第38話 村の発展~その2~
突然視界が変わり、目の前には自分の家が見える。
俺達はオルリア村に到着したと言う事だ。
そして「ふぅ」と一息付くと同時に、身体へ大量魔力消費による疲れの様な気だるさが襲い掛かり、直ぐにマジックポーションを取り出し飲み干して魔力の回復する
すると身体がスゥっと軽くなったのを感じ、俺は後ろに振り返りタリアに笑顔を見せて安心させる。
そのままタリアの後ろを見ると、これで見るのは4度目の、初のテレポート体験による放心状態の8人が座りこんでしまっている。
「さぁ皆立って、家に入るよ」
「う~腰が抜けちゃって立てません~」
ペタンと女の子座りをしているコロンが涙目でこちらを見ている。
このままじゃ家に入れないので、俺がコロンを背負う事にする。
そんな俺の後ろでは、タリアがククリ達を立ち上がらせていた、どうやらあちらの子供達は腰が抜けるほどではなかった様だ。
家に入ろうと玄関へと向かうと、俺に背負われたコロンが、降ろしてほしいと言い始めるが、腰の方はまだ治ってない様なので却下する。
どうやらおんぶされたままの姿を見られるのが恥ずかしいようだが、これも罰の一環ですと、適当な事を言ってこのまま家の中へと入っていく。
もちろん皆に、この家では土足禁止だと伝え、玄関で靴を脱いで上がって貰う。
全員が靴を脱いだ事を確認した後、俺はリビングの扉を開けると、そこではメイドのココとアルカ、それに嫁のエルとミリーが出来上がった料理をテーブルへと並べていたのだが、俺に気づき手を止めた。
「お帰りなさい旦那様」
「お帰りなさいませナツキ様」
「「お帰りなさいませ御主人様」」
「ただいま、ミリー、エル、ココ、アルカ」
「あの~旦那様?旦那様はどうしてコロンさんを背負っているのです?」
タリアにククリ達の料理の追加を頼むと、タリアはココとアルカを連れて調理室へと消えていく。俺はその間にコロンを床に降ろしてからミリーにコロンが腰を抜かした原因の説明をする。
説明を聞いたミリーとエルも、タリアと同じで、俺がそう望めばそうなるでしょう、という意見だ。
それを聞いたコロンは『絶対に言わないにゃ、絶対にゃ」と、ブルブル振るえながらも、にゃ言葉で自分に言い聞かせていたので取りあえず放っておくとしよう。
「ところでミール達は?ミリー達みたいに料理の手伝いか?」
「はい!ミールお姉様とノアお姉さんとシアお姉ちゃんは料理のお手伝いをしていますよ。
私とエルちゃんも最初はお料理にチャレンジしていたけど、私達二人はどうも料理の才がないの様で」
台詞の後半、ミリーとエルは悲しげな表情をしていたので、俺は二人の頭を撫でながらお願いをする
「二人共、今は下手でも、いつか美味しい料理を作れるように頑張って欲しいな」
それを聞いたミリーとエルの表情にパァっと笑顔が咲き、二人は声を揃えて「はい!!がんばります!」と答え、二人は手をニコニコしたまま調理室へと戻って行った。
そんな二人の後姿を見送ると、俺はリビングに残ったコロンとククリ達に向き直ると、まだ立ったままのククリ達に空いているスペースに座ってもらう。
「さて、それじゃ今の内に、まずはコロンさん、貴方にはすでに説明したように、明日は朝と夜はメイドとして、昼は村の住人達と畑仕事をしてもらいます」
「はい」
「朝と夜のメイドの仕事内容に付いては、後でメイド長であるタリアさんに聞いてくれ」
「分かりました」
「ククリもコロンさんと一緒にタリアさんから仕事内容を聞いておいてね」
「はい」
後でタリアにも二人の事を頼む事とし、タリアには苦労を掛ける分、今度何らかのお礼をしないとな。
