第76話 引越しと歓迎会~後編~
少しだけ長くなってしまいました。
1月26日 追記
誤字があったのを訂正しました。
次回は、26日の夜or27日の午前2時までにはアップ出来る様にします。
ドラゴンの姿に戻ったレイに龍カゴを提げてもらい、マルガやルーク、それにメイドの皆に見送られながら俺達は王都へ向け出発していた。
最初はいつも通りのスピードで飛んでいたのだが、時間の都合上、途中からレイには少し急いでもらう事にした。
しかし、それでも少し時間が掛かるので、その時間を利用して、一度考えるのを止めていたサラの事を少し考える事にする。
サラはあの時、俺がサラの事を忘れていたのは、女神様に意識を呼ばれていたからと言っていた。
つまり、そこから考えられるのは、サラが眠っていてその意識を別の場所へと飛ばしている時には、サラの存在を忘れやすくなる?
もしくは完全に忘れてしまうという現象が起こる、という事なのだろうか?
『ピンポーン、正解だよ~』
『おい、何で普通に俺の考えに答えてんだよ。
ってかもしかしてこの念話のスキルは常時発動なのか?』
『念話スキルは自分の意思で切るまで継続するよ。
ナツキがずっとそれをしてないだけだよ』
『そういう使い方に関する事は早めに教えろよ』
『だってナツキてば、このスキルを渡した途端すぐに使い方分かってたじゃないか、だから言う必要はないと思ったんだよ』
『はぁ、まぁいい。それよりさっき俺の考えた仮説で合ってんだな?」
『そうだよ、元々僕達精霊は精神体で肉体はただの入れ物なのさ、ナツキ達に取っての服見たいな物だね。
だから僕がその肉体から意識を飛ばし、別の場所へと行っている間、僕という存在はそこに感じられなくなり、その結果として存在が薄れたり、僕の意識の行き先によっては、完全に存在を忘れたりするって訳さ」
『行き先によってはと言うのはどういう事だ?』
『例えば今回なら女神様に呼び出された狭間の世界とか、ボク達精霊の住む精霊界という、ココとは違う別の世界に行ってる時だね』
『狭間の世界は行った事あるから分かるが、他にも精霊界なんていうのがあるのか。
なるほど、という事は今まで何度かサラの存在を忘れたりしてたのは、そういう別世界に行ってたからという訳か』
『そういうこと』
『なるほどなぁ、コレでやっと今まで何度か不思議に思ってた事が理解出来たわ』
『これでナツキも一つ賢くなれたね!』
『うるせぇ、とりあえず念話は切るぞ』
『はいはーい』
サラの説明通り、念話のスキルを終了するように意識すると、何となくサラとの繋がりが切れた様に感じた。
多分この感覚が念話の終了したという感覚で間違えいないだろう。
サラとの念話から少しの時間が経った頃、いつも以上にスピードを出していたレイのおかげで、かなり短い時間で王都の傍の上空へ到着した。
いつも通り、レイには町の外に降りてもらい、俺達も龍カゴから降りる。
そしてレイは人の姿へと変わり、その間に俺は龍カゴをアイテムボックスへと仕舞い、皆で町へと入る門へと向う。
門番の兵に挨拶し、顔パスで町の中へと入ると、まずは中央の噴水広場へと向い歩いて行く。
俺から少し離れた後ろの方では、ミリーとエルとレイの3人が何か話している様だが、一体何を話しているのだろうか?
前を見ながらも、後ろの3人の声に集中し、聞き耳を立ててみる。
「早くエルも旦那様のお部屋に呼ばれるようになれば良いのにね」
「きっと私の様な子供ではナツキ様もそんな気になられないのでしょう・・・それに私はまだ結婚についてのお返事すら・・・」
って!何て会話してんだよ!
というか、流石に成人して無い子に手を出すのはまずいだろ!
あ、返事の方は何時でも受け付けてるぞ!
「ならさっさとマスターにお返事をお伝えしては?」
「そうね。エルってば、旦那様が翼に触れるのを嫌がらないどころか、お手入れしてもらうのがとっても嬉しそうだし・・・
それってつまり旦那様のお嫁になる気があるって事よね?
