第179話 真・ボーナスステージ
準備が整い、魔物の大群の討伐計画がスタートする。
遥かの方から、レイに追い立てられた魔物達がこちらに向けて走ってきている。
俺がミリーとエルの二人に準備は良いかと尋ねると、やる気に満ちた顔をした二人は力強く頷く。
そんなやり取りをしている間にも、魔物の大群は攻撃予定ポイントへと近づいてきている。
「カウント始めるぞ!3,2,1、GO!」
「「アクアプレッシャー!」」
ミリーとエルの二人が、魔法を同時に発動させる。
すると魔物の大群の頭上に巨大な魔方陣が現れ、その中から数十トンレベルの水が出現し、次の瞬間、魔物達の頭上へと叩きつけられた。
それはとてつもない程の威力を発揮し、大地は揺れ、辺りには音が響き渡る。
俺はその光景に 自分の出した指示のミスに気づく。
降り注いだ水はその後どうなる?
当然答えは周囲へと流れていく、である。
問題はその流れていく水が、とてつもない程の水量であり、更には激しい勢いで周囲へと広がっている事だ。
流石にアレをウインドシールドで防ぐのは無理があるだろう。
「ノア、予定変更だ!皆を連れてレイの背中に転移するぞ!」
「は、はい!」
ミリーとエルの全力魔法の威力を目の当たりにして驚き、固まっていたノアだが、俺の声を聞いて正気に戻るなり、慌てて返事をする。
そんなノアの返事を聞き、ミール達の方へと視線を移すと、そこではミールがミリーに、シアがエルにマジックポーションを飲ませている最中だった。
しかし、この状況で最後まで飲ませるのを待っていては確実に濁流に巻き込まれてしまうだろう。
「ミール!シア!マジックポーションを飲ませるのは後だ!二人の体をしっかりと抱きかかえておけ!ノア!急いで俺につかまれ!」
そう各自へと出しながらも、俺はミールとシアの肩に手を置く。
そしてノアが俺の腰に抱きついた瞬間、俺はテレポートスキルを使い、魔物の大群の背後に居るレイの背中へと転移した。
『ああん!!』
転移し終えた瞬間、レイの艶めかしい声が頭に響き、同時に空を飛ぶその体がフラフラとし始めた。
それに驚いた俺だが、いそいでウィンドシールドを使い、俺達を囲んで風圧から身を守る。
『ますたぁ、そこは、だめですぅ』
再びレイの艶めかしい声が頭に響き、その内容に俺はギョッとなる。
「そこってなんだよ!?」
驚きながらも足元へと視線をやると、俺の右足の下に一枚の虹色の竜鱗があった。
どうやら俺はレイの性鱗を踏んでしまっていたようだ。
「わ、悪い!!」
慌てて足をどかせると、フラフラとしていたレイの体は落ち着きを取り戻し、落ち着いた飛行を取り戻す。
『マスターだから構いません。ですが、飛行中だけは触らない様に気を付けてくださいね。堕ちちゃいますよ?』
「す、すまん」
レイに謝り、後ろを振り向くと、そこではミリーとエルの二人がミールとシアの手により、マジックポーションの残りを飲ませていた。
ノアはそんなミール達の様子を眺めている。
マジックポーションを飲み終えたミリーとエルは元気になり、俺達はレイの体から落ちない様に気をつけながら地上を覗く。
地上では、周囲に広がる濁流が落ち着き始めている。
攻撃予定ポイントを中心に、水圧で潰れてた死体や、まだ生きてはいるのだが濁流に巻き込まれ、足が折れてしまったりして動けなくなっている魔物達の姿があった。
始めは気が付かなかったのだが、今はかなり近い距離に居る為、魔物の姿が良く見える。
お陰で俺達は知った。
ここに居る魔物の殆どがキングボアだと言う事に。
この依頼を受けるときに聞いていたのはボアの大群と言う事だったが、それはどうやら間違いのようだ。
この大群の情報を持ってきた人物は、きっと遠くからこの大群を見て、キングボアとは思わず、勘違いをしてしまったのだろう。
もしもこの依頼、俺達以外が受けていた場合、きっと被害は甚大なものとなっていたはずだ。
情報とは、本当に重要なものである。
さて、そんな過ぎたことは良いとして、一つ大事なことがある。
それは、大量のキングボアのステータスが手に入ると言う事だ!
さぁ、あの濁流を生き残った奴等に止めを刺し、さっさとステータスを頂いていくとしよう。
「ミリーとエルはさっきやったから、残りは俺、ミール、ノア、シアの4人で生き残ったやつらを始末しにいくぞ!」
「「はい!」」
「おー!」
ミール、ノア、そしてシアの返事を聞き、その後に俺達はレイの背中から大地へと飛び降りた。
次回 第180話 元凶の登場
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