第73話 ようこそオルリア村へ
1月11日追記
次回タイトル変更しました。
尚、74話は今夜か日を過ぎた頃に投稿できると思います。
王都中央広場、通称[噴水広場]にやって来た俺達は、広場中央にある噴水の傍に別行動していたミール達やマルガのチームを見つけた。
ミール、ノア、シア、レイの4人は、ベンチに座っているミリー、マルガ、エルの3人を囲むように立ち、楽しそうに会話しながらも、警戒態勢は万全の用だ。
あれではどんなゴロツキが来ようが、きっと心配ないだろう。
まぁ、あの立っている4人の誰か一人でも十分だろうが・・・
ふと、ルークの姿が無いと気づき周囲を見回すと、女性陣から離れたところから女性陣の方を見つつその周囲を警戒していた。
タリアには女性陣の方に向わせ、俺はルークの元へと向い声を掛ける。
「そんな離れた所にいなくても近くで立ってた方がいいんじゃない?」
「あ、いえ、そのなんていうか、マルガやナツキさんの奥様方達の話してる所にちょっと居辛くなっちゃいまして、ハハハ・・・」
後頭部に手を沿え、苦笑いするそのルークの姿に、ミール達が何か男性が居辛くなる会話をしたのだろうなと想像できる。
一体どんな会話をしていたのだろうか・・・
「さぁ、もうすぐ予定の時間になりますし、皆の所へ行きましょう」
そう言ってルークを連れて女性陣と合流する。
「皆、そろそろ時間だから掲示板の所へ移動しようか」
楽しげに話す女性陣の会話を止めさせてもらい、皆で一緒に掲示板の前へと向う。
掲示板の前には、すでに面接合格者、計21人が集まっていた。
「お集まりの皆さん、まずは面接合格おめでとうございます。
早速ですが、今後の予定について説明させてもらいます。
明日、皆さんには従業員専用として用意した住居に引っ越しをしていただきます」
引っ越しが明日と聞いた人々からざわめきが起こるが、俺は説明を続ける。
「引っ越しの作業については、我々が責任をもってお手伝い致しますのでご安心下さい。
全員の引っ越し作業が終わった後、皆さんに詳しい仕事内容について説明し、夜はちょっとした皆さんの歓迎会を開こうと思っています」
今一瞬、背後に立つタリアがピクリと動く気配を感じた気がする。
まぁ、何の相談もなく歓迎会を開くとか今俺が勝手に決めた事を言ったせいだろうな。
後で謝っておかないとな。
「何かここまでで質問はありますか?」
引っ越し先の住居はどれくらいの広さがあるか?とか、引っ越しは何時から始めるか、また荷物はどうやって運ぶのかといった事、他にも現在宿を利用していて家具が無く、すぐには用意出来ないのだがどうすればいいか?という質問があった。
「1部屋、つまり1軒辺りの広さは3人家族が住むのに十分な程の広さがあります。
それから引っ越しの時間なのですが、明日の午前9時から作業を始め、前半と後半の2回に分けて皆さんの引っ越しを終わらせるようにしようと思っています。
この後皆さんに紙を渡していきますので、それぞれの家の住所を書いて提出してください。
書いた紙を受け取る際に、前半か後半のどちらかお伝えします。
そして次に引っ越し方法ですが、引っ越しの際の荷物は私のアイテムボックスを使います。
ちゃんと誰が何を持って行くのか、荷物を預かる時に本人に確認してもらいながら荷物のリストを作りますのでご安心下さい。
残った家や、残していく家具については、引っ越しの際に相談しますし、後日、落ち着いてから残りの荷物を運ぶという事も可能です。
それから家具が無く、すぐに用意出来ないという方は、こちらで必要最低限の家具は用意します。
ただ、その用意した家具の代金については、毎月の給料から少しずつ支払って頂く事になります。
以上が皆さんからの質問に対する答えですが、何か疑問になる事などや、他に質問はありますか?」
皆納得してくれたのか、挙手する者はいなかった。
「では皆さんに紙と羽ペンを渡しますので、そこに住所を記入してください。
出来た人は、私の所へ持ってきてください」
