第5話 常識ブレイカー
ミールの話が終わったと思うと、その後しばらくミールはにやけながらモジモジし、何かを考えている様だった、何か妄想でもしてるのだろうか?
そんな様子を生温かな眼で見ていると、突如周囲に張り巡らせていた探知スキルに大きな反応が引っ掛かる。
(この反応・・・ボアに似ているけど、それよりももっとデカい、なんなんだ?)
反応のある方向を武器を構えてじっと見つめる。
ミールも敵に気付いたのか、先程までのにやけた表情ではなくなり、俺の視線の先を警戒していた。
「気付いたかミール、この先にボアよりデカい反応があった」
「はい、確かにボアと似たような臭いがしますが、それよりも大きい気がします」
どうやらミールは敵を嗅覚により嗅ぎ分けているようだ。
「ボアに似ていて、大きいサイズ・・・か」
「大きいボア・・・もしかしてキングボア!?」
敵の正体に行きついたのかミールは驚いているが、それほどの相手なのだろうか?
そんな事を考えている間にも、敵の反応が徐々に近くなって来ていた。
敵に気づかれるより先に、木々の向こうについにその姿を捕らえた。
「はは、こりゃでかい・・・(とりあえずステータスを見せてもらおう!)」
小さく乾いた笑いをだしつつも、木々で体を隠しながら完全解析を行う
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キングボア ♂
LV 28
HP580
MP48
STR 213
VIT 194
AGI 308
INT 98
DEX 84
LUK 33
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「うわ、こいつのHP、ボアの40倍近くあるよ!?」
「ナツキ様、キングボアはまだ私達では倒せる相手じゃ・・・」
うん、俺もそう思う・・・そう思うんだけど・・・目がね、合っちゃってるんだよ。
高さ2メートルほどあるキングボアがこちらを睨みつけていた。
それに気づいたミールはダガーナイフを構え、俺の前に出る
「私が囮になります、その隙にナツキ様は逃げてください!」
ミールを置いて俺が逃げる?そんな事できるわけがない!だから俺はショートソードを構え、ミールの横に並び、キングボアと対峙する
「そんな事出来るわけ無いだろ!」
「ナツキ様・・・・」
「こいつを倒して、さっさと帰るぞ!」
とはいったものの、どうやってこいつを倒すか・・・
俺の持つスキルで戦いに仕えそうな物は時空魔法と創造のスキルくらいだ。
まずは時空魔法のクイック、奴に追いつけるだけのスピードを手に入れるには絶対的にMPが足りない、なので却下。
次にスロー、相手のほうがレベル的にもステータス的にも高いから効かないだろう、やはり却下。
最後はテレポート、こいつでミールをつれて逃げる・・・いや、これも俺のMPが足りないだろう、却下。
つまり時空魔法ではどうしようもない、残るは創造だ、しかしどうすればいい?
そんな手持ちの札を生かす方法を考えていると、キングボアが前に体重を掛け始めたのが見えた。
その動きが見えた時、俺の脳内に警告が鳴り響く感覚があった
アレはまずい気がする!
「ミール!避けろ!」
俺は叫びながらキングボアの正面から逃げるように横に跳ぶ、その瞬間キングボアが凄まじいスピードで、先程俺がたっていた位置を木々を薙ぎ倒しながら突進し通過していった。
ミール自身もキングボアの動きに注意していたのか、横に跳びキングボアの突進を避けていた。
キングボアは避けられたと分かると、スピードを落としながらこちらに向けて方向転換し、立ち止まると再びこちらの様子を伺い始めた。
「何だあのスピード!対処に遅れたら即死レベルじゃねぇか!」
「はい、キングボアの最大の脅威とも言われる突進です、あれの動きをみて、事前に察して避けなければ、今の私達では確実に死んでしまいます」」
「だよな・・・くそう!何かいい方法は無いのか・・・」
そういって周りを見渡すと先程キングボアが突進の際に薙ぎ倒した木々の向こう側に大きな岩を見つけてこの世界で最初のボアにとった作戦を思い出す。
「(そうか!昨日やった手を使えば・・・いやそれだけじゃダメだな・・・何か、何かいい方法・・・あ!)ミール俺の元にこい!」
脳内で作戦が決まり、ミールを俺の隣に呼び寄せて立てた作戦を伝え、キングボアの注意をミール任せると、俺は木々の向こうに見える大きな岩の後側へテレポートで移動する。
するとMPが丁度0になってしまったようだ、体中にズシリと気だるさが一気に襲い掛かり、意識が遠のきそうになるのに必死で耐える。
そしてアイテムボックスから、残り1本だけのマジックポーションを飲み干した、すると先程の気だるさも消え、MPが回復したのが実感する。
俺自身、MPが足りるかどうかも解らない、だがそんな心配をし続けるよりも、今はキングボアを任せているミールのためにも、この作業をさっさと終わらせねば!
