第43話 試作品
オルリア村へと戻ると俺は自宅へ入ろうと扉を開けると「カランカラン」と音が鳴る。
そんな仕掛けをつけていた事など知らなかった俺達が驚いていると、音を聞きつけたタリアがリビングから出て来た。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「ただいまタリアさん」
タリアに扉の仕掛けについて聞いて見ると、俺達が戻った時や来客の時に分かるようにと取り付けたとの事。
「なるほど」と理由に納得した俺達は、靴を脱ぎ家へと上がる。
「とりあえず皆は荷物を置いて、その後リビングに集合してね」
「はい」や「はーい」と返事をすると、5人仲良く喋りながら寝室へと向う。
そんな後ろ姿を見送ると、特に荷物を手に持っていない俺はリビングへと入る。
リビングで椅子に座りると、タリアが紅茶を淹れてくれたので頂いていると、ミール達がリビングへとやって来る。
ミール達にも紅茶を用意してもらい、一息つきながらこの後の事について話す。
「この後だが、ミールとノアとシアの三人には、食料用に村の周囲でボアを狩ってきてくれないか?」
「分かりました、じゃあノア、シア、この紅茶を飲み終わったら出発ね」
「はい」
「はーい」
返事をすると、コクコクと残りの紅茶を一気に飲む3人
そんなに慌てて飲まなくても・・・
紅茶を飲み終え、言ってきますと席を立つ3人に近寄り、獣耳や長耳を撫でながら「頼んだよ」と言うと、ウットリ顔で「「はい」」と答え、リビングを出て行く3人を見送る。
すると後ろから服がクイクイと引っ張られたので振り向くと
「旦那様、私達も何か役に立てる事はある?」
ミール達が撫でて貰えたのを見て、自分もして欲しいと思ったのだろうか、ミリーの目はキラキラと期待に満ち、エルは胸の前で祈るように両手を握った状態で俺を「ジィ~」と見ていた。
「ミリーとエルは、俺の手伝いを頼む」
そういって二人の頭を優しく撫でてやる。
「はーい!」
「は、はい!」
俺は親方から得たヒントで思いついた事をすべく二人を連れて、自室へと向う。
自室に入ると、まずは買ってきたメモリーストーンを取り出しテーブルの上に並べる。
そしてその内の一つを持ち、思いついた事を試して見るが、何も起こらなかった。
「あの、旦那様?何をしているの?」
俺の行動を疑問に思っているミリーとエルは首を傾げながら俺を見つめて答えを求める。
「いや、ちょっとした実験をね、でもダメなようだ」
「実験?」
「もしかしたら、このメモリーストーンを使って誰でも簡単に魔法が使えないかなって思ったんだけどね」
「ナツキ様、それは無理な事です。魔法とは、使う魔法のイメージをする事、そしてその魔法の属性となる魔力を込めるという二つの事が必要となります。
それに対しメモリーストーンは一つの命令しか覚えさせる事が出来ませんから」
そう答えるエル、どうやら彼女はメモリーストーンや魔法についての知識があるようだ。
因みに俺はメモリーストーンを買うときに、こっそりと完全解析する事で使い方を知る事が出来た。
その時に見た内容は
________________
[メモリーストーン]
メモリーストーンを握り閉め、させたい事を強く念じる事で一つだけ命令を覚えさせる事が出来る。
________________
と言うものだった。
自室に来て最初に試していたのは、コレを見た時にいろんな可能性が思い浮かんだので、さっそく実験を試みたと言う訳だ。
「その実験が失敗したって事は、もう終わりなの?」
「いや、俺のしようと思ってるのはコレとは違って別の事なんだ」
「「?」」
再び首を傾げる二人にコレからする事の説明をする。
「朝食の時に換気扇の話しをしただろ?」
「ええ、確かお風呂場の空気を入れ替えたりする装置ですよね?」
「ああ、その換気扇の変わりになる物を、この複数のメモリーストーンを使って作ろうと思ってるんだ」
もしコレが完成すれば、他にも沢山の便利な物が作れるようになるはず、なので何としても完成させたい。
とりあえず早速始めようと思うのだが、今目の前にあるメモリーストーンは直径4cm程の球体で、全部見た目が同じなのだ。
もし混ざるとどれに何を命令しているか分からなくなるので、クリエイトのスキルで四角形や五角形などの形に作り変える。
俺の手の上で形が変わっていくその光景を見たエルは驚いていた。
そんなエルを見て、俺は一旦作業を止め、俺の秘密について話しす事にした。
話の始めに、まずはステータスを開き、全てを見せると、エルは驚きのあまりに、ペタンと尻餅をつく。
更なる追い討ちにと、俺が別の世界から転生してきた事や女神様のお願い事について話していく。
「とまぁこれが俺の秘密の全てだ、ステータスは嫁であるミール達の他に、ギルドマスターのハスマさんが知ってるくらいだな。
後、この村に住む住人が俺のテレポートとクリエイトの存在を知っている位だろう」
「旦那様、お父様とお母様も旦那様が女神様と面識がある事をしってるよ?」
え?俺話してないはずだけど?なんて思っていると、サラとであった時、ダークドラゴンを追って町にテレポートした後、城に戻ったミリーが報告したのだそうだ。
まぁ、王様と妃様ならソレくらいは知っていても大丈夫だろう。
