第40話 村の発展~その4~
孤児院を完成させ家に戻ると、リビングでは子供達がまじめに文字の勉強をしていた。
子供一人に付き先生が一人、つまりマンツーマンでのお勉強だ。
そんな光景に、いずれ学校を作ろうと思いメモしていると、ミールが俺に気づく。
「あ、ナツキ様、おかえりなさい、孤児院というものは完成したのです?」
「ああ、完成したよ、後はこの子達の私物を運び込むだけなんだけど、まぁ、それは昼食の後にやろうか」
「そうですね、もう少しでお昼ですし、それまでは文字のお勉強にしましょう」」
「「「「「はーい」」」」」
元気に返事した子供達は、再び文字の読み書きの練習をし始める。
暫くその様子を椅子に座って、ボーっと眺めていると、空腹を感じ、ふと時計を見ると時間は12時少し手前。
そういやロムとコロンに命じてた風呂掃除の方はどうなったんだろ?見に行ってみよう。
俺は椅子から立ち上がり、ミールにロムとコロンの方を見てくると伝えて風呂場へと向う。
脱衣所に到着すると、ロムとコロンはペタリと座りこみ、休憩していた。
「もう掃除は終わったのか?」
「あ、兄さん!うん、今さっき終わったところ!」
声を掛けると、ロムがスクッと立ち上がり、俺の前へとやってきた。
「この姉ちゃんスゲー手際がよくってさ!おかげでこんなに早く終わっちゃったよ!」
その報告の仕方だと、殆どコロンが頑張って掃除したと言ってるようなものなのだが?
コロンも俺と同じように思ったのか、ロムの仕事ぶりに付いて話し始めた。
聞いた内容によると、ロムもまじめに掃除していたようだ。
念の為、中を覗いて確認すると、ちゃんと浴槽や洗い場の水滴まで拭き取られていたので、二人の言う事は間違いないようだ。
ふと、昨日タリア達と風呂に入った時の事を思い出し、考えていた換気についての対策をするため、俺は浴室の壁に手を当て、クリエイトのスキルで風が通る隙間を、壁と天井の間に造る。
これでこの浴室に湯気が立ち込める事は無くなるはずだ!
本当なら換気扇が欲しいが、それを動かす動力をどうしたら良いのかと考えるが思いつかず、現在断念中なのだ。
コロンとロムの二人には昼食が出来るまで休憩してて良いと伝え、脱衣所を後にする。
リビングに戻り、昼食まで暇になった俺は、換気扇を動かす動力について考える事にする。
しかし、火力発電や汽力発電といった言葉は思いつくが、その構造まではまったく分からず、どうにもなら無い状態。
少しの間、あれこれと悩んでいると、いつの間にか後ろに来ていたタリアが昼食の準備が出来たと教えてくれる。
時計を見ると時間は12時30分、ククリにロムとコロンを呼びに言ってもらい、全員が揃ったところで昼食となった。
食事中、ミールに昼食前に何を悩んでいたのかと聞かれ、風呂場の換気扇やそれを動かすための動力について話していると、何かを思い出したコロンが「それなら冒険者ギルドの近く住んでいる親方さんに相談してみるといいかも」と提案をする。
どういう事かと聞いてみると、その親方という人物は、物作りが好きなのだが、資金不足により、寄せ集めの材料で物を作るので、完成してもいつも残念な道具が出来上がるらしく、道具が完成する度に酒場で「まともな材料さえあればもっと凄いものが!」とぼやいているのだとか。
そんな親方が少し前、酒場で風を起こす道具が出来たが、そよ風程度しか起こせない残念な物になったと、いつも通り酒場でぼやいていたのを、同じ冒険者ギルドの同僚であるミオと食事に行った時にたまたま聞いたとの事。
ソレを聞いた俺は、資金不足で材料が揃わない割りに酒場には行く金はあるんかい!と心でツッコミをいれる。
ともあれ、気になる情報が得られたので、後ででも嫁達を連れて王都へデート…じゃなかった、買い物と例の親方の所へ行くとしよう。
「タリアさん、俺はミール達を連れて王都へ行って来るから、留守をお願いします」
「畏まりました」
「ロムとコロンは、昼から村の住人の人たちと一緒に畑仕事をするように!」
「「りょ、りょうかいです」」
二人の息はピッタリである。
「ククリは子供たちの面倒を見てやってくれ」
「良いのですか?」
「あの子達にとって、一緒にいて安心出来るのはククリだろうからね」
「分かりました、私としてもあの子達の事が気になっていましたので」
そう言いながらも、まるで母親が我が子を見るかの様な優しい眼差しで、目の前にある食事を美味しそうに頬張る子供達を見ていた。
昼からの予定の話も終わり、残りの昼食を終わると、ククリは俺やミール達に紅茶を淹れてくれる。
どうやらタリアが教えた、メイド修行の一つだとか。
俺はあまり紅茶について詳しいわけではないのだが、ククリが淹れてくれた紅茶は美味しく思えた。
しかし、ミリーとエルの二人は違うようで、紅茶をより美味しく淹れる方法をククリに伝授していた。
流石は元王女様達、紅茶の味というものが分かる様だ。
紅茶での一服を終えると、メイド達は食器を片付けを始め、俺はコロンとロムを連れだし畑へと案内する。
家から出てすぐ、コロンとロムは俺が今朝造った孤児院を見て驚いていた。
どうやってあんな少ない時間で孤児院を建てたのか?と聞かれ、スキルで造ったと答えると、二人は口をポカンと開けていた。
二人の顔はちょっとアホっぽいものになっておりました。
そんな面白い表情の二人を正気に戻し、畑に向けて歩く事5分、柵で囲った広すぎる畑が見えてくる。
森だったこの地の伐採を行い、唯の平地にしていただけだったのだが、今では畑の3分の1程は何かの野菜が植えられていた。
あの野菜達の今後の成長が楽しみだ。
「それじゃ二人とも、今日の夕方まで、住人の皆さんと一緒に畑仕事だ。しっかりと頑張るように!」
「思っていた以上に広い畑ですね」
「いろんな種類や量を作らないといけないからな、それに、今はまだ小さな村で住人の数はそれ程多くないが、いずれ住人も増えるだろうからその為さ」
俺の説明を聞いたコロンとロムは声を揃え「へぇ~」と答え、目前に広がる畑を見ている。
そんな二人の身柄を、すでに畑で働いている住人皆さんにコロンとロムを預けて、俺は家へと戻っていった。
次回 村の発展~その5~
結局その4で終わらず、その5突入させちゃいました。




