第29話 ナツキのあらたなる噂
エルージュの年齢を12から14に変更、身長と体重もそれに合わせて少し数字を上げました。
誤字をみつけ、訂正しました。
先程までの奴隷達の居た部屋は鉄格子のある牢屋の様な部屋だったが、ドルトルに案内されて着た部屋には鉄の扉が取り付けら、中は見えない様になっていた。
「この部屋の中に居る奴隷は、元はとても高貴な娘なのです」
「とても高貴な娘?貴族の娘ってこと?」
「いいえ、実はですね、ウィンディア王家の第4王女なのです」
「ウィンディアの王女様!?なんでそんな人が奴隷に?しかもなんでフレムストの国で売られてるんだ?」
俺は驚きながら、頭に浮かぶ疑問を次々と投げ掛けると、ドルトルがそれらの疑問について説明をしてくれたのだ。
「2年ほど前に始まったアースガルとウィンディアの戦争で、ウィンディア南西の領地を治めていた第4王女は捕らえられ、奴隷として私の店に売られてきたのです」
俺としては、アースガルとウィンディアが戦争していた事が初耳だったのだが、それよりもなぜ第4王女がウィンディアの南西の領地を治めていたのかが気になった。
ドルトルにその事を聞いて見ると、ウィンディアの王族に生まれた者は12歳で補佐役付きで領地を授けられ、実際にその領地を治めていくという、王族として国を治める教育を受けるらしいのだ。
「まったくずいぶんと変わった教育だ」と、俺は誰にも聞こえない程小さく呟いた。
「話はこれくらいにして、兎に角中の奴隷をご覧になって頂きましょう」
そう言ってドルトルはポケットから一つの鍵を取り出し、ドアの鍵を開け、ドアを開いた。
開かれたドアの先は、奴隷が寝起きするとは思えない様な部屋に俺はまず驚いた。
この部屋の右奥にはベッドがあり、部屋の入り口から左の奥には個室トイレ、部屋の中央にはテーブルと椅子があり、まるで宿の一人部屋の様な部屋だ。
しかし、それ以上に俺の目を引くのは、スミレ色で腰より少し上まで伸びた長い髪と、晴れた空の様な青い瞳を持ち、その背にはまるで天使かと思わせるような白く大きな翼のある、見た目13か14歳ほどの少女が悲しげな表情で椅子に座っている姿だった。
少女は、部屋に入ってきた俺とドルトルを見ると、椅子から立ち上がりこちらを向く。
「こちらの奴隷は翼人族と呼ばれておりまして、その白い翼がウィンディア王家の証でもあるのです」
「白い翼が王家の証?」
「はい、私も詳しい事は知らないのですが、ウィンディアの王族は、代々白の翼が受け継がれ、王族以外には決して白い翼の翼人族が生まれる事は無いそうです」
「だから白い翼が証になるって訳か、なるほどね・・・」
俺とドルトルの会話の間、ただ静かに立っている様に見えた奴隷の少女は、良く見るとその小さな身体は震えており、怯えていた。
「俺の名前はナツキ、キミの名前教えてくれるかな?」
そんな怯えている少女に優しく話しかけると、少女は鈴を転がすような声で答えてくれた。
「わ、私はエルージュと申します」
「エルージュ・・・うん、可愛らしくていい名前だね、あ、それと俺の頭の上に居るのがサラだ」
「よろしくエルージュ~」」
俺とサラとエルージュがそれぞれ名乗り終わると、俺はドルトルに早速エルージュの交渉をする事にした。
「ドルトルさん、俺はエルージュを買いたいと思うのですが」
「ナツキ様ならそう言うと思っておりました、とりあえずこちらをご覧下さい。」
そういってドルトルに手渡されたのは、ミールやノアとシアの時にも見た、エルージュの情報だった
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エルージュ=ポワロン=ウィンディア 14歳 翼人族♀
身長 153cm
体重 43kg
ランクA~Cまでどれでも選択可能
犯罪履歴 無し
性経験 無し
性行為 本人の意思無く可能
性病 特に無し
備考
敗戦による捕虜
元ウィンディア王家の第4王女
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なぜエルージュがランクC奴隷が可能なのかとドルトルに問うと、戦争で敗北し捕虜となった者は、勝利した側の戦利品という扱いになる、そして捕虜が奴隷として売られる場合は本人の意思ではなく、持ち主である者の意思で、ランクC奴隷に出来る許可つくのだそうだ。
「さて、お値段なのですが、こちらの奴隷は元ウィンディアの王族に付け加え、ランクC奴隷にも出来ると言う事もありオークションに出せば最低200万コルは下らないかと存じます」
「なので、もしナツキ様がお求めになるのなら、その最低価格の200万コルとさせて頂きますが、お手持ちの方は大丈夫でございましょうか?まだ先程選んでいただいた11人の分も必要となりますが」
現在、選んだ11人の奴隷を買う予定となっている。
高く見積もって11人×15万コルで165万コル、そこにエルージュの200万コルを足して合計365万コルって所だろうか?
