第173話 [恵みの湯]の正式オープンに向けて
その日の夕食、やはりというべきか、卵料理が出てきていた。
それも卵スープと卵焼きという、分かりやすい2品である。
今朝まではレイの卵だと知らなかったので普通に食べていたのだが、今は……
ともあれ、こうして調理され出てきてしまっている以上流石に食べないわけにもいかない。
レイがどんな気持ちでこの子供とも言える卵を提供しているのかは知らないが、もしこの料理を粗末にするようでは命に対する冒涜と言うもの。
しっかりと食べてやることが今の俺に出来る事なのだ。
そんな事を考えながら、俺は夕食へと手をつけていく。
「ん~!この卵焼き美味しい!」
ごちゃごちゃと考えながら食べている俺とは違い、シアは美味しいと口にしながら次々に卵焼きを口の中へと運んでいる。
君達、あの産卵に立ち会っていたというのによくそんなにポンポンと食えるね。
そんな事を思いながらも、俺はいつも通りの自分を演じながら食事を続けていく。
そしてようやく全てを食べ終えたところで、エマルに頼んでオリジナルのブレンド茶を入れてもらい、漸く一息つく事が出来た。
食後、一時の休憩の後に皆で一緒にお風呂へと入る事となる。
俺はこの入浴中、何もかもを忘れ、ただ無心になって温泉に浸かり、心と体を癒していた。
風呂から上がると、リビングに寄って冷たい水をグイッと飲んだ俺達は寝室へと向かう。
寝室に入るなり、俺は今夜のパートナーであるミールとミリーを連れ、更に奥の自室へと進む。
「旦那様、1度順番が飛んじゃった分、今夜はいつも以上に可愛がってくださいね」
俺の部屋に入るなり、ミリーから発せられたこの一言で、夜の行事は開始された。
別に俺の都合で飛ばしたわけではないのだが、まぁ、折角こうしておねだりしてくれている事だし、今夜はちょっぴり、激しい夜にしてやろうじゃないか!
とはいうものの、この日の夜、ミールは尻尾とお耳を重点的にモフる事で撃沈。
弱点責めに、早々にリタイアとなった。
「ミリー、後は、頼みま、す」
ミールが脱落したところで、次はミリーが相手だ。
ミリーは普通の人族故、ミールのような弱点が無いのだが、代わりに休憩すら許さず、ひたすら責め続ける事で結局いつもより早い時間で撃沈。
この世界に来て、ステータスと共に何故か強化されてしまった俺の精力なめるなよ?
二人が気絶するかのように眠りについたところで、二人の間に横になり、俺も眠りについた。
翌朝、目が覚めるとミールとミリーは既に起きており、二人に向かい挨拶をするのだが、二人からは少し拗ねたように挨拶を返された。
「どうしたんだ二人共」
「どうした、じゃありません!何ですか昨日のアレは!酷いじゃないですか!」
理由を尋ねてみた俺に帰って来たのは、昨夜の責めに対し抗議だった。
二人はもっと甘く、そして優しい責めをご所望らしく、次回はその様にさせていただきますと言う約束をして許してもらい、朝の挨拶をやり直した。
その後はいつも通り、隣の寝室に向かい、皆との朝のスキンシップという名のブラッシング。
全員が終わった後は揃ってリビングへと移動し、朝食を頂く。
朝食がり、エマルのオリジナルブレンド茶を飲みながら俺は皆に今日の予定を話し始めた。
[恵みの湯]の正式オープンを告げる広告配りを、今日の午前中に王都でするのだと。
次回 第174話 行商人