第192話 盗賊を届けに
盗賊達を無力化する方法についてあれこれ考えてみるが、結局はシンプルに接近してからの力技で行くことにした。
他にも魔法を使ってとか、弓を使って等と言う案もあったのだが、遠距離攻撃をした瞬間、タイミング悪く動いた、もしくは動かされた人質に当たってしまったら大変なので、確実に目標だけを無力化させれる、接近戦を選んだのだ。
盗賊達を無力化させる方法について決まると、まずはレイに頼んでオルリア村から少し離れた場所まで低空飛行で移動してもらい、地上へと降ろしてもらった。
地上に降りると、俺は盗賊達を無力化させに行くメンバーと、エキナ達の傍に残すメンバーとに分かれた。
盗賊を無力化させに行くメンバーは、俺、ミール、ノア、シアの4人。
エキナ達の傍に残るのは、ミリー、エル、レイの3人だ。
俺はミールとノアとシアを連れ、目標が見える位置まで移動する。
その道中、俺は3人に状況とそれに対する行動についての説明を始めた。
「探知スキルによると、現在盗賊達は孤児院の入り口前に居る様だ。
しかも人質を囲むようにして前後左右に二人ずつ居る感じだな。
後、盗賊達から少し離れた場所に村の人達はいるようだ。
とりあえず人質の無事が最優先だから、可能な限り素早く盗賊達を無力化させたい。
そこでだ、俺は正面の奥に居る二人を担当するから、ミールは正面の手前に居る二人を頼む。
「手前の二人ですね。わかりました」
「で、ノアは左側の二人で、シアは右の二人を任せる」
「分かったわ」「分かりました」
丁度手短な説明が終わったところで、俺達は目標が見える距離へと辿り着いた。
現在俺達が今いるのは、孤児院の北側にある森だ。
事前に探知スキルである程度の状況は分かってはいるのだが、念の為に自分の目でその状況を除いてみる。
覗いた先では盗賊達が人質達を囲い、剣を向けて子供たちを脅している。
そんな盗賊達に恐怖し、ロムとククリを覗いた子供達は号泣していた。
「(すぐに助けてやるからな)」
そう心の中で呟いた俺は、ミール達に準備は良いか確認すると、いつでも行けます!と返事が帰って来たので、突撃体制に移る。
「それじゃあミール、ノア、シア、いくぞ!」
「「「はい!」」」
「GO!!」
ミール達にだけ聞こえるレベルの声で合図を出すと、俺達4人は揃って目標に向けて全力で走り出す。
きっと傍から見たら俺達の姿が消えたように見えていただろう。
「まずは一人目」
先程の打ち合わせ通り、俺は正面奥に居た二人の内、右側の背後で立ち止まってそう呟くと同時に、延髄へと手刀を浴びせ気絶させる。
一人目が終わるとすぐにもう一人の背後へと移動し、こちらにはジャーマンスープレックスをお見舞いする。
その強烈なダメージに、二人目の盗賊も気絶しこれにて俺の担当は片付いた。
立ち上がってミール達の方を目視にて確認してみると、3人ともちゃんと無力化を完了させていた。
「皆、もう大丈夫だぞ」
突然現れ、ほんの一瞬で盗賊達が無力化されていくその光景を見ていた人質達は泣き顔のままポカンとなっており、少し離れた場所に居た村人達も何が起こったのか分からない様子でポカンとなっていた。
そんな村人達はとりあえず放置し、アイテムボックスから縄を取り出し、ミール、ノア、シアの3人に手伝ってもらいながら気絶している盗賊達を次々と縛り上げていく。
8人をきつく縛り上げて終えたところでポカンとなったままの者達は正気に戻ったと思うと、次は俺やミール達に感謝し始める。
助けられた子供達も、手出しが出来ず離れた場所で見ている事しか出来なかった村人たちも全員が、だ。
「それじゃあ俺はこいつらの引き渡しをしてくるから、皆はエキナさん達の手伝いを頼む」
ひとしきり感謝された後、俺は盗賊達を王都の騎士に引き渡しに行くべく、元の姿に戻ったレイの背に乗った状態で、ミール達にエキナ、ボード、シルバの3人の手伝いを頼んでいた。
そんな俺の手には縛られた8人の盗賊達から伸びている縄が握られている。
「それじゃあレイ、王都まで飛ばしてくれ」
「お任せください!」
レイは大空に勢いよく舞い上がり、普段よりも早いスピードで王都へと向かう。
俺の手に握られている縄の先はレイの背には無く、レイよりも下へと伸びている。
つまり盗賊達は空中にぶら下げられている状態だ。
最初の方はとても騒がしくしていたのだが、途中から一切声がしなくなっていたので様子を見てみると、全員が股間を湿らせて気絶していた。
次回 第193話 お仕置きと紹介