念の為、ミリーにはそれ以上の秘密は喋らないようにとだけ注意し、今だに尻餅をついたままのエルに手を貸し立ち上がらせる。
話も一通り終わり、作業の続きを始めようとミリーとエルにメモと羽根ペンを渡す。
二人にはどの形のメモリーストーンに何を命令したのかを書いて貰う事にする。
準備が完了し、まずは一つ目のメモリーストーンを手に取る、一つ目は球体のまま形だ。
コレにはまず風の力を覚えさせるため、握り締め強く風をイメージする。
すると、メモリーストーンは淡く緑に輝きすぐに輝きが収まっていく。
多分成功したのだろう。
「1つ目、球体には風のイメージを込めた」
「球体、風のイメージっと」
俺の報告を完結に書き止めるミリー、そして書いたメモをエルに渡し、エルはそのメモと球体をセットにしてテーブルの上に置く。
続いて二つ目をと、四角のメモリーストーンを手に取る。
コレには魔力を溜め込むという事をイメージし覚えさせる。
今度は淡く白に輝き、またすぐに輝きが収まった。
「2つ目、四角には魔力を溜め込む」
「四角、魔力を溜め込むっと」
先程と同じくメモを取り、そのメモを受け取ったエルが四角のメモリーストーンとセットにしてテーブルに置く。
三つ目には五角形のメモリーストーンを選ぶ。
コレには魔力の伝わっていく銅線の様なイメージ覚えさせる。
すると今回も淡く白に輝くが、やはりすぐに輝きは収まる。
「3つ目、五角形 魔力を伝える線の様な物」
「五角形、魔力を伝える線」
「これらをどうするのでしょうか?」と疑問を口に出しながらも、メモを受け取りセットにしてテーブルに置くエル。
そんなエルに、終わってからのお楽しみと答えながら、4つ目の六角形には触る事にONの状態になるスイッチの役割を覚えさせ、続けて5つ目の星型には2度触るとOFFの状態になるスイッチの役割を覚えさせる。
「六角形にはONの役割、星型にはOFFの役割だ」
「六角形、おん?で星型にはおふ?ですね?」
「[おん]と[おふ]ってなんですか?」
メモを取るのに忙しいミリーに変わり、エルが質問してくるので、ONが動かす、OFFが止めると教えてあげる。
こうして5つの命令を覚えたメモリーストーンが完成し、漸く最後の工程までやってきた。
ふと窓の外を見ると空が夕焼けに染まり始めていたので、作業を急ぐ事にする。
出来れば今夜のお風呂までには完成させ、試運転させたい。
「ところで、ナツキ様はこれら5つをどの様にするおつもりなのですか?」
「ココからは俺のスキルを使って、これらを組み合わせていくんだ、まぁ見てて」
そう言うと、部屋の隅にミリーとエルを移動させ、アイテムボックスから木を取り出す。
部屋の端から端まであるような木にクリエイトのスキルを使い、換気扇の形へと造り変え、羽根の中央の部分に球体のメモリーストーンを融合スキルで埋め込む。
これで換気扇の本体部分は完成となるので、次はソレを動かす風を起こすための装置を作ろうと思い、本体を壁に立て掛け、六角形と五角形のメモリーストーンを両手でもち、二つを融合させる。
この別々の命令を持ったメモリーストーン同士を融合させる事でうまく作用するかは不明だが、俺の理論的には可能だと信じている。
こうしてスイッチの役目の様なメモリーストーンが(多分)完成したので、次はアイテムボックスの中から縄を取り出し、テーブルに置く。
そして魔力を流す線の役割を持ったメモリーストーンを手に持ち、ソレをクリエイトのスキルで粉々にし、先程取り出した縄と融合させる。
俺の考えとしては、コレで電気を流す銅線のようなの物に出来たと思っている。
とりあえずコレは魔導線と呼ぶ事にしよう。
次は魔導線の端から10cm程切り離し、魔力を溜め込むメモリーストーンとスイッチの役割をもったメモリーストーンの間をつなげるように融合させる。
[魔力を溜め込む]ーー[スイッチ]
こんな感じだ。
そして残りの魔導線で魔力を溜め込むメモリーストーンと、換気扇本体の風のイメージを持ったメモリーストーンを繋げ、我流の換気扇が完成した。
「よっしゃ完成!」
「ナツキ様はよくこの様な方法を思いつきましたね、すごいです」
「エル、こんな凄い方伴侶にならないと人生損しちゃいますよ?」
突然俺を売り込むミリー、もっと言っちゃって!
あ、でも出来れば俺のいないところでね?
二人を見てそんな事を思いながらも、とりあえず完成した換気扇らしきものをアイテムボックスに仕舞いこむ。
「ミリー、エル、俺はコレを設置してくるから、二人は先にリビングに戻ってて」
「はーい」
「はい」
自室から出ると、二人とリビングの前で分かれ、俺は風呂場に行き、せっせと風呂場の天井に換気扇を設置し、魔導線を天井と壁を這わせ、風呂場から脱意所へと出る扉の横の壁にスイッチを埋め込み、脱意所から押せるように設置する。
早速スイッチを入れようと思ったが、どうせなら手伝ってくれた、ミリーとエルの二人にも試運転の瞬間を見せてやろうと思い、俺はそのままリビングへと戻っていく。
次回 第44話 コロンの一日
眠い!
日曜日に一日かけて(途中寝有りで)書き続けていたのですが、気づいたら日曜日終わってた!?
やばい!早く寝なきゃと思いつつも、スマホで他の作者様の作品を読み始めようとしている自分がいる。




