第214話 逃げるように去るのみ
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「はぁ、これはまた大変な事になってしまいましたわね。この大地は徐々に弱っていくというのですね?」
メイドに案内してもらい、俺達はソアラ王妃の部屋へとやって来た。
最初に挨拶と自己紹介をし、その後に今回の戦いが終わった事の報告と、俺達の事について話せる事の全て話した。
俺自身の事、ミール達が眷属となっている事、この風の国の王都を襲った敵の事等々、火の国と水の国の王に話した内容と同じ事をである。
そして全てを話し終え、それを聞いていた王妃様は今、困惑の表情を浮かべている。
俺はソアラ王妃を少しでも安心させようと、希望はあるという事を伝えようと、口を開く。
「はい。ですがサラとシルフの話によれば、すぐにどうこうという訳ではないそうです。なので影響が出始める前に、次の地の精霊王となれる存在を見つけるつもりです」
「そうですか」
そう悲しそうに返事をする王妃だが、すぐに決意した表情へと変わる。
「私共では手伝えることなどは無いかもしれませんが、もしも何かあれば言ってください。その時は可能な限りご助力を致しましょう」
「ありがとうございます。その時は是非頼らせて頂きます」
ソアラ王妃の申し出に、ニッコリと答え、俺とソアラ王妃は小さく笑い合った。
どうやら少しは安心してもらえたようだ。
「ところでお話は変わるのですが、外も暗くなってしまっているようですし、今夜はこの城に泊まっていってはいかがでしょう?私としましても、この王都を襲った敵を倒して下さったお礼もさせて頂きたいですし」
どうやらずいぶんと長い間話をしていたようだ。
窓の外はソアラ王妃の言うように暗くなっており、部屋の壁に掛けてある時計を見ると、時刻は既に20時を超えていたので、正直ありがたい申し出ではある。
しかし、この城にはグラス王と言う、会えば面倒な事になりそうな存在がいるので早めに去りたいという気もある。
因みに、現在俺達がこの城に居る事をグラス王は知らない。
と言うのも、ソアラ王妃とエルのお願いにより、グラス王の耳に俺達が来ているという事が入らない様にしてもらっているからだ。
正直、こんなにもアッサリと国王への情報規制が出来てしまうのはどうなのだろうか?と不安になるレベルなのだが、今はそのおかげで安心してソアラ王妃と話す事が出来たので助かっている。
そんなグラス王の存在もあり、どうしたものかと悩んでいると、俺は自然とエルの方へと視線を移す。
視線の先に居るエルの表情は、「出来るなら泊まって行きたい」そう言っているように思えた。
それを見た俺は決意し、ソアラ王妃へと視線を戻す。
「分かりました。それではお言葉に甘えて今夜は泊まらせていただこうと思います」
そう答えた瞬間、背後から小さくエル達が喜ぶ声が聞こえた気がした。
その後、ソアラ王妃の呼び出したメイドに案内され、俺達はソアラ王妃の部屋を後にし、客間へと戻って来た。
部屋に入ると、まるで俺達が泊まる事を分かっていたかのように、俺達全員分の着替えがキングサイズのベッドの上に並べられていた。
「それではすぐにお食事を用意してまりますので、それまでごゆっくりとお寛ぎください」
俺達を案内してくれたメイドはそう言って一礼し、部屋から退出する。
俺達はそれを見送り、この客間に身内だけとなったところで、各々が食事が運ばれてくるまでの間、自由に寛ぎ始める。
そんな中、俺は一人明日の事を考えていた。
それは、明日は面倒なグラス王に見つからぬよう、出来るだけ早くここを出発しようという事だった。
次回 第215話 親(ソアラ王妃)のお許しを頂きました。




