第228話 第2の人生を謳歌する為にも
3人の女神は頭を上げてもらえた後、結構な速度で成長してきた世界樹の事等を話題にし、10分程の時が過ぎた。
「さて、それでは私達も元の空間に戻らなければなりませんね。短い時間とはいえ、こうして誰かとお話が出来てとても楽し時間でした」
「そうですね。本音を言えば、もっとこうしてお話をしていたいところなのですが、あまり長く自分の管理空間から離れる訳にはいけませんからね」
「ええ。それではナツキさん、もし機会がありましたら、またお話しましょうね。それではまた…」
ラケシスとアトロポスはそう言うと、俺に向かい手を振りながらスゥーっとその姿が薄れていく。
そしてすぐに二人の姿は完全に見えなくなり、この狭間の世界には俺と女神モイラ、そして成長途中の世界樹であるルナだけが残っていた。
「さて、ナツキさんの方もそろそろ起きる時間の様ですね」
「もうそんな時間ですか、あ、そうだ!起きる前に一つ、モイラ様に聞きたい事があるんですが!」
「聞きたい事ですか?何でしょう?」
世界の管理をしている女神ならば、何か良い案を聞けるかもと思い、俺は今抱えている問題について尋ねてみた。
その内容とはもちろん、今は亡き土の精霊王の事だ。
今すぐにどうこうなる事は無いのだが、このまま放置すれば、何れ世界から地の恵みは消え、終いには世界の崩壊を招く事となる。
この件は、世界の管理をする女神モイラにとっても関係がないとは言えない事である。
そして当然、女神モイラもこの異については知っているので、何らかの対策を考えていたはず、もしくは考えてくれると期待していたのだが、そんな俺に対し、モイラの答えた内容は驚くべきモノであった。
「その件ですか。それなら次期、土の精霊王はナツキさんとレイさんの子供に任せるのが良いでしょう。寧ろ、それしか解決方は無いかと」
それしかないと言い切るモイラに対し、俺は驚きつつも、更なる疑問を投げかける。
「そ、それしかないというのは、どういう事でしょう?」
「精霊王となる存在には其れなりの力が必要となります。そうなるとやはり、アルカレイドの中で一番強い存在であるナツキさんの血を継ぐ者に任せるのが一番という事になります」
なるほど、と少し納得してしまったが、まだ謎が残る。
それは何故俺とレイの子供なのかという事だ。
「俺の血筋という事について納得は出来ますが、何故それが俺とレイの子供なのですか?」
「それは簡単な事です」
女神モイラはそう答えながら、ニコリと微笑むと、続いてこう言ったのだ。
「ナツキさんの子供の中で、レイさんとの間に出来た子が最も地の属性に特化しているからです」
「……へ?」
女神モイラの衝撃発言に、俺の思考回路は数秒程停止していた。
そしてようやく声が出たと思ったら、その声はとてもアホッぽいものである。
その後、少し落ち着いたところで女神モイラの言葉をもう一度頭の中で再生させてみる。
「(よし、この事はもう考えるのを止めた!)」
女神モイラの今の話方から、あの内容はもう確定している未来なのだろうと思い至り、土の精霊王の件で頭を悩ませる事はもうしない事と心に決めた。
そして出来る事なら今聞いた事すら忘れたいくらいだ。
未来の事なんて知らない方が、俺はきっとこの第2の人生を謳歌出来る気がするからだ。
そんな風に自分の中でこの話題について締め括ったところで、丁度俺が起きる時間がやって来たらしく、俺は最後に女神モイラと挨拶を交わし、現実世界で目覚める為に意識が遠のく感覚に身を委ねるのであった。
次回 第229話 これが俺の日常




