第185話 噂を聞いて
オルリア村に戻った俺達は、昼食を食べた後はずっと訓練をしていた。
なんせ今回の討伐依頼のおかげでステータスが大幅に増えたので、また自身の力を上手くコントロール出来なくなってしまっていたのだ。
これまでにも何度かこういった訓練をしてきたのだが、今回は上がり幅が大きすぎたせいか、鳴れるまでにかなりの時間が掛かってしまい、全員が魔法で周囲に影響を出さぬように魔物だけを倒せるようになったのは、辺りが暗くなり始める頃だった。
尚その訓練中、俺達が何度もこけたり木にぶつかったりする姿をみて、サラは笑い転げていた。
そんなサラの姿にイラついた俺は、[繋ぎの首輪]を使ってお仕置きしてやった。
そんな半日掛かりの訓練を終えた俺達は、家に戻るとすぐに風呂へと向かった。
「はぁ~、疲れた体が癒されてくよ~」
「前回以上に疲れた気がします」
「確かに今回は時間がかかりましたね」
「私なんて、今日中にコントロール出来るようになれるのか不安になる位でした」
俺の左側で、シアとノアはそう言いながら幸せそうな顔で湯に浸かっている。
それに同意の声を上げたのは、俺の右側に居るミリーとエルだ。
そしてミールは俺の正面で背を預けるようにして座り、悶えている。
原因は俺が尻尾と耳をモフっているからだろう。
「ところで主様、いつまでミールを可愛がり続けるつもりなの?」
「むろん俺の気がすむまで!」
「……はぅっ!」
ミールは小さく声を上げながら俺にもたれ掛かかり、体中の力が抜けたような感じになりながら、肩で息をしていた。
そんなミールの様子を見て、そろそろ風呂から上がろうと言う事になり、俺はグッタリとしているミールをお姫様抱っこし、風呂場を後にした。
風呂から上がった後は、用意されていた夕食を頂き、のんびりとした一時を過ごした後、寝室へと向かう。
そして今夜を共にするミールとミリーの二人と、甘くも激しい愛の行為は致し、今日と言う一日を終えるのであった。
翌日
朝から起きたのは良いのだが、午前中、特にする事はなかったので、村に新しい建物を作る事にした。
作る場所は我が家の南にある孤児院の更にその向こう側の広場を選んだ。
この場所に作る最初の建物は宿屋だ。
もしギルドがこの村に出来れば、冒険者の泊まる宿は必要となるので作っておくべきだろう。
まぁ、現在の所ギルド建設の人材が来るという連絡は来ていないのだが……
因みにこの宿やには、温泉を引く予定である。
ただし、この宿の場合は、宿泊とは別で入浴料を取るようにする予定だ。
良くラノベやファンタジーアニメに出てきそうな、2階建ての建物を創造スキルでサクッと作り上る。
1階部分は受付と食堂で、2階部分が宿泊する場所だ。
「(昨日の討伐のおかげでこれくらいの建物を作っても、全然疲れる事がなくなったな)……よし!これならもう数軒ほど一気に作るか!」
宿屋1軒に使ったMPは大体1400程なのだが、それでもまだまだ余裕だからと俺は調子に乗り、その後少し大きめの空き家と、小さめの空き家を2件ずつ造った。
これにより、全MPの内の半分近くを消費した俺は、若干ではあるが、気怠さを感じ始めたので今日の作業はここまでとし、家に戻り、一人温泉に浸かってのんびりと過ごしていた。
長湯も終わり、リビングで紅茶を飲みつつ、今後村に作るべき建物を考えながらメモ帳に記入していた。
この世界に来て、知力が上がったおかげでこれくらいの事は記憶しておく事も出来るのだが、こうやってメモするのは俺が考え事をするときの癖のようなものだ。
暫くの間そんな時間を過ごしていると、玄関の方からロムの声が聞こえて来た。
「すみませーん!兄さん居ますか?」
メモ帳とペンをアイテムボックスに仕舞い込み、玄関に向かおうとするタリアを止めて、俺は玄関へと向かう。
「どうしたロム」
「外に客が来てるぜ。なんでも人を探してこの村にやって来たらしいよ」
「人を探して?」
一体誰を探して来たのだろうかと思いつつ、俺は靴を履いて玄関の外へと出てみると、そこにはエルフ族の女性が一人と男性が二人、旅人の恰好をして立っていた。
「突然の来訪で申し訳ない。こちらにノアとシアという双子の姉妹が居るという噂を聞いて来たのだが」
心配そうな表情で、女性のエルフは俺にそう尋ねて来た。
次回 第186話 育ての親