まずは目の前に大きな岩に創造を使い、今もキングボアのいる方向の側面を、先の鋭い長さ60cm程の杭の様な形に変化させる。
少し形をイメージするのに時間がかかってしまったが、うまく思った様な形にはなり、これで奴に対する罠と呼べるか解らない物が完成したのだ。
その後、自分の残りMPをここで確認すると、15/36となっていた、この作業だけで21もMPを消費してしまったようだが、15もあれば大丈夫だ。
俺は今しがた創った杭の形をした前に、ボアからソレを隠すように立つと、ボアに向けて地面に落ちている石を投げつけた。
「ほら!こっちだ!」
キングボアがこちらに気づくと、こちらに体を向け、前に体重を掛け始めた。
そしてボアの前足に注意して、動く瞬間がみえると、すぐに俺はテレポートで少し横へと転移すると
「ブヒィァァァァ!!!!」
キングボアの雄たけびと共に、キングボアの頭に石で創られた杭の様な物が突き刺さる鈍い音が聞こえてきた。
しかし、さすがはキングボア、眉間の部分が串刺し状態なのに、まだ息がある。
って、おいおい急所のはずだぞ・・・なんでまだ生きてんだ!?
「ミール、こいつを今の内に倒しきるぞ!」
「はい!」
石の杭に突き刺されたままのキングボアに、二人係で何度も斬りかかり、ようやくキングボアを倒す事が出来た頃には、二人は肩で息をしていた。
そのまま少し休憩し、呼吸を落ち着かせた後、アブソープでキングボアのステータスを吸収すると、次はその死体から素材を取り出すべく分解を使う、するとそこには、キングボアの肉塊(50kg)が残ったのだが・・・そのままだと持ち上げれそうにないので、それをさらに4等分に切り分け、それぞれアイテムボックスの中へと片付け、自身のステータスの確認をしてみた。
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ナツキ 男 20歳
LV 8
HP 754/754
MP 26/108
STR 316
VIT 313
AGI 418
INT 176
DEX 154
LUK 72
スキル
ステータス&スキル隠蔽
アブソープ
完全解析
融合と分解
言語マスター
テイムマスター
癒しの加護
創造
方向感覚マスター
探知マスター
時空魔法 LV5
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レベルが8にあがっていた。
というか、これって明らかにレベル8のステータスじゃないような・・・
そんな俺のステータスを見たミールが「ナツキ様すごい!」って目をキラキラしながら言ってくれるのが可愛いので撫でてあげよう。
撫でている間、目を瞑りくすぐったそうにしてて、ほんと可愛い奴だよ!
しばらくミールの撫で心地を堪能した後、二人は町へと向かい始めた。
その後、モンスターと出会う事なく、俺達は王都まで帰ってこれたので、すぐに冒険者ギルドへ依頼の報告しに向かう。
「にゃ・・・にゃんですとぉぉ!?」
報告すると討伐した敵が分かると言う事は、キングボアの討伐もばれる訳で・・・
しかもコロンさん、言葉遣い変わっちゃってますよ?
「はっ!す、すみません、取り乱してしまいました・・・がいったいどうやってキングボアをお二人で・・・・?」
「運と実力ですかね・・・アハハハハ」
戦いに疲れ、説明も面倒に思えたので、適当な事を言いながら笑って誤魔化しておいた
「昨日今日冒険者になったばかりの人が、運と実力だけでどうにかなるような物じゃないと思うのですが・・・まぁいいです、ゴホン!こちらが依頼の報酬になります。」
そう言って依頼の報酬を受け取り、手に入った素材は素材屋で換金をする、キングボアの肉塊が高く買い取ってもらえた、満足した俺はミールを連れて冒険者ギルドを後にした。
次回 第6話 今後のために