「それでご主人様、俺は何をすればいいんだ、じゃなくて、ですか?」
慣れない敬語でロムは自分の仕事について問う。
「ロムには村の住人達と一緒に畑の作業だ、何か用事が出来たらその時にまた何かを頼むことになるのでよろしくな、後、俺の事は別にご主人様じゃなくて、好きに呼んでくれていいぞ、それに無理に敬語も使わなくていいからな」
「分かった、あ、それともう一つ聞きたいんだけど、俺達の住む場所ってどなるんだ?」
「今日の所は悪いがこのリビングで寝てくれ、それで、明日の午前中には孤児院を造るから、今後はキミ達にそこで生活してもらう」
俺の説明に、ククリは「建物をそんなに直ぐ建てる事ができるのでしょうか?」と聞いてくるが、それも俺の秘密に含まれるスキルの一つで可能だと教え、コロンやククリ達は、俺の秘密をまた一つ多く知る事となった。
話が一通り終わると、丁度追加の料理が出来たらしく、メイド達と共に嫁達が次々と料理を並べていく。
今夜のメニューは、玉ねぎスープと焼いたボアの肉とパンだ。
もちろんククリ達孤児グループも同じ料理がメイド達によって運ばれており、子供達は自分の前に置かれた料理を見てお腹を鳴らしている。
そして全員分の食事の準備が終わり、メイド達と嫁達も椅子に座ったのを確認した俺が「頂きます」と言い食事を始めると、それを合図に皆が食事を始める。
食事の途中、ククリ達を連れて帰ってきた経緯を皆に聞かせ、その流れで孤児院の事も話す。
一通りの話が終わる頃、皆の食事も終わり、片付けをタリア達に任せ、今日の所はまだお客様扱いのククリ達やコロンには休憩していてもらい、俺とノアは風呂場へと向かう。
風呂場に着くと早速ノアに水魔法で水をたっぷりと入れてもらい、そこに俺が火の精霊魔法で小型のファイアボールを作り水につけて水を一気に温める。
前回同様で力技と言える行為でお風呂を完成させるのだが、お風呂の準備が完成と共にある事に気付いた。
しかしまぁ、それは次回にでも試そうと思う。
尚、これは余談ではあるが、この火の精霊魔法はシアも使えるのだが、シアが水を温める役をするよりも、俺がした方が何故か疲れが取れるそうだ。
お風呂の準備が終わり、この後はお楽しみの、皆で一緒にお風呂の時間だ!
準備を終えた俺は、リビングに戻り皆に風に入るぞ~と言うが、コロンやククリ達は自分達がそこに含まれているのに気づいてはいないようなので、コロンやククリ達も一緒だと伝える。
それを聞いたコロンは、俺も一緒なのか?と聞くので、もちろん一緒に入ると答える。
自分達も含め、皆一緒だと分かったコロンやククリに、俺からは決して手を出さない事と、コロンやククリが入っている間は俺とロムは目隠しをすると言う事で納得してもらい、皆で揃って脱衣所へと向う。
脱衣所の前に付くと、まず俺とロムが先に中に入り服を脱ぎ、目隠し用の布を持って大量の湯気が立ち込める風呂場へと入り、脱衣所の外に居る皆に一声掛けた後、さっさと掛け湯をすませ風呂の中へと入る。
ロムは風呂が初体験なので、先程から俺がやる事を真似、風呂の中へと浸かった瞬間、顔の筋肉が緩んでいた。
どうやら気持ち良いと感じてくれている様だ。
風呂の中で一息付いていると、湯気でよく見え無いのだが、扉が開く音が聞こえ小さな何かがパタパタと飛んで来る。
サイズと飛べるというヒントから間違えなくソレはサラだと分かったのだが、そう言えばこいつはさっきまで何処にいたのだろうか?
「ナツキ~僕もお風呂に入りに来たよ~」
サラ様に風呂桶にお湯を汲み風呂の傍に置くと、サラはその桶に浸かり頭の上にサラ様のサイズのタオルが置かれていた。
一体どこからそのサイズのタオルを用意してきたのだろうか?
