第218話 意外なところで
「ホントに素晴らしい成長速度ですよね」
すごく成長していた世界樹を見ていると、すぐ近くから声が聞こえ、俺はハッとする。
振り向くと、そこには女神であるモイラが立っていた。
「こんにちは、ナツキさん」
「こんにちは」
ニコリと笑い、挨拶をしてくれるモイラに対し、俺も挨拶で答える。
「今回お呼びした理由は2つあります。そしてその内のまず一つ目は、先程も御覧になられた通り、世界樹が大きく成長したので、その姿を見て頂きたかったからです」
「なるほど、確かに以前、次回ここに呼ばれるのは世界樹がある程度成長した時だって言われてましたからね」
「はい。しかし、今回お呼びした理由としては、そちらよりも2つ目の理由の方が重要なのです」
そう口にしたモイラの表情は、先程まで優しい微笑みを浮かべていたはずが、真剣なものへと変わっていた。
その表情に、俺はモイラからどんな重大な話が出てくるのだろうかと身構る。
「[世界を蝕む闇]の最後の1匹の居場所についてです」
「おお!で?それは何処なんです?」
「世間では未開の地と呼ばれている場所です」
未開の地とは、火、水、風、地の4か国に囲まれた山脈の事であり、そこには数多くのドラゴンが生息していると、以前にレイから教えてもらった事があった。
因みにレイの故郷でもある場所だ。
それに気づいた俺は、モイラにレイの両親は丈夫なのか聞居てみると、どうやら他のドラゴン達と一緒に未開の地から逃げているとの事。
どうやらレイが悲しい思いをしなくて済みそうだ。
それが分かり、少しホッとする事が出来た。
「それじゃ明日は未開の地へと向かう異にします」
本当は家でしばらくの間はのんびりとしたい気持ちはあるのだが、せっかく最後の1匹がいる場所を教えてくれたのだから、倒しに行くべきだろう。
そう思いつつ、俺は軽い感じでモイラへと伝える。
「申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いします」
「任せてください」
後でミール達にも伝えないとなぁ、なんて思いつつ、俺はモイラへと気楽に答える。
こうして明日からの予定が決まり、モイラからの話は終わりだろうと思ったところで、俺は気になっている事を訪ねてみる。
「ところでモイラ様、見た時から気になっていたのですが、何故世界樹はあんなに成長してたんです?」
前回ここに読んでもらってから今日までの間、何かしたっけ?と思い返してみるが、どこにも思い当たる節がなかった。
「それはきっと、今ナツキさんの住んでいる村にある温泉のおかげででしょう」
「温泉が?」
何故温泉のおかげなのかと首を傾げていると、モイラの口からその詳細が語られ始めた。
その内容によると、どうやら[恵みの湯]を利用しているお客様のほとんどが、ケガにより体の一部が動かなくなっていた、元冒険者が多かったらしいのだが、そんな元冒険者達は温泉の効能により、ケガは綺麗に治り、それはもう心の底から喜んでいたそうだ。
本来は村の資金調達、または村の発展を狙って建てた施設だったのだが、どうやら思わぬところで良い結果が出てくれたようだ。
そんな良い結果が出た事を聞いた俺は、素直に喜んでいると、モイラはハッとしたと思うと、俺の意識がそろそろ自分の体に戻る頃だと知らせてくれ、それ後間もなく、俺の意識はハザマの世界から離れていった。
次回 第219話 今度は未開の地です




