第211話 各個撃破
210話にて、2匹目の[世界を蝕む闇]のサイズを忘れていたので、初登場シーンに追加しました。
小鳥タイプと黒い靄タイプに名前が付きました。
(安直ですが)
というわけで、序盤に文相の追加、そして各箇所の名前を訂正しました。
思いも寄らぬ武器を手にする事が出来た俺は、王妃に感謝の言葉を伝えに行く予定を決めたところですぐに気持ちを切り替える。
先程したばかりのエルとの約束を遂行する為にも、まずは目の前にいる2匹の[世界を蝕む闇]達を倒さなければならない。
だがその前に、まずそれぞれの呼称を決めておこうと思う。
小鳥タイプの方はまだいいが、黒い靄タイプの方については、なんか呼びづらいのだ。
そんな訳で、俺はパッと思いついた名前をそれぞれにつけ、ミール達にも伝える事にする。
因みにつけた名前は、小鳥タイプは[バード]、黒い靄タイプには[ミスト]だ。
そのまま英語にしただけである。
俺には名づけのセンスなんてカケラもないのは相変わらずだ。
とりあえず呼びやすくはなったので、俺としては十分である。
ミール達にもこの名前は覚えやすかったようだ。
「さて、名前も決まったところで、いっちょやりますか、ね!」
そう言い終えると同時に、俺は黒い靄タイプの[世界を蝕む闇]へと、ファイアランスを打ち込んだ。
しかし、小鳥タイプの[世界を蝕む闇]が黒い靄タイプの[世界を蝕む闇]とファイアランスの間へと入り俺の魔法を防いだ。
「(バードが間に入って防いだという事は、あのミストは遠距離魔法を防ぐ術を持っていないと言う事か?)」
今のバードの動きからそう予想を建てた俺は、すぐにこちらのメンバーを二手に分けるべきだろうと判断し、すぐにそれぞれに指示を出す。
「俺、ミール、レイの3人で小鳥タイプを相手にする、ノアとシア、みりーとエルは黒い靄タイプを頼む!サラとシルフもノア達の援護を頼む!」
俺の指示に、それぞれが了解し、それを聞いた俺はまず2匹をを引き離す事を最優先とすべく、バードの方へと向け、大量の魔力を込めたエアプレッシャーを正面から放つ。
バードは自分へと魔法が放たれた事を察し、すぐに防ぐ為のシールドを張り、直接的なダメージは防いだようだが、衝撃までは殺せず、結局は数百メートル後方へと吹き飛ばされていた。
こうしてミストからバードを引き離す事に成功した俺は、ミールと共に武器を構えてバードの元へと突撃する。
バードとの距離を詰めながら、ミールはヴァルキリーモードになり、バードに正面から接近すると同時に、白銀の剣を振り下ろし、そのほぼ同時のタイミングで、俺はバードの背後へと回り込み、魔力を大量に込めたミスリルの剣を横に薙ぎ払う。
これが決まればきっと倒せる、そう思えるほどの一撃が二人から放たれたのだが、結果はそうなる事は無く、バードは俺達二人のコンビネーション攻撃をヒラリと躱した。
「なっ!?」
「えっ!?」
躱された瞬間、俺とミールの驚く声があがる。
どうやらバードは、これまで戦ってきた[世界を蝕む闇]よりも動きが早く、多分強いのだろう。
そう思えた瞬間、同時に俺は不安に襲われる。
もしかしたら、ノア達が戦っているミストの方も、こいつと同レベルの強さがあるのではないだろうか?
もしそうなれば、ノア達だけでは倒すことは難しいだろう。
下手をすれば、逆にやられてしまう可能性だってある。
そんな後ろ向きな考えが頭を過り、俺は一刻も早く目の前にいるバードを倒し、ノア達の援護に向かう事を考えた。
しかし、バードには俺とミールの攻撃を当てる事が出来ない。
さて、どうしたものかと、俺は短い時間の間考えた。
このミスリルの剣があるのだから、攻撃さえ宛てられればきっと倒す事は出来る。
しかし、どうすれば攻撃を宛てられるのだろうか…
「(って、まてよ?そういえば奴は…!!)」
バードとの戦った時間はそれほど長いわけではないのだが、俺は一つ、バードがとった行動について思い出し、一つの可能性に気付く。
他に案も無い状態だからと、俺はその可能性に賭ける事にし、レイとミールへと、小声で指示を出す。
「レイ、奴にブレスで攻撃を頼む、ミールは俺と一緒に奴がブレスを防いだ所で、さっきと同じように攻撃だ」
「はい!」
「分かりました!」
二人は俺の作戦について何も聞かず、静かに、そして力強く返事をし、すぐに行動する。
レイは大空へと飛び上がり、バードへと向け火球タイプのブレスを放つ。
自分へと飛んで来る火球を見たバードは、それを防ぐ為にシールドを張り、火球攻撃を防いだ。
まさに予想通りの行動である。
後は俺の気付いた可能性に賭けるだけである。
俺とミールは一斉にバードへと再び斬りかかる。
まずはミールが正面から薙ぎ払う。
先程はこの攻撃を避けられてしまったのだが、今度は見事にヒット!
これにはバードの姿が真っ二つになるかと思ったのだが、そんな事は無く、ただ普通にバードの胸元に、横一文字の切れ込みが入った程度である。
流石にこれだけでは倒すことが出来るはずも無いのだが、今度は俺が背後からまっすぐ縦に魔力をたっぷりと込めたミスリルの剣を振り下ろし、その小さな体を左右真っ二つにする。
「やりました!」
「しかしマスター?何故今度の攻撃は当たったのです?」
無事バードを倒すことが出来たところで、レイが尋ねて来た。
「いやな、あいつ今まで遠距離攻撃を防いだ後、必ず1秒近くはその場から動いていなかったんだ。
まだ戦った時間がそう長いわけでもないから絶対とは言えないが、可能性は十分だと思ったんだ」
なるほど、流石です!と、ミールとレイが俺を褒めてくれるのだが、俺はそれに「今回はたまたまだ」と答えた。
「さぁ、それよりも早くノア達の方の援護に向かおう!」
「わかりました」
「はい!」
二人の返事を聞くと、俺達はすぐに数百メートル程離れた場所に居るノア達の元へと走り始めた。
次回 第212話 精霊石