アイテムボックスからメモ帖を取り出し、一枚ずつ破って全員に配っていき。
手前にいる人には羽ペンもセットで渡す。
「すみませんが、今羽ペンを受け取った人は、書き終わったら近くの人に渡してください」
羽ペンを受け取った人がどんどんと記入を終えて行き、20分程で全員の住所の書かれた紙が手元に揃った。
「明日は、皆さんにお伝えしていった順番通りに家を回って行きますので、今夜にでも持って行く荷物を考えておいて下さい。
以上で本日の説明は終了となります」
こうしてこの場は解散となり、皆、家へと帰って行った。
「タリアさん、勝手に歓迎会を開くなんて言ってすみません」
「いえ、御主人様がお決めになられた事ならば、我らメイドはそれに従うまでです」
「歓迎会といってもオルリア村の皆を集めて、全員で焼き肉でもしようと思うんだ。
だからメイドの皆も時間を見つけて、沢山食べてくれ。
マルガさんとルーク、二人の歓迎も兼ねてるから、二人も楽しんでください」
「では、肉の方はまた私とノアとシアの3人で集めておきます」
「ああ、いつも悪いなミール」
頭を撫でながらお礼を言う。
この時、獣耳も同時に愛でる事はもちろん忘れない。
ふと視線をミールから外すと、ミリーとエルが掲示板に書かれている今日のニュースを見ていた。
何か気になる出来事でも書いてあったのかな?後で聞いてみよう。
「さぁ、我が家に帰ろう。レイ、王都の外に出たら村まで頼むよ」
「はい、マスター」
「ミリー、エル、帰るぞ」
「「はーい」」
日はすでに沈み、南門へと通じる街灯に照らされた道を俺達は進み、町の外へ出る。
少し離れたところまで歩き、レイには元の姿に戻ってもらう。
竜の姿、それもノーブルドラゴンという種を、始めて間近に見たマルガとルークは、驚き興奮している。
普通ならばドラゴン種の上位種であるノーブルドラゴンがこんなに近く、しかも触れる程の距離にいれば、まず命は無い。
だがしかし!今からそのドラゴンに乗って空の旅が出来るというのだから、今の二人の興奮は無理も無い事である。
正確にはレイに乗るのではなく、|レイの首に提げた龍カゴ《・・・・・・・・・・・》に乗るのだが・・・
一応、その事を二人に話して見たのだが
「いえいえ!それでも十分に凄い事ですよ!私今日の事は絶対に忘れる事の無い思い出になります!」
「そうですよ!だってドラゴンによる空の旅ですよ!凄過ぎますよ!!」
とまぁ、こんな感じで興奮しっぱなしだ。
本人がこう言うのだから気にする事じゃないだろう。
アイテムボックスから龍カゴを出し、レイに首から提げてもらうと、俺達は龍カゴに乗る。
流石にこの人数になると、きついのでは?と思ったのだが、レイに聞いて見たら平気だと答えた。
問題はちょっと龍カゴの中が狭く、ゆったりと座る事は出来ず、オルリア村に着くまで立ったままの状態だ。
それから少しの間、闇夜を照らす月を眺めながら、俺達は空の旅を楽しんだ。
村の上空まで戻ると、レイに指示し、我が家と孤児院の間へと着地してもらう。
皆が龍カゴから降りると、俺はそれをアイテムボックスへと仕舞いこむ。
その間にレイは人の姿へと変身していた。
大地に降り立っても尚、マルガとルークはまだ興奮が冷めぬ様子だが、そんな二人を、真正面に見えている我が家の玄関前まで案内する。
「先に一つ、我が家の守ってもらいたいルールを説明しときますね。
我が家は土足厳禁となっています。
ですので玄関から中に入ったらそこで靴を脱いで下さい」
「靴を、脱げばよろしいのですね?」
「はい。すみませんがコレのルールだけは守って下さい」
それだけを伝え、家の中へと入った。
俺は元より、ミール達やタリア達はもう慣れたようだが、マルガとルークの二人は、家の中を裸足で歩く事に違和感がある様だった。
次回 第74話 月に1日のモノ
予定より物語の進行がおいまして・・・遅れております。
それに伴い、この辺りでと予定していた話が、少し後にずれます。
まことに申し訳ございません!




