第70話 約束
最近忙しくて、なかなか書けず、大変遅くなってしまいました。
すみません!
「これはこれはナツキ殿ではございませんか!先日は助けて頂いておきながら、私とした事が名乗らずのままで申し訳なかった!我が名はウォーリー=クイール、アクルーン城で騎士団長をさせて頂いております」
俺の前までやって来たウォーリーと名乗る男は、先日身に付けていた防具等は来ておらず、腰に1本のサーベルを提げているだけの姿だった。
身長が170cm程あるウォーリーの身体は、騎士団長を務めているだけはあり、とてもよく引き締まっていた。
完全解析スキルによると、ウォーリーの年は38歳らしい。
「そしてこちらが」
「この度、水の国アクルーンより、使者を任されました、マルガと申します。どうぞよろしくお願いします」
名乗りながら頭を下げるマルガの一連の動きは優雅なものだ。
それに比べ、頭上にいるサラが落ちないようにと気遣いながら「此方こそ宜しく」と答え、会釈を返す俺の動きは、優雅というものから遠くかけ離れているように思える。
「ではこちらも改めて、この国で伯爵の地位を頂いたナちゅ・・・」
・・・
ゴホン
「ナツキ=カガです」
「プフッ!」
頭上でが盛大に噴き出すサラ。
そしてもう一人、俺の背後ではシアも静かに笑っていた。
そんな俺達を見ていた、ウォーリーとマルガも苦笑いだ。
チクショウ!ちょっと言葉遣いだけでもって思ったんだよ!
取りあえず誤魔化すように咳払いし、俺は後ろに居る皆の紹介を始める。
面倒なので、畏まった言葉遣いも止めさせてもらおう。
面識も有り、一度は名乗った事のあるミールから始め、ノア、シア、と順に自分の嫁だと紹介していき、次はミリーの番となった。
「そして次はミリーエル=フェーン=フレムスト、この国の元姫様で、今は俺の嫁です」
「何と!?」
「まぁ!」
ウォーリーとマルガの二人は驚いている。
まぁ、この国の姫様が嫁だなんて聞きゃ、そりゃ驚くわな。
「次はその後に居る、翼人族のエルージュ、彼女は私の奴隷です」
名前を呼ばれ、エルは会釈をする。
「そしてその隣がレイ、彼女は俺の配下で、ああ見えて実はノーブルドラゴンなんです」
「「え!?」」
まぁ、そういう反応になりますよね。
予想していたさ。
驚いたままのウォーリーとマルガだが、後二人居るので紹介を続ける。
「で、一番後ろに控えているメイドは、我が家のメイド長のタリアです」
名前を呼ばれたタリアがしたお辞儀は、マルガ同様の優雅なものだった。
「そして最後は俺の頭の上に居る、こいつはサラ、一応火の精霊王です」
「「!?」」
「やほ~」
ウォーリーとマルガはサラの正体を知り驚くと、その場に平伏する。
二人が中央広場で平伏をしていると、周りの視線がとても痛い。
なので俺は、二人に止めるようにお願いするのであった。
また変な噂が出来なければ良いのだが・・・
ウォーリーとマルガの二人を立たせ、このままここで話していてはアルベルト王を待たせてしまうので、皆揃ってお城へと歩いていく。
城の前に着くと、俺とミリーの二人の姿を見た二人の門番が、どうぞどうぞとノーチェックで通してくれる。
もちろん一緒に来ていたウォーリーとマルガもノーチェックだ。
入り口の扉を潜ったところで、俺、サラ、ミール、ノア、シアのグループと、タリア、ミリー、エル、レイのグループに分かれる。
「それでは御主人様、私達は資料室へ行って参ります」
「じゃあね旦那様、また後で」
「行って参りますナツキ様」
「行って参りますマスター」
「ああ、皆頼んだぞ」
4人にエールを送ると、タリアを先頭に、ミリー達は資料のある部屋へと向かった。
「彼女達は別行動なのですか?」
二グループに別れた事が気になったのか、ウォーリーが尋ねてきた
「昨日人を雇うための面接をしましてね、それに合格した人の中に犯罪歴が無いかどうかを彼女達に調べてもらうよう頼んだのですよ」
「なるほど、そうでしたか」
「さぁ、俺達も行きましょうか、あまりのんびりとしていてはアルベルト王が待ちくたびれてしまいます」
こうして俺達はアルベルト王の待つ謁見の間へと向う。
謁見の間へと到着し、アルベルト王との挨拶を終えると、アルベルト王が場所を移そうと言い、皆で会議室へとやって来た。
アルベルト王が上座に座り、俺達家族と水の国の使者であるマルガは対面になるように座り、ウォーリーはマルガの背後で、後ろで手を組み立っていた。
「さてと」と声にだし、アルベルト王が話し始める。
「昨日ナツキ殿の元へ言伝を頼んだハスマからも聞いておると思うが、精霊王であるサラ様と契約した者、つまりナツキ殿を水の国に招待したいという事らしい。
ナツキ殿はこの国では国賓の様な存在であり、ワシ個人で決める訳にはいかぬので、こうしてお互いに集まってもらい、本日、水の国の使者であるマルガ殿から直接ナツキ殿に伝えてもらおうと・・・」
「あ、ちょっといいかな?」
俺の頭上にいるサラが、アルベルト王の言葉を遮った。
「何でしょうか?サラ様」
「その事なんだけど・・・実はもう水の精霊王には近い内に行くって約束しちゃったんだよね」
はい??
