第16話 火の精霊王
すみません、投稿が少し遅れてしまいました。
(二日連続で寝落ちしてしまってたなんて言えやしない!)
俺達は再びダークドラゴンと睨み合っている、今度はミールも意思を強く持ち、竦む事無く立ち向かってはいるのだが、その額には汗が滲んでいた。
「ミール、まずは俺がいく、そして奴の気を引くから、後ろに回り込んでくれ」
視線だけをこちらに向け、コクッっとミールは頷いた
「じゃあ行くぞ!」
俺は全力で地を蹴り、ダークドラゴンへ跳びかかり剣を振り下ろすと、その身体には深い傷を負わせた。
深い傷をみて、これなら倒せる!と思った矢先、すぐにその深い傷に黒い靄が集まりすぐに再生されていった。
これに俺は驚いたが、それでも動きを少しだがとめる事も出来たのだ。
しかしその隙に、今度は背後に回り込むことに成功したミールが跳び掛かり尻尾を切り落すと、俺の少し前の位置へと着地しダークドラゴンへと向き直る。
するとまたもや黒い靄が集まり、尻尾の形へと変わっていき、その身体は元の形に戻っていた。
ダメージ自体は与えれてい無さそうだが、一つダークドラゴンの癖というか特徴というか、ともかくそれを知ることが出来た。
どうやら、ダークドラゴンはその身に傷を受けると動きを止め、傷の再生を行うようだ。
ミールはすぐさまバックステップで俺の横へと戻り、俺達は再びダークドラゴンから距離を取った状態で睨み合い状態へと戻った。
「奴は防御力は全然無いみたいだが、斬ってもすぐに再生してしまうようだな」
「はい、しかも傷をつけてもダメージ自体受けてる様子がないです」
「武器がダメなら次は魔法で攻撃して見るか、ミールは下がっていてくれ」
「分かりました」
ミールがゆっくりと後ろへ下がるのを確認すると、俺はイメージを即座に固め、特大のフレイムランス3本を無詠唱で放つ。
最初はイメージを固めるために詠唱も必要だったのだが、魔法の威力制御の為に何度か使っていたおかげで、今では詠唱は必要なく使えるようになっていた。
特大サイズの炎のランスがダークドラゴンに向けて真っ直ぐ飛んでいく。
ダークドラゴンは向ってくるフレイムランスを避けるのだが、3本のうちの1本が背中にある大きな翼へと命中し、その場で爆発が起こった。
『グワァァァ!!』
爆発によって発生した煙の中で、ダークドラゴンが初めて悲鳴のような声を上げた。
今はダークドラゴンの姿を見る事が出来ないが、武器による攻撃時には聞けなかった悲鳴が聞こえた事から、これはもしやダメージを負わせる事が出来たのでは?そう思いながら、煙が収まるのをじっと見つめると、徐々に視界が晴れていき、すぐにダークドラゴンを目視できたのだが、なんと翼は元に戻っていた。
「やはり魔法でもダメージは与えることはできませんか、先程の悲鳴でもしかしてと思ったのですが・・・」
「いや、良く見てみろ、奴の姿、最初よりもちょっと小さくなってないか?」
翼の形が元に戻ってはいるが、よく見ると確かに最初は全長6メートルほどはあったはずの巨体が、今は少し縮んで5メートル程となっていた。
「た、確かにサイズが小さくなっているようです、ということはこのモンスターは・・・」
「うん、どうやら魔法による攻撃のみ効果はありそうだな」
ダメージを受け、怒るダークドラゴンはその翼を羽ばたかせ、その巨体を宙に再び浮かべる
『ギャァァァ!!』
威嚇の様な咆哮と共に俺に向かい滑空するように突撃してくるが、その動きは最初に比べ少し遅い、その証拠に俺はもちろん、ミールも簡単によける事が出来ていたのだ。
「ナツキ様に掛けてもらったクイックのおかげでしょうか?私でもあの動きを見切る事が出来ました」
「いや、そうじゃない、確実に奴の動きは遅くなっているみたいだ、もしかすると、魔法ダメージによって縮んだのが原因かもしれない」
「と言う事は、もっと魔法によるダメージを与え続ければ倒せるとって事ですか?」
「解らない、だけど弱らせる事は出来そうだ」
「では、今度は私が攻撃してあれの動きを止めますので、その隙にもう一度魔法をお願いします!」
ミールは武器を構え、ダークドラゴンの側面に向けて走り出す、そして側面に回り込み、そのまま横腹を斬りつけると、すぐさまバックステップで距離をとる。
再びダークドラゴンの傷が再生されていくのだが、その動きが止まっている隙に俺はすかさず魔法を放つ
「くらいやがれ!『フレイムランス!!』」
俺の放った魔法がダークドラゴンの顔へと命中し、再び爆発が起こり、そしてまた煙が立ち込めた。
きっと今、あの煙の中では顔の修復をしてるだろう、だがその再生中の動けない事を好機とばかりに、俺は更にフレイムランスを放ち、追い討ちを掛ける。
爆発が続き、煙は更に大きく舞い上がっていった。
魔力を半分ほど使ったところで魔法を止めると、俺は肩で息をしていた。
爆発の連続が終わり、次第に煙が収まりはじめると、魔法の連続ダメージにより、ダークドラゴンの身体は5メートルほどあったのが、2メートル程まで縮んでいた。
数十発も打ち込んだのだが、ダークドラゴンの大きさは2m以下になってない所から、これ以上小さくする事が出来ないのではないかと思えた。
相手の観察していると、ダークドラゴンの声がまた聞こえてきた。
『チカラガ・・・チカラガタラヌ・・・』
