第187話 再会を喜ぶエルフ達の会話
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ナツキが居なくなり、リビングにはエキナ、ボード、シルバ、ノア、シアという、エルフ族と、世話をするタリアだけが残っていた。
「まずは二人にお礼を言わせて頂戴。
貴方達のおかげで、ジビナ病に苦しんでいた人達は助かったわ。
本当にありがとう」
エキナのお礼に合わせ、ボードとシルバもノアとシアに向け頭を下げ、礼を言う。
「両親が居なくなった私とシアを育ててくれた皆に恩返しが出来てよかったです。ね、シア」
「ええ。里の皆のおかげで、私達は生きてこれたんだもん。あれくらいの事でもしなきゃ、いつまでたっても恩が返せなかったわ」
「ノア、シア……」
エキナは二人の名前を呼ぶと、そのまま抱きしめながらそれぞれの頭を撫でる。
そのまま暫し時が経ち、エキナはノアとシアをその腕から解放する。
「今ね、私と姉さんはすっごく幸せなの。あの時は里の為にって思って私達は奴隷になったのだけれど、そのおかげで主様と出会う事が出来わ」
「そうね。寧ろ今じゃもう、主様無しでは生きていけないって思える位だわ」
ノアとシアは、主であり夫でもあるナツキの事を思いつつ、エキナ、ボード、シルバの3人に今の自分たちがどれ程幸せなのかを話すのだが、それを聞いていたエキナやボード、そしてシルバの3人の表情は、幸せそうに話すノアとシアの事を心配するかのようなものとなっていた。
そんなエキナの表情を見て、ノアとシアはエキナ達にどうしてそんな表情をするのか理由を尋ねた。
「貴方達が今幸せなのはよく解ったわ。けれどね、彼は人族よ?私達エルフ族よりも遥かに寿命は短いのよ?つまりあなた達を置いて先にその生涯を終えて、居なくなってしまうの。
そうやって残される貴方達の事を思うと…」
「その事なら問題ないさ」
エキナがノアとシアの事を心配しながら話していると、それを遮る声がリビングの隅にあるキャットタワーのような所から聞こえて来た。
「誰だい!?」
エキナは自分の話を遮った声の方へと向き声の主を探す。
するとタワーの天辺付近にあるハンモック部分から、子犬サイズの赤いドラゴンのサラがヒョコっと顔を出し、それに続く様にして、全身が青くフェレット風な顔に細長い耳を持つディーも顔を出した。
エキナ、ボード、シルバの3人はそんな2匹の姿を見て怪訝そうな表情をしており、シアはそんな3人に2匹の事を紹介する。
「エキナおばさん、あちらの赤いドラゴンは火の精霊王様で、名前はサラマンダーといって、普段はサラ様と呼んでいるの。
そしてその隣に居らっしゃるのは水の精霊王様で名前はウンディーネ様、こちらはディー様と呼んでいるわ」
ハンモックから顔を出す2匹の招待を聞き、エキナ、ボード、シルバの3人の表情は驚きへと変わっていた。
「紹介をありがとうシア。で、さっきの話にもどるんだけど、ノアとシアの二人の主、つまりナツキは僕やディーと契約を結んだお陰で、不老になったんだよ。だから寿命で死ぬ事は無いから心配する必要は無いよ。
まぁ、誰かに殺されたりしたらどうしようもないけどね。
あ、それからもう一つ、ノアとシア、それにミールやミリーにエルといった、ナツキのパートナー達は、ナツキの眷属となっているから、そっちも不老になってるよ」
サラの説明を聞き、エキナ達3人は更に驚く事となった。
まさかノアとシアにとって主であり、夫でもあるナツキが精霊王と契約し不老になっており、更にはノアとシアはそんなナツキの眷属となる事で不老になっていたのだ。
「そんなわけで、私達、ずっと主様と一緒に居られるってわけなの」
「そのかわり、主様が死んでしまうと、私達も死んじゃうみたい。だから私達が取り残されるなんて事は絶対にないの。まぁ、主様を殺せるような存在がこの世界には居ないと思いますけどね」
「そうだね。だから、エキナおばさん安心して。私達、主様とずっと幸せな人生を送って見せるわ」
「ナツキさんがどれほど強いのか判らないけれど、あなた達がそれほどまでに信頼しているのなら私は何も言わないわ。だから、これからも幸せに過ごすのよ?」
「ええ!」
「うん!」
安心した表情に戻ったエキナからの言葉に、ノアとシアは力強く答えた。
その後、普段はどんな事をしているのだとか、これまでどんな事をしてきたのかといった事をエキナ達に聞かれ、ノアとシアはナツキの秘密には触れない様に気をつけながらもエキナ達の質問に答えていく。
そんな彼等、彼女等の質疑応答のような楽し気な会話は、ナツキとレイが戻ってくるまで続くのである。
次回 第188話 あまり知られていなかった