突然のサラの告白に、一同の頭の上に疑問符が見えそうになる。
「おい、どういう事だよ」
サラの体を両手で掴み、頭の上から持ち上げてサラの顔をジッと見ながら質問する。
「いや、だから、水の精霊王には」
「そうじゃない、何時どうやってそんな約束を勝手にしたのかを聞きたいんだが」
サラにそう問い詰めて見ると、サラ達のような精霊種という存在は、身体を眠らせている間に意識だけを飛ばし連絡を取り合う事が出来る、という答えが帰ってきた。
そして昨晩、眠りについたサラは水の精霊王の元へと意識を飛ばし、勝手に約束をして来た、という事らしい。
せめて俺に確認を取ってからにしろよな!
これはお仕置きポイントを加算だ!
「まぁ、俺の意思は無いにせよ、約束してしまったものは仕方ないので、水の国へは行こうと思います」
「有難うございます!これで姫様に喜んでいただけます!」
何故姫が?なんてふと思ったが、普通に考えて見れば、水の精霊王の願いを受け使者を送ったのは姫様な訳だからあってるのか。
ただ、こちらも出発する前にしなきゃ行けない事がある。
今日の夕方に集まってもらう予定である、面接合格者の人達の事だ。
俺の予定としては、数日間の間礼儀作法とそれぞれの仕事内容の訓練、それが終われば温泉旅館の開店という感じだったのだが・・・
まぁ、水の国に行って精霊王に会う位ならそう日数は掛からず戻って来られるだろうし、その間メイド達に従業員達の礼儀作法の訓練だけでも頼めば良いだろう。
従業員達の引越しや準備の事を考え、出発は明後日位で良いだろう。
「それでは明後日、レイに頼んでマルガさんも一緒に乗って水の国へ向けて出発ということで」
「レイさんって確かノーブルドラゴンの」
「はい、彼女の速さなら水の国まで1日掛からないはずですよ」
「一つをよろしいでしょうか?」
そう言ったのは、マルガの背後で静かに立っていたウォーリーがだった。
「どうかしましたかな騎士殿?」
アルベルト王がそう尋ねると、ウォーリーはマルガに一人だけ護衛を残し、それ以外の護衛達を連れ、先に出発すると言い出した。
今からすぐに出発し、道中を少し急げば俺達より先に水の国に入り、姫様に報告する事が出来るらしい。
そして俺達がドラゴンに乗って来るという事で、その姿を見た町の人々が阿鼻叫喚にならぬ様、前もって知らせて対策をしておきたいとの事。
こちらとしても、そんな事にはなって欲しくはないので「よろしく頼む」と伝えると、ウォーリーは快く承諾してくれた。
「ではマルガ殿、今朝泊まっていた宿に一人護衛を待機指せておきますので、後ほど合流してください」
「分かりました、ここまでの護衛有難うございました。
帰りの道中のお気をつけ下さい」
「はい」と一言答え、ウォーリーは会議室を出て行った。
「マルガさん、水の国につくまでの間、俺達も護衛もしますので、安心してください。
後、出発までの間は我が家にでも泊まっていて下さい」
「よろしいのでしょうか?」
「ええ。むしろ水の国から来た使者に何か合っては大変ですからね」
「有難うございます」
「ところで、水の国ってどんな所なんです?」
まだタリア達の方も終わってないだろうと思い、目的地となる水の国がどんな所なのか、マルガに尋ねてみる事にした。
次回 第71話 番外編[俺の常識と異世界の常識]
ただでさえストーリーの進行が遅いのに、次回はちょっと番外編を入れようと思います。