次の瞬間ダークドラゴンは翼を羽ばたかせ、空に向かって飛びあがり、そのまま飛び去ってしまった。
「しまった!あいつの飛び去った方向って町の方だ!」
そう、奴の飛び去った方向にはフレムストの町があるのだ、このままでは町は襲われてしまう。
そう思ったその時、祭壇の方で動く気配を感じ、そちらを見ると、弱りきって横たわっていた竜が目を開け身体を起こしていた。
『落ち着くのだ異世界の者よ、今のお主では奴を完全に倒す事はできない』
「動けるようになったか、いや、それよりもどういう事だ?今の俺では倒せないって」
『それよりこちらに来るのだ、そしてそこの娘よ洞窟の外にお主達の仲間がいるだろ、急いでここへ呼んできてくれぬか』
精霊王の言った言葉は気になるのだが、その精霊王が急いで呼びに行かせる所から、従うべきだと思い、俺からもミールにお願いする。
「ミール、言われたとおり、ミリー王女達を呼んできてくれ、俺はその間に精霊王に回復魔法を掛けておく」
「は、はい!わかりました!」
ミールは入ってきた洞窟のほうに走り、ミリー王女達の元へ向かう
俺はその間に精霊王の近くへとより、ありったけのMPを使い回復魔法を掛けつづけた。
『すまないな、異世界の者よ、我が油断したばかりにあの闇に取り付かれ、お主の力になるどころか、奴に力を奪われてしまって迷惑まで掛けてしまうとは』
「気にするな、それより、今のままじゃあいつを倒せないというのはどういうことだ?」
『アレはこの世界の人が扱う魔法や武器では倒す事は出来なぬ、アレに立ち向かうには我等精霊の扱う力、精霊魔法による攻撃でなくては完全に消滅させる事はできん』
「やっぱり俺の魔法じゃ倒せなかったんだな」
自分の力じゃ倒せないと分かり、悔しい気持ちになった。
『うむ、奴らには精霊魔法、つまり闇を払う力のこめられた魔法が必要となる、我の場合だと火に闇を払う力を込めた魔法となるわけなのだが、我の力ではまだアレを消滅させる事が出きない、だがお主は運命の女神様より授かった力で、今の我より更に強い力を扱う事ができる様になっておる』
「だが俺はその肝心の精霊魔法を使う事が出来ないんだが?」
『そのために我等精霊王は運命の女神様より、お主に協力をしてほしいと頼まれていると言ったであろう』
「協力といってもどうするんだ?・・・とすまない、魔力がもうほとんど残って無いな、これ以上回復魔法を使えそうにない」
残ったMPをほぼ全て使い切り、身体全体に疲労感がいっきに襲い掛かり、俺はその場に座り込む。
『いや十分だ、しかしこれほどの回復魔法を使えるとは、さすが女神様より加護を頂いているだけの事はある、これほどの魔力があれば、我等精霊の力を使いこなす事もできよう。
さぁ、精霊の力をその身に宿すため、我と契約してもらう、そして、そのために我に名をつけてもらいたい』
「名前を付ければいいのか?そうだな・・・(火の精霊というとイフリートが出てくるが・・・イフリートって竜って感じじゃないよな、あ、サラマンダーだと竜っぽい名前だしいいかもしれないな)よし、決めた!サラマンダーでどうだ」
『サラマンダーか・・・うむ、よき名だ。この姿のままでは場所をとってしまうな、姿を変えるとしよう』
そういうと、火の精霊王サラマンダーはその身体が光に包まれ始めた、その光景にたまらず目を瞑る。
そして先程までとは違う女性の声が聞こえてきた。
「うん、うまく変化できたかな、ってもう目を開けても大丈夫だよ?」
突如聞こえる女性の声に目を開けると、先程まで竜のいた場所には、燃えるような赤く長い髪をなびかせ、その瞳は輝くルビーの様に赤い身長は160cm位で胸はやや控えめなスレンダーな女の子が立っていた。
「えと・・・サラマンダー?」
「うん、これがボクの人型の時の姿なの」
姿どころか口調やら一人称まで変わっている。
折角、火の竜ということでサラマンダーという名前にしたのに、人型に変化したあげく、性別は女の子ではサラマンダーという名前は似合わなくなる。
「えと・・・キミの事はサラマンダーというよりサラと呼ぶようにしようと思うんだけど、どうだろうか」
目の前の子をサラマンダーと呼ぶには違和感が大きすぎるので、呼びやすいようにと思い、提案を出してみる。
ソレを聞いて、サラマンダーは少し考えるような仕草をした。
「う~ん、確かにこの姿だとサラマンダーというよりサラって言うほうが女の子らしくていいかもね!じゃあそれでよろしく♪」
うむ、実にいい笑顔である。
ということで、これから火の精霊王サラマンダーはサラと呼ぶ事が決まった。
「そうだ、そう言えば俺名乗ってなかったな、俺の名前はナツキだ、よろしくな」
「うん、よろしく。あ!ナツキの仲間達が来たみたいだよ」
サラの言葉に、外に通じる洞窟の方を見ると、ミールの後ろにミリー王女や4人の兵士、その後ろにノアとシアが付いて来ていた。
するとミールがサラマンダーを見るなり驚いていた。
それもそうだろう、さっきまで竜の姿だったのに、皆を呼んで戻ってきたら竜がいなくなって変わりに女の子が居るんだもん、そりゃ驚くよね。
とりあえずミールには精霊王にサラマンダーという名前を付けたらこうなった、とありのままに伝えておいた。
当然、理解できないみたいだ、っていうか俺もできん、だが納得はして貰えた。
次回 17話 精霊魔法