第197話 ついに来たらしい
準備整った俺達は、風の国へと向けて王都を出発していた。
移動方法はいつもの如く、龍籠に乗ってレイに運んでもらうという方法である。
空はいつも晴れており、出発して20分くらいたった頃、突然ディーからの念話が届いた。
『ナツキさん、今よろしいでしょうか?』
『ディーか、どうした?』
『それが…』
何の話だろうかと思っていたら、どうやらオルリア村の方に1組の商人の家族がやって来ているらしい。
しかもその商人一家は[恵みの湯]目当てだそうだ。
一応[恵みの湯]の方は従業員達に任せておいても大丈夫だと、タリアが以前に言っていたのだが、現状、従業員達は前回王族一家を招待した、あの1度っきりしか経験がない。
そこで俺は、念の為にと、タリアに従業員達のサポートをしに行ってほしいという伝言を、ディーに頼んだ。
『では、[恵みの湯]の方はタリアさんにお任せすればよろしいのですね?』
『ああ。後、仕事増やしてすまないとも伝えておいて』
『分かりました。ではナツキさん、御武運を』
その言葉を最後に、俺はディーと繋がっている感覚が切れるのを感じ、念話は終了した。
「ナツキ様?なんだかとても嬉しそうな顔をしてますが、どうしました?」
[恵みの湯]に、漸く招待した人以外の客が来たと聞いて嬉しく思っていたところに、ミールが話しかけて来た。
「さっきディーと念話してたんだが、どうやら商人の一家が[恵みの湯]目当てで来たらしくてな、それが嬉しかったんだ」
「まぁ!それは良かったですね、旦那様!」
「ああ。後はこの調子でどんどん客が来るようになればいいんだけどな」
「大丈夫ですよ主様、商人の一家がお客様なら、きっとそこから人伝に話が広まっていくはずです。
なにせ、あの温泉にはそれほどの効果があるのですから。
きっと多くの人が訪れて下さるようになるはずです」
「でも姉さん、もしその商人の一家が世間的に評判悪かったら、誰も話を聞いてくれないんじゃない?」
どこか納得できるようなノアの話だったのだが、シアが冗談っぽくそんな事を言い出した。
それを聞き、折角ノアのおかげで安心出来そうだった所を、シアのせいで少し不安を感じるようになってしまった。
「シア!何て事を言うのよ!主様が不安になっちゃってるじゃない!」
どうやら俺は不安な気持ちを顔に出していたらしい。
「ご、ごめんなさい主様!今のは冗談だからね?」
ノアに言われ、シアは俺の表情に気づき慌てて謝りだした。
とりあえず許しはするが、罰として暫くの間、皆の前でその長いお耳を弄りまわしてくれよう!
その後、火の国と風の国の境に着くまでの間、シアはずっと悶え続ける事となった。
途中、2度程、身体をビクンビクンさせていたが、俺はそれでも容赦はしなかった。
だって、なんだかこのコリコリした感じが気持ちよくって、止められないんだ!
次回 第198話 初使用~前編~




