第229話 これが俺の日常
「…ツキ様、ナツキ様、そろそろ起きてください」
俺を呼ぶ声と共に、体を優しく揺さぶられ、意識が目覚め始める。
「…ん?ミールか、という事はご飯の時間か?」
「はい。簡単な物ですけど、もう準備の方は出来ている頃です」
ならば起きるかとベッドから体を起こした俺は、一緒に寝ていたはずのサラとシルフも起こそうと思ったが、既に二人の姿はベッドの上にはなかった。
どうやら既に起きている様だ。
眠っていた時間は大体3時間弱といったところであり、それだけの睡眠でどれほど体調が回復出来たかと、体をあちこち動かし、確認してみる。
どうやら狭間の世界に行っていたので精神的なものは兎も角とし、体の方は休める事が出来ていたので、万全とまでは言わないが、日常レベルで動く位は問題無い程には回復していた。
体調確認も終わり、俺はミールと共に皆の居る隣の部屋へと向かう。
そこにはすでに俺以外の全員が揃ってテーブルを囲んでいた。
俺もそこに加わり、全員が揃ったところで夕食が始まる。
因みにそのメニューとは、キングボアの肉を使ったサンドイッチである。
作ったのはノアとシア、そしてエルの3人との事。
作った3人が我が家のメイド達程上手には作れなかったと言っていたのだが、それでも十分に美味かった。
食事が終わると、我が家に戻るための準備に取り掛かる。
準備と言っても、野営用の家から外に出て、その家をアイテムボックスに仕舞い込むだけ。
片付けも終わり、これから家に戻ろうと思うのだが、空はもう夕焼けから夜空へと移り変わり始めている。
このままここで1泊するのも良いかもしれないが、ここに居たらレイの一族が様子を見に戻ってくる可能性もある。
女神モイラから聞いた通り、俺とレイの子供を地の精霊王を任せる未来を選ぶなら、レイの両親に挨拶をしなければならなくなる。
だが、今の俺は心の準備が出来ていないので、ソレはまた後日にしたいと思っている。
そんな訳で、今の俺としては早くこの場から離れておきたいのだ。
「時間も遅いことだし、今回は家まで転移しようか」
俺がそう口にすると、レイが若干残念そうな表情になるのが見えたが、代わりに明日、空の散歩に行く事を約束し、今日のところは我慢してもらった。
こうして俺達は未開の地、もといレイの故郷を後にし、我が家へと転移した。
「おかえりなさいませご主人様」
我が家に入ると、タリア達が俺達を出迎えてくれる。
俺はタリアに食事は軽めのを済ませて来た事を告げ、まずは風呂に入ってくると伝え、ミール達と共に風呂場へと向かった。
多少は向こうで休んだと言っても、まだ体には疲れが残っている。
安心できる我が家に戻った事もあり、今夜はきっと激しい一夜になるはず、もとい激しい一夜にする予定なので、その為にもこの疲れを完全に癒しておきたいのだ。
そんな事を企てながら、俺はミール達と一緒に風呂へと入り、体を洗いっこした後に湯船に浸かり、これからの事について考え始めた。
女神モイラに頼まれ、この世界に逃げ込んだ[闇]の一部は全て倒し終え、ついでに世界のバランスの崩壊を脱する方法も知れた。
これで残る問題は、ノアとシア、そしてレイの両親に挨拶に行く事くらいである。
特に慌てる程の問題は無いと思い至った俺は、1週間程は適当に過ごし、その間に心の準備をしておこうと決め、まずは目先の予定である、今夜の情事でのアレコレを考え始めたのだった。
次回 第230話(最終話予定) 幸せ
色々とフラグとか残ってるんじゃない?と言われそう、もしくは思われそうなので先に言っておきます。
[次回作で回収する予定です]