それだったら早く伝えた方が良いと思うわよ?旦那様もきっと喜ぶし」
「ですが、なかなかその決心がつかなくて・・・」
俺としては、出来ればちゃんとエル自身から返事を聞きたい。
だが、エルにだって心の準備が必要だろう。
今回はこうして3人の会話を聞いていたおかげで、エルの気持ちを知る事が出来てしまったが、それでも俺は、ちゃんとエルの口から聞けるまでゆっくり待つつもりだ。
とりあえずこれ以上話を聞くのは止めておこう。
そう思った俺は、後ろの3人の会話を聞かぬ様にと、過ぎ行く人達を観察し、他へと意識を向ける。
そうしてそれから約20分程経った頃、俺達は噴水広場へと到着した。
確か1軒目の引越しする人の家は、ここから東に向った地区にある。
俺は面接に合格した人達全ての住所や順番は全て覚えているのだ。
こんな事が出来るのも、きっとINTの数値が高いおかげだと思っているのだが、一応その件については、今夜女神様に呼ばれた時に確認する予定だ。
王都東地区の大通りを歩き始める事10分、そこから路地に入って更に5分程歩いたところで最初のお宅に到着した。
本日、一番目に引越しの作業をするのは、俺の担当の列に並んでいた、あのドワーフ族であるアニータの家だ。
一人暮らしをしている彼女の家は、一人で暮らすには十分と言える大きさの小屋だった。
コンコンとノックをした後、引き戸越しに挨拶をする。
「おはようございます。引越し作業にやって来ましたナツキです」
「はーい」と声がし、ガラガラガラと戸が開かれると、そこにはアニータの姿があった。
面接の時は座った状態で彼女を見ていたが、こうして俺が立っている状態で彼女を見ると、余計に彼女の事が小さく見える。
しかし、彼女はこう見えて俺と一つしか年が違わないというのが驚きだ。
「あのぉ・・・」
いつまでもその場から動かない俺に、アニータが声を掛けて来た。
「おっとすみません。それじゃ早速作業を始めましょうか」
そう言って家に入らせてもらい、アニータに持って行く物を選んでもらおうと思ったのだが、アニータの家の中にはあまり多くの物は無く、布団に箪笥、それから一人分の食器や調理道具といった生活に必要な物だけしかない。
コレならば全てを運べそうだ。
アニータとレイの二人には、持って行く物を、部屋の中央に運んできてもらい。
二人が運んで来た物をミリーとエルには俺が渡したメモに記入して言ってもらう。
そして俺は記入し終わった物は次々にアイテムボックスの中へと入れてゆく。
もちろん、俺はちゃんとどれが誰の分かを覚えながらだ。
そういしてどんどんと家の中の物は片付いていき、最後に箪笥は中身ごとアイテムボックスへと収納した。
作業が始まって約30分程。
物が少なかったおかげで1軒目は早く終る。
目の前には空になった建物だけが残ったのだが、この建物は借家なので壊すわけにはいかない。
かといってこのまま明日になれば、月が替わり、一月分の家賃を支払わなければならなくなる。
一人ずつ商人ギルドへ行き解約の手続きをしていては時間が勿体無い。
他の人の家での作業をさっさと終わらせ、皆で行くとしよう。
その旨をアニータに伝え、俺達は次の家へと向う。
次の家の人物も、家の中には余り物が置いていなかった。
俺、ミリー、エル、レイの4人は先程同様、この家の住人と共にテキパキと作業を進め、20分程で終了した。
その後、そんな感じに次々と家を回って行き21人全ての家が終わったのは、日が傾き始めた頃だった。
引越しの作業をして行く内に一つ分かった事は、平民クラスの人の家には、基本的に生活に必要最低限の物しか無かったと言う事だ。
まぁ今回はそのおかげで21人全員の家を終わらせる時間が早かったのだが・・・
もし、一人一人の家の荷物が多かったらと考えると、ちょっと時間的に無理があっただろう。
この時は俺も運が良かったと思い、もう少し計画的にならないとな、と自分に言い聞かせていたのだが、どうやら今回のこのラッキー展開はLUKのステータスが高かったおかげだと、後になって知る。
全員の荷物の持ち出しが終わり、次は借家に住んでいた人達の解約手続きをしなければならない。
そこで皆揃って商人ギルドへと向う。
解約の手続きは、報告をするだけなのでアッサリと終了していくのだが、21人分となると少し時間は掛かった。
おかげで全員の手続きが終わる頃には、外は暗くなり始めていた。
後は全員をオルリア村に移動させるだけ。
レイ曰く、一度に運べるのは15人位までらしい。
なのでレイには悪いが、王都とオルリア村を2往復してもらわなければならないのだが・・・
「大丈夫です、お任せくださいマスター!」
「ありがとうレイ」
お礼を言いながら頭を撫でる俺は、嫌がらず頑張ってくれるレイに今度何かお礼をすべきだろうと思いながら、全員を連れてお城へと向った。
流石に夜、町の外で残りの人達を待たせるわけにはいかないからだ。
城につくと、門番に中庭を使う事を理由と共に伝えると、門番は一応決まりなのでと城の中へと入って行き、アルベルト王から許可をもらって来てくれた。
