第212話 精霊石
211話に続き、名前の部分を訂正。
その他にもいくつか訂正箇所が見つかりましたので、そちらも訂正しました。
全力に近いスピードで移動し、ほんの数秒でノア達の元へと戻って来た俺達が見たものは、やはりというべきか、バードと同様、もしくはそれ以上の素早さをもったミストが、休む隙も与えぬ程の強襲から逃げ回っている姿だった。
シアとエルが二人掛かりでウィンドアローを大量に放ち続け、ノア、ミリーの二人も、シア達に匹敵する量のアクアアローを放ち続けていた。
その光景は弾幕ゲーの最高難易度も真っ青なレベルなのだが、それを避け続けているミストが更に凄い。
攻撃が全て避けられているとはいえ、それでも尚頑張るノア達はさておき、サラとシルフは何をしているのかと思ったが、どうやらこの二人はシア達にウィンドシールドを張っているようだ。
激しく降り注ぐ魔法の矢の余波は凄まじく、それらからミール達を守る事に徹しているのだろう。
「(あれだけの攻撃をするノア達もえげつない気がするが、それ以上にそれを避けてるあのミスト…マジですげぇな)」
視界に映るその光景に、俺は素直に感心していた。
それから数秒後、ノア達の攻撃が止むと、そこにはノア達の荒い息使いと、吹きすさぶ風の音だけが聞こえてくる。
全ての攻撃を躱し終えたミストは、まるでこちらを挑発するかのように、ただユラユラと浮かんでいる。
すでにバードが撃破されたというのに、何故あれほどまでに余裕があるのだろうか?
やはり俺が思った通り、アレはこれまでで一番強いのかもしれない。
「サラ、シルフ、アイテムボックスからマジックポーションを取り出して皆に配ってくれ」
「はいはーい」
「了解」
魔法を連打していたノア達とは違い、ガードに徹していたサラとシルフには疲れている様子がなかったので指示を出す。
こうしてノア達は受け取ったマジックポーションを受け取り、消費した魔力を回復させる。
ミストは、その間もただユラユラとしているだけだった。
「今度は俺達、サラ、シルフも混ぜて、全員で攻撃仕掛けるぞ!」
この言葉に全員が肯定する。
すぐに各自へと指示を出し、それぞれが指示された配置へと移動する。
ミールは俺の傍に、ノア、エル、シルフはミストの左側へ、シア、ミリー、サラは右側に、そしてレイはドラゴンの姿で上空といった配置だ。
尚、この各自が配置に着いている間も、ミストはユラユラとその場で漂っているだけである。
一体何を考えているのだろうか?
そんな風に一瞬考えるが、すぐに今はそんな事はどうでも良いかと思考を切り替え、俺は右手に持つミスリルの剣の先をミストへと向け、全員に攻撃の合図を送る。
すると次の瞬間、ノア達による攻撃が始まる。
余裕そうにユラユラと浮かぶミストの両サイドからは、大量のウィンドアローとファイアアローが放たれ、そこへ向けて上空からはレイの放つ大量の火球が打ち込まれていく。
流石に3方向からの攻撃は躱しきれないらしく、ミストは攻撃に当たり始めるのだが、威力よりも命中を摂った攻撃なので、大したダメージにはなっていない。
その効果は精々足止め出来ていると言ったところだろう。
だが、それこそが俺の狙いなのだ。
「シルフ、ミールに頑丈なウィンドシールドを頼む!」
「任せて!」
そう返事をするなり、シルフは魔力の大半をつぎ込んだウィンドシールドをミールへと使用し、ミールの体は緑の泡のような物に包み込まれた。
「頼んだぞミール!」
「はい!」
ミールは力強く返事をし、身体強化魔法を使用してヴァルキリーモードになると、その腰に下げられていた白銀の剣を手にし炎を纏わせながら、ミストの元へと向かい突撃していく。
そして勢いそのままに、ミールは力強く斬りかかり、ミストは地面へと叩きつけられる。
それをチャンスとばかりに、シルフがエアプレッシャーを放ち、ミストが逃げれない様に押さえつけた。
もうミストは逃げる事も、動く事も出来なくなった。
次で最後の攻撃となる。
「下がれ皆!」
その一言に、ミール達は急いで俺の背後へと向かい後退していく。
俺はそんなミール達を、頭上に魔法を発動させ、維持した状態で見ていた。
今俺の頭上にあるのは、サラの力を借り、そこに俺の魔力の2割程を混ぜ込んで作りあげた、青白い炎で作られた特大サイズのファイアランスである。
ミール達が俺の背後まで退避したところで、俺は頭上に作り上げていたソレを、シルフによって地面に押さえつけられているミストの元へと解き放つ。
青白い特大サイズのファイアランスは、青い光のラインを描くような速度で飛んでいき、ミストへと直撃する。
そして次の瞬間、強大な衝撃と共に凄まじい爆発が起こった。
俺は咄嗟にウィンドシールドを前方に張り、襲い掛かる爆風から身を守り続けた。
そうして漸く爆風は収まり、舞い上がった砂煙が落ち着くと、その先には山が削られ、巨大なクレーターが出来あがっていた。
「少し、魔力を込め過ぎたか…」
やり過ぎた感を覚えながら、俺はクレーターの底を覗き込むと、その中心部には明るい茶色をした、コブシ程のサイズもある宝石が転がっていた。
あれは何だろうか?と疑問に思っていると、突然サラが大声を上げる。
「あ、あれってもしかして!?」
サラはクレーターの中心部にすごいスピードで飛んで行き、明るい茶色の宝石を拾い上げ、それをじっと見つめていた。
そしてその数秒後、サラの口から初めて聞く単語が聞こえて来る。
「シルフ!こ、これって、ちちち、地の精霊石だよね!?」
地の精霊石とは何なのか?
俺はサラの慌てぶりといい、その地の精霊石がどういったものなのだろうかと、首を捻っていた。
次回 第213話 王よりも王妃に