今後どういった事で資金が必要となるか分からないが、いざとなったら俺が死ぬ気で稼げば良いのだ!
そんな計算と思考を済ませ、俺はドルトルに告げる。
「大丈夫だ、後エルージュだが、是非買わせて貰おう」
言っておくが、まだ成人になっていない少女にエロい事をするつもりもさせるつもりは俺にはない!!
まぁもしエルージュから求めて来たら、その時は分からないがな!
決して俺はロリでは無い!
すでに15歳のミリーに手を出した俺だが、この世界は15歳からすでに成人と認められるのだからセーフなのだ!
はて、俺は一体だれに弁解をしているのだろうか?
「奴隷のランクはどれに致しますか?」
ドルトルの質問に、エルージュの身体がビクッと反応する。
そんなエルージュの頭に手を置き、優しく撫でながら答える。
「もちろんランクAだ」
エルージュの購入が決まったので、俺とドルトルはエルージュを連れて、上で待つミリー、タリア、アルカ、そして11人の奴隷達の所へと戻る。
階段を上り、店の1階にある面接用の部屋に戻ると、ミリー、タリア、アルカの3人はソファーに腰掛け、テーブルを挟んだ向かい側には11人の奴隷達が整列していた。
「すまない、待たせてしまったな」
「いえ、お気になさらないで下さい。ところでそちらの方は?」
エルージュを俺の前に立たせ、ミリーに紹介する。
「この娘の名前はエルージュ、この子も買う事にしたからよろしく」
「そうでしたか、えと、エルージュさん、私の名前はミリーエルと申します、これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願い致します」
ミリーがエルージュの年に近いし、暫くはエルージュの事をミリーに任せる事にしよう。
二人の自己紹介が終わると、ドルトルが11人の奴隷達の詳細を書いた紙が用意されたので目を通していくのだが、年齢が他より離れている夫婦と6歳の少女以外は、どの名前が誰なのか判らなかった。
「すまないがこれから一人ずつ名前を呼ぶから、呼ばれた人は一歩前に出てくれ」
こうして手元の紙に書かれている名前を一人ずつ読み上げていき、前に出た人と名前をなんども見比べ、なんとか全員の名前を把握し終えた。
「よし、それじゃドルトルさん、ここに居る全員でいくらかな?」
「少々お待ちください、え~と・・・」
ドルトルはどこからか取り出した算盤を弾き始めた。
くどい様だが、やっぱりこの人にはピンクと白の縞々の服を着させてみたい!
「お待たせしましたナツキ様、最初に選ばれた11人の者達の合計は112万コルでございますが、ナツキ様には今後も御贔屓にして頂きたいので、110万コルとさせて頂きます」
「おお、2万コルも値引いてくれるのか、有難い」
「そしてそちらのエルージュの代金200万コルを足しまして、合計310万コルとなります」
最後に出てきたエルージュの金額を聞いたミリー、タリア、アルカ、そして11人の奴隷達は驚いていた。
そんな中、俺は予定よりも50万コルも安く済んだ事に満足していた。
提示された金額をドルトルに払い終えると、次は11人分の首輪を取り付けようとしたのだが、この奴隷達のランクをどれにすればいいのか分からず、ドルトルに聞いてみる。
「ドルトルさん、労働用の奴隷ってランクA、B、Cのどれにすればいいのでしょう?」
「労働様ならランクBでございます」
「ランクBって戦闘用だよね?それでいいの?」
「問題ありません、ランクBというのは戦闘用と言っておりますが、実際は戦闘をさせる、つまり戦闘で働かせる事なのです。
なので戦闘用とは言われて居りますが、実際は労働用という意味でもあります」
なるほど、では理解出来たところで早速奴隷達に首輪を取り付けて行くとしよう。
途中、6歳の少女であるサリーに首輪を取り付けるとき、背徳感を感じつつも、何とか11人には奴隷の首輪を取り付け終えた。
そして最後にエルージュにも取り付けるのだが、エルージュにはミール達と同じチョーカータイプにする事にし、ランクA用のチョーカーを用意してもらう。
俺は、幾つかある中から、サファイアのついたチョーカーを選んび、それをエルージュの首に取り付ける事で、全員の奴隷契約が完了した。
こうして奴隷商での予定も終わり、店の外にゾロゾロとでると、店の前を歩く人々の視線を集めてしまう。
まぁ仕方ないだろう、普通こんなに奴隷を連れてる人なんて居ないだろうし、それに自分で言うのも何だが、この町じゃ俺は少しは名を知られているのだから。
「えと、タリアさんとアルカの二人はあっちの暮らしに必要そうな物を買い揃えて着てもらえますか?それと、この人達を含む、全員分の食料も大量にお願いします。
その間に俺とミリーはこの人達に必要な日用品を買いに言ってきますので」
俺はタリアに経費として白金貨を1枚、そしてメモと羽ペンを手渡した。
「すみませんが、それをどこかで両替して使ってください、あと何に幾ら使ったかもこちらのメモに控えておいてください。
それと、買い物が終わったら、中央広場の噴水の前で待ち合わせにしましょう」
「わかりました、ではアルカ、行きましょう」
「はいなの!」
タリアとアルカの二人を見送ると、俺とミリーが並んで歩き、その後ろをエルージュが歩き、さらにその後ろを11人の奴隷達が付いて来る。
俺達の集団はとても人の目を引いていたが、俺は気にせず、服屋へと向う。
「さて、それじゃ皆さん、この店で自分のお出かけ用の服を上下1セットと靴を1足、それと下着を3着ずつ選んで来てください」
店に着くと俺はミールやノアやシアの時にも着た服屋で、皆の服を選ばせようとしたのだが、やはりというか何と言うか、奴隷達は呆気に取られていた。
そんな状態で、動かない奴隷達に、俺は命令を発動させ、服選びが始まった。
奴隷達が自分の服を選び始め、ミリーにはエルージュ用の服を上下3着ずつを選んで貰う事にした。
こうして俺が一人になると、店の奥にいた若い女性の店員がこちらに近づき、声を掛けてくる。
「あの、違っていたらすみません、貴方様はナツキ様でしょうか?」
「え?はいそうですが・・・」
俺がナツキだと分かるなり、目の前の女性は「よし!」と小さく呟き、頷いた。
「あの!ナツキ様に確認したい事がございます!」
俺に確認したい事?
