた。
何か今可愛いらしく面白いような声が聞こえた気がするが、聞かなかった事にして上げるのが優しさだろう。
今のミールは以前よりもAGI、つまりすばやさが2倍近くも上がっている、なので今までの感覚でダッシュをすれば思った以上の速度が出てしまい、今の様になってしまう。
顔を擦りながら戻ってきたミールに「その力のコントロールを理解できている俺が見本を見せよう」と言い、次のボアを探しにいく。
もちろんアブソープと分解での素材確保も忘れてはいない。
次のボアはすぐに見つけ、ボアへと跳ぶように前方へダッシュし斬りかかる。
当然のようにボアを一撃で倒し、すぐに踏みとどまろうとした時、木の根に躓き、顔から前方へ吹っ飛ぶ俺は先程のミールと同じ姿をしていた。
但しミールよりも能力向上してしまっていたためか、1本の木を薙ぎ倒して2本目の木に顔からだ・・・解せぬ。
「大丈夫ですかナツキ様!?」
「あははは、大丈夫大丈夫、思ったより難しいねこれ」
乾いた笑いで誤魔化しているが、見本を見せようなどと言いながら自分も木に突っ込む姿を見られ、すごく恥ずかしい
お願いミール、あまりこっちを見ないで・・・
「ナツキ様の場合だと、レベル分だけではなくキングボアのステータス分があるので余計にコントロールが難しいのでしょうね。」
ミールは俺の心情に気づいているのか、どこか気を使ってくれている気がする
あ~もう!優しいなちくしょう!
とりあえず平然としておこう
「うーん、そうだねぇ、体が強くなったけど、それに思考がついていかないって感じだねぇ」
「私も以前よりすごく体が軽く動かせるし、この使っているダガーナイフも軽く感じる気がしてきました。」
「あ、そうだ、どうせなら両手にダガーナイフもって二刀流でやったら?予備の分があるしさ」
「二刀流ですか?ん~、わかりました、練習してみます。」
アイテムボックスから予備のショートソードとダガーナイフを取り出し、ダガーナイフをミールに渡して自分もショートソードの2刀流を試すと、ミールはどうやら二刀流に向いているらしく動きは様になっていたが、俺はどうやら無理そうだった。
そしてまたボアを見つけてミールが斬りかかる、そして木に突っ込む、うむ、実に痛そうだ。
その後もボアを見つけては何度か試していく内にミールは徐々に感覚が掴めるようになった。
俺?もちろんそこらの木にキスしまくってますがなにか?
そんな俺を見てミールが何かに気付いたようだ。
「あのご主人様一つ気になったのですが・・・」
「ハァ,ハァ、なんだミール?」
「あの、先程から倒したボアからステータスを吸収しているようなので、それの分余計にコントロールするのが難しくなっているのでは・・・・?」
ミールさん大正解、ここまで倒したボア達へのアブソープをしっかりとしているので、そりゃどんどんステータスが上がって行き、その度に力のコントロール具合が変わっていく訳だ。
まったくどこの誰だよ力のコントロールを理解出来てるとか言ってたアホは!
原因を理解出来たの所で、とりあえず広い場所でダッシュとストップの練習を繰り返し、ようやく自分の体のコントロールが出来るようになってきた頃、時間はすでに1時を越え、腹の虫が空腹を訴える。
「ミール、町に戻ってご飯食べようか」
「はい」と返事をしたミールと町へ戻り、町の酒場ホーランドという店で食事を済ませた、とても美味しゅうございました。
宿に着くとお湯を用意してもらい、部屋で体を拭いて一息ついたところで、今日の成果を確かめようとステータスを見てみる。
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ナツキ 男 20歳
LV 9
HP 927/927
MP 118/118
STR 436
VIT 457
AGI 587
INT 212
DEX 214
LUK 84
スキル
ステータス&スキル隠蔽
アブソープ
完全解析
融合と分解
言語マスター
テイムマスター
癒しの加護
創造
方向感覚マスター
探知マスター
時空魔法 LV5
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(お、レベルが上がってる、っていってもここまでステータス上がってたら、意味ない気もするけど・・・)
ステータスチェックが終わると、ミールを抱きしめながら仮眠に入る。
そして夜7時、セットしていた目覚ましで目を覚ますと、出発の準備を済ませ、二人は町の門へと向かった。
次回 第8話 彼らは見た!