第194話 約束と契約~前編~
後書きに風の精霊王の少年バージョンの紹介を追加しました。
「ところでディーの姿が見えないが?」
小賢しい真似をした事で、いつも以上の長いお仕置きを受け、今にも気絶しそうなサラの事は放置し、この場に居ないディーの事について皆に訪ねてみると、それにアルカが答えてくれた。
「ウンディーネ様なら昨夜水の国にある自分の寝床に用事があると言い、お出かけになられているのです」
「自分の寝床に?」
「はいなのです。そしてついでにお城にいって用事を済ませて来るので、帰るのは今夜くらいだとも言っていたのです」
寝床やお城に用事とは何だろうかと思ったのだが、とりあえず今はディーのいない理由が判ったので良しとし、俺は次の話に移る事にした。
「じゃあ次、風の精霊王が我が家に居る理由は?」
まるで生まれたての小鹿のようにプルプルしながら体を起こしているサラと、「大丈夫?」と言いながらサラの身体をツンツンと突く、少年の姿をした風の精霊王の二人へと尋ねてみた。
この時、二人に質問しながらも、俺はディーの時同様にサラが風の精霊王と連絡を取り、俺と契約をするという流れなのでは?と思っていた。
「実はナツっちに頼みがあってさ」
「頼み?」
「うん」
短くそう答えた風の精霊王の表情は、真剣なモノになっていた。
そんな風の精霊王の様子に、俺はその話をちゃんと聞こうと思い風の精霊王の正面に胡坐をかいた。
ミール達も俺に続き、俺の後ろで座り始めた。
「ナツっち、いやナツキ達の力で、ウィンディア王国を助けてあげて欲しい」
「助けるというのは、どういう事だ?」
助けて上げて欲しい。
その言葉の意味するところはまだ分からないが、これから聞く内容には、何か重要そうな事が出てくる、と俺の感が告げている。
「風の国ウィンディアには、嘆きの穴という、小高い丘の上にある深い、深ーい穴の開いた場所があるんだ。
多分、人族や獣人族、それに翼人族は知らない事だと思うんだけど、あの穴の底はただ単に平地があるだけで、他には何もないはずだった。
だけど数週間前、とてつもなく邪悪な気配がするって風が教えてくれたから見に行ったら、そこには何か黒い靄を纏った一匹の小さな鳥が居ただけだった。
しかしその小さな鳥は、風が俺っちに教えてくれていた通り、見た目に反したすさまじい程の邪悪な気配を感じさせていたんだ。
これは放っておく事は出来ないって考えた俺っちは、すぐにその鳥を消滅させようと思い、攻撃を仕掛けた。
けど、俺っちの攻撃はあの鳥に何一つ傷を負わせることが出来なかった。
もしこんなのが地上に出たら、あちこちに被害が及んじゃうって思った俺っちは、サラっちに相談する事にしたんだ。
そしたらアレの正体を知る事が出来た、しかもそれを倒せる存在が居るって事もだ!」
黒い靄を纏っていた。
この一言に、俺は確信する。
それは俺達が探している敵[世界を蝕む闇]で間違いないと言う事を。
故に、俺は風の精霊王が続きを話そうとするのを止め、必ず[世界を蝕む闇]は倒さねばならないからと、風の精霊王の頼みを聞く事を伝えた。
次回 第195話 約束と契約~後編~
風の精霊王(少年バージョン)
透き通るようなグリーンの瞳をし、髪は鮮やかな緑色。
身長は140㎝程
性格は明るく元気な男の子と言った感じ。
今のところサラやディー、そしてまだ登場していないが、地の精霊王の3人しか知らないのだが、実は結構な悪戯好き。