「何を確認したいのですか?」
「若い女性がナツキ様の奴隷になると、お嫁に貰っていただけるという噂は本当なのでしょうか!?」
・・・・ぇ?
目の前の女性の突然の言葉に、俺の思考が数秒の間フリーズしてしまった。
「一体どこでそんな噂が?っていうか、そんな事は嘘だからな!」
「そうでしたか、やはりただの噂だったのですね・・・」
噂がデマだと分かると、目の前にいた女性はがっかりしながら、店の奥のカウンターへと戻って行く。
まったく、どこの誰だそんな噂を広めたのは、犯人を見つけたら叱っておかねば!
そんな正直困るような噂に腹を立てていると、服を選び終わった人が徐々に集まってきた。
流石にこの人数が服を選ぶには時間が掛かった、それで奴隷達も申し分けなさそうにしていたので、気にしなくていいと伝え、全部の清算を済ませる。
荷物は各自で持ってもらい、次は普段着用に古着屋に向ってゾロゾロと歩き始め、そこでもまた服を選ばせる、今回は一人3着ずつだ。
全員が服を選び終え、清算を済ませた頃には空が夕焼けに染まり始めていた。
まだ少しかかりそうなので、サラにタリアとアルカへの伝言を頼み、俺達一行は急いで日用品を買いに走った。
後日、女性が俺の奴隷になると、嫁にしてもらえると言う噂は嘘だったと広まったが、俺が奴隷の集団を引き連れて買い物をしていた姿を見た町の住人により、次は、ナツキの奴隷になると平民以上に幸せに慣れるなんていう、新たな噂が囁かれるようになり、あっという間に町中に広まり始めていた。
買い物が終わり、中央広場の噴水の下に辿り着く頃には、空は暗くなっていた。
「タリアさん、アルカ、待たせてごめんよ」
「いえ、お気になさらないで下さい、おかげで私達もゆっくりと休ませて頂きましたから、それからこちらが本日買い揃えた物のリストと金額のメモです」
そう言って差し出されたメモには綺麗な文字で細かくリストと金額が書きこまれていた。
「お買い物とっても楽しかったけど、少し疲れちゃったの、だけど待ってる間にゆっくりと休むことが出来てまた元気になったの」
「そっか、それならよかった。さぁ、家の皆も待たせちゃってるし、早く帰ろうか。」
俺、ミリー、タリア、アルカが町の外へと向かって歩くと、その理由を知らないエルージュを含む12人の奴隷達が不安を感じ始めていた。
俺はそんな皆に、帰る方法を人に見られたくないんだと伝えると、納得してくれたのか、黙って付いて来てくれる。
町の外へこんな人数で出ようとすると、門番に一度止められたのだが、俺達だと気付くと、なぜかすんなり通してくれ、俺達はそのまま森の中へと入っていく。
流石に夜の森はモンスターなどが出る危険があるのだが、そこは俺の探知スキルで周囲に居ないことは確認済みだ。
さて、今この場所には16人と1匹のがいるのだが、果たして俺はこの人数を連れてテレポート出来るだろうか?
まぁ念の為にサラには自分でテレポートしてもらおう。
「サラ、すまないが自分でテレポートしてくれ」
「えぇ~、しかたないなぁ~わかったよ~」
この人数にもなると、かなりの集中力が必要となり、何とかサラ以外の全員を家へと転移させる事に成功した。
しかし、流石にこの人数を連れてのテレポートは無理があり、到着すると同時に俺は魔力の大量消費によって襲いかかる脱力感に耐えれず倒れてしまう。
そんな薄れ行く意識の中、驚く皆の姿が見えた気がした。
次回 第30話 今後の予定の説明と新たな嫁候補




