第160話 すぐにでも!
げっそりとなった俺は、ツヤツヤになったミール、ノア、シア、ミリーの4人と一緒にリビングへと戻ってきた。
そこには丁度、料理を運んで来ていたコロンとココが居り、俺の姿を見るなりコロンは顔を赤くし、ココは呆れた顔をする。
「ご主人様、せっかくお風呂に入ってたんですから、せめて行為の後の匂いくらいは消してこにゃいとダメですよ?」
ココに言われ、自分の体を匂ってみるが、全く分からない。
まぁ、それも当然の事ではあるのだが、言われると確認するのが人の性ではないだろうか?
どうやら普通の人族には分からないが、ココやコロンのような嗅覚の鋭い獣人系にはわかってしまうようだ。
つまり、ミールも分かっていると言う事になる。
言ってくれれば良かったのに。
というよりも、ミール達にも残り香があるのでは?
特にミリーとか。
そう思い、一番回数の多かったミリーへと視線を向ける。
「旦那様が湯船に入ってる間、私達が洗いに行ったのを見てたでしょ?」
バッチリと見させて頂いておりました。
そんな俺達のやり取りを、赤面したまま固まって聞いていたコロンに、ココは「これくらいの事、にゃれにゃいとダメにゃ、それより早く食事を運ぶにゃ」と、コロンの手を引っ張り調理場へと戻っていく。
とりあえず俺も今の内にもう一度風呂場に戻って匂いを消す努力でもしてくるとしよう。
俺はミール達をリビングに残し、一人風呂場へと戻っていく。
それから少し経ち、リビングに戻ると昼食の準備は終わっており、皆揃っての食事が始まる。
今日のメニューは肉と野菜のスープに、薄味の野菜炒めとサンドイッチだ。
このメニューならばパンよりも米が欲しいところだが、まだ米は実っていない。
早く稲穂が頭を垂れないものだろうか。
そんな事を願いながらも、タリア達に午後からの予定の確認をしたり、ついでに必要な物などがないか?という確認をしながら昼食は続く。
昼食が終わり、食事中にしていた話の結果、王都に行くメンバーは、俺、ミリー、タリア、サラの3人と1匹となった。
ミリーは国王の娘なので当然連れていくとして、タリアは俺達が城に言ってる間、買い出しをしてくると言う理由で来る事になった。
そして最後にサラだが、家で留守をするディーとすぐに連絡が取り合えるので、急ぎの用などが出来た時の為の連絡役として連れていく。
因みに、俺の念話では、王都からオルリア村まで届かないのだ。
以上の3名と1匹が今回のメンバーであり、王都には、例の小屋へ転移して行くつもりである。
「ミリー、タリアさん、準備出来ましたか?」
「「はい」」
「それじゃ行ってきますね」
「ねぇ!僕には聞いてくれないの!?」
騒ぐサラを無視しながら左脇に抱え、留守番をするメンバーに挨拶して、俺は王都へとテレポートする。
テレポート先はもちろん、元ククリ達がすんでいたあの小屋だ。
小屋から出て、とりあえず中央広場まで移動し、そこでタリアとは別れ、俺たちは活気溢れる町中を歩きながら城へと向う。
そして城前に着くなり二人の門番に挨拶をし、ミリーが要件を伝えると、片方の門番が城の中へと消えて行く。
それから少しの間待っていると、門番がメイドを連れて戻って来た。
「お待たせしました。これより先はこの者が案内致します」
門番がそう言うと、横に立っているメイドは深くお辞儀をし、俺達の案内する。
サラを頭に乗せたまま、ミリーと二人で並び、静かにメイドの後をついて行く。
そうして俺達が案内されたのは、謁見の間ではなく、会議室だった。
「久しぶりじゃなナツキ殿、それにミリーよ」
「お久しぶりですアルベルト王」
「お久しぶりですお父様」
久し振りに娘の姿を見た父親は、娘の元気な姿に笑顔を浮かべていた。
そのまま数秒程の間、ミリーの顔を見た後、今度は俺の方へと視線を移す。
「して、今日はどういった要件で参ったのだ?」
「この度、オルリア村の温泉宿を開店する事になりまして、是非アルベルト王とコーネリア王妃のお二人を最初のお客様としてご招待しようと思いま「すぐに支度をさせる!」して、って、お待ちくださいアルベルト王!」
話しの途中で勢いよく立ち上がり声を上げたアルベルト王は、会議室から出ようとするが、俺はそれを止め、再び元の位置へと戻ってもらう。
「すまぬ、少し取り乱してしまった。いやな、前にタリアから温泉についての報告が届いておってな、その温泉の事はすごく気になっておったのだ」
「なるほど」
タリアさん、そんな報告してたのか。
「で、どうなのだ?温泉の効果はそれほどまでにすごいのか!?」
テーブルに両手をつき、身を乗り出しながら訪ねてくるアルベルト王。
そんなアルベルト王に、俺は自身で感じた効果と、皆から聞いた効果について、しばしの間、説明する事となった。
次回 第161話 オルリア村にご招待