「ありがとう」と門番にお礼を言い、城の中を通って中庭へと向う俺達一行だが、俺やミリー、それにエルやレイ以外の人達は、中庭に行くために通り抜けるだけではあるが、城の中へと入ったという事実に驚き、周りをキョロキョロと見つつ、後ろを付いて来ていた。
平民は、普通ならば城の中に入れる事など無いので仕方ない事なのだろう。
中庭にやって来ると、レイに元の姿へと戻ってもらう。
ドラゴンになったレイの姿を間近で見て驚く人達の横で、俺はアイテムボックスから龍カゴを取り出そうと思ったが、今の龍カゴでは15人も乗る事は出来ない事に気づいた。
そこで、皆にちょっと待っててと伝え、城の中に入り周りに人がいない事を確認してテレポートスキルを使用。
行き先は、俺がこの世界に来た時、奴をぶつけた岩のある森の中だ。
夜風に吹かれ木々の葉が擦れる音が聞こえるなか、俺はダマスカスソードをアイテムボックスから取り出し、周囲の木々へと斬りかかり、静かだった夜の森の中で、木の倒れる音が幾度か鳴り響いた。
切り倒された木々を一箇所に集め、創造のスキルを使い新しい龍カゴ(サイズ大きめ)を造り上げる。
見た目は今まで使っていた物と同じで、枡の様な形にし、そのままサイズを大きくしただけの物だ。
余った材料と、新しい龍カゴ(サイズ大きめ)をアイテムボックスの中へと仕舞い込み、俺は再びお城の中庭へと続く扉の前へとテレポートし、そのまま中庭へと戻った。
皆に待たせた事を謝り、俺は先程造り上げた龍カゴ(大)を取り出し、ロープをレイの首に掛け準備が完了する。
ミリーとエルにはこの場に残ってもらい、俺と、他14人が龍カゴ(大)に乗り込み、1回目の移動を始める。
いつもの様に風のシールドを張り、乗り込んだ人達と空の旅をしている途中、会場の設営を始めておいてもらおうと思い、サラへと念話を飛ばす。
『サラ、聞こえるか?』
『聞こえてるよ、どうしたの?』
サラ限定だが、こうして直ぐに連絡できるのは結構便利なスキルである。
『サラにお願いがあるんだ』
『ぇー、ナツキのお願い?なんか嫌な予感しかしないよ』
面倒臭そうにサラは答えるが、俺はそれを無視して4つのお願い事を告げる。
1つ目、温泉旅館にいる人達をオルリア村へと連れてくる事
2つ目、今夜する焼肉パーティーの準備をしてもらうため、その内容をサラに伝え、それをタリアへと伝えてもらう事
3つ目、これから連れ帰る人達の為、エマルにお茶を用意してもらうよう伝えてもらう。
4つ目、サラに網目は小さめで、縦横1m程ある大きな網を3つ造っておいてくれという事
以上の4つの内容は、俺がサラに1つ貸しを作るという事で聞き入れてもらえた。
お願い事を伝え終えた後念話を終了させ、俺は空の旅を楽しんでいた人達に、村に着いてからの事を説明する。
「皆さん、空の旅は頼んで頂けているでしょうか?もうすぐオルリア村へと到着します。
現在村の方では皆さんを歓迎するため、パーティーの準備が進められています。
皆さんもお腹が空いているでしょうが、全員集まり次第の開始となりますので、すみませんが、それまで会場の方でのんびりとしていてください」
説明が終わると、皆から「了解」や「焼肉パーティーだと!?」等という声があがる。
その様子から楽しみにしていてくれる様だと察し、まもなく着くであろう我が村のある方角を見ていると、遠くに明るく、そして力強く燃える炎が見えた。
どうやら村の会場となる場所で、キャンプファイヤーの様に大きな焚き火が起こされている様だ。
レイはそんな焚き火の元へと向い飛んで行く。
焚き火が見え始めてから数分足らずで到着し、俺以外の人達には降りてもらう。
すぐに後半組みの人達を迎えに行かなければならないからだ。
皆に降りてもらっている間に出迎えにやって来たタリアに、降りた人達にお茶を出してもらうよう伝え、俺を乗せたレイは再び空へと羽ばたき舞い上がる。
少しでも早く戻るため、村から少し離れたところに来た時点で、レイに王都の近くまでテレポートすると伝え、スキルを発動させた。
王都の近くの空へと到着すると、そのまま城の中庭へと降りていく。
待たせてしまっていたミリーが往復時間の誤差に気づき、聞かれたらどうするの?と小声で指摘して来たのだが、こちらに帰って来る時は俺一人だから、レイに全力を出してもらった事にする、と答えた。
実際レイが全力を出せば、王都とオルリア村間の移動など、10分くらいで出来そうだし。
その後待たせてしまっていた後半組みを載せ、再び空の旅を開始する。
今回は先程より少なく、少し軽くなったおかげか、レイの飛ぶ速度が早くなっていた。
そのおかげで40分程でオルリア村へと到着した。
後半組みが龍カゴから降りると、レイは人の姿になり、俺も龍カゴ(大)をアイテムボックスに収納する。
片付けが終了した俺は、後半組みを連れ、先に集まっていた人達のいる焚き火の傍へと移動する。
待っていた皆が注目する中、俺は皆の前に立ち、これから始まる歓迎会の説明を今一度話し始めた。
次回 第77話 焼肉パーティー
歓迎会の部分まで書ききらず、その内容を77話目にまわすことにしました。
なのでまた1話分予定がズレ、人物紹介がその分遅くなりました。
ホントにすみません!!!!