俺がサラの頭の上のタオルをジッと見ていると
「ん?どうしたのナツキ?あ、もしかしてこのタオルの事?えへへ~実はね、エルが僕用にって作ってくれたんだ~いいでしょ~」
一人で話をどんどんと進めるサラの話しに、相づちを打つように「そうか、よかったな」とだけ答え、俺も自分のタオルを頭へと載せる。
ソレを見たロムも同じように真似て、自分の持ってきたタオルを頭に置いた。
「ところで兄ちゃん、この小さな竜って何者なんだ?さっきから人の言葉を喋ってるようだけど・・・」
「こいつの名前はサラ、火の精霊王だが、現在はこの家のペット的な立ち位置だ」
「よろしく~」
サラは手を振るように、前足を上げて振っている。
「兄ちゃんってすげぇんだな、火の精霊王様をペット呼ばわりするなんて」
俺は、心の中で感心するのソコかよ!とツッコミをいれ、顔は苦笑いを浮かべる。
そして漸く風呂場の扉が再び開く音が聞こえ、湯気の向こうに人影がいくつも見える。
俺とロムは急いで目隠しを装着し、女性陣と、女性陣に任せた孤児達が風呂の傍に来るのを待った。
「ナツキ様、目隠しはつけていますか?」
入り口の方から聞こえてくるミールの声に、「俺もロムもつけてるよ~」と返事すると、ゾロゾロとこちらに近づく気配を感じる。
すると、湯船の傍に来たコロンのが桶のお湯に浸かるサラをみて、ロムと同じように聞いてくる。
「そいつは火の精霊王でサラって言うんだ」
「火の精霊王様!?し、失礼致しましたにゃ!!」
今は目隠しをしているので見えないが、多分直ぐ近くでコロンはサラに向って平伏しているのだろう。
なぜそう思うのかというと、、コロンの声が低い位置から聞こえるからだ。
「いいっていいて、僕の事は気にしないでゆっくりとお風呂で疲れを取るといいさ~」
ロムの時同様に、サラはきっと前足をヒラヒラと振っているのだろう。
「コロンさん、サラの言う通り、今はお風呂でゆっくりと疲れを取ると言いよ」
「は、はい!」
コロンやククリと子供達は掛け湯を済ませると、湯船の中に入ってくる。
その間、嫁グループとメイドグループは身体を先に洗うようで、10人の気配が湯船から離れていく。
暫く湯に浸かり、まったりしていると、ロムがのぼせてそうだと湯から上がり、湯船の縁に腰掛ける。
そのまま少し身体を冷ましていると、身体を洗い終えた10人の気配がこちらへと戻って来ると、湯船に浸かっていた7人の気配が、身体を洗うために湯船から上がる。
湯から上がったククリは、目隠しをしているロムに声を掛け、身体を洗う場所へと連れて行った。
こうして入れ替わりで湯の中に入ってきたミール達が湯に浸かり、ふぅっと溜め息を漏らす。
「やっぱりナツキ様が水を温めると疲れが癒されて行きますね」
「そうだね、ボクがやったんじゃこんな風にならないんだよね~なんでなんだろ」
「昨日、私もお風呂を使わせていただきましたが、確かに昨日のよりも凄く身体が癒されていく感覚があります」
「そういや、昨日エルはノアとシアが用意した風呂に入ったんだっけ?そんなに違うものなのか?」
俺はまだシアが手伝った湯に浸かった事がないので分からないが、丁度エルが2日連続で違う湯に浸かっていると言う事で感想を聞いて見ると、ハッキリと感じるほどに違いが出ているそうだ。
今度俺もシアの暖めた湯に入らせてもらうとしよう。
そんな会話をしながらゆっくりと浸かっていると、俺もそろそろのぼせそうになって来たので湯船の縁に腰掛ける。
もちろん腰にはタオルを巻いて見えないようにしています。
さすがにこの場にはエルがいるので隠して置かないと!
その後身体を洗い終えたククリ達はロムを残して先に風呂から上がると言うので、メイドの皆さんもククリ達と一緒に風呂から上がって行く。
これでこの場には俺とロム、それにミール達の7人の気配が残った。
どうやらメイド達と一緒にサラも風呂を出て行った様だ。
「ナツキ様、ナツキ様はもう目隠しを取っても大丈夫ですよ」
「え?けどそこにはまだエルがいるだろ?」
「わ、私は平気ですので、お気になさらないで下さい」
「ん~、じゃあエルがそう言うのなら外させてもらうね?」
目隠しを外し、それを湯船の傍に置き辺りを見回すと、ロムはまだ目隠しをしたままで湯船の近くに立っていた。
「なぁ、兄ちゃん、俺先に風呂上がっていいかな?」
「ああ、先に上がってククリ達とゆっくりしててくれ」
脱衣所の方にはもう人の気配が感じられないので、俺はロムを脱衣所へと連れて行き、脱衣所で目隠しを外してやる。
「俺はもう少しゆっくりしてから出るから、ロムは他の子供達と先に寝てて良いからな」
「分かった」
ロムを残し、俺は再びミール達の下へと戻る。
湯船に戻るとミリーが俺の身体を洗うと言い出したので手の届かない背中をお願いする。
こう言う嫁とのスキンシップは良いものだと思いながら、背中に程よい摩擦を感じていた。
背中が終わり、後は自分で洗い終わると、再び湯船に浸かり直し、俺達は風呂から上がっていく。
次回 第39話 村の発展~その3~
多分村の発展のお話は、その4くらいまで続くと思われます。




