第156話 一方その頃(コロン編)
時刻は5時23分、私はタリアさんの指示を受け、リビングでテーブルを拭いていた。
すると、ドアベルのなる音が聞こえ、同時にナツキさんの匂いを感じとった。
どうやら私のご主人様が家に帰って来たようだ。
ドアベルが聞こえてからほんの少し経つと、ナツキさんがリビングへと入って来た。
そして私の姿を見つけるなり、ナツキさんは私にこれからの事について話してきた。
どうやら私はこれからしばらくの間はこの家でメイドとして働き、このオルリア村に冒険者ギルドが建ち次第、そちらで働くようになるようだ。
私の記憶が正しければ、ランクC奴隷はご主人様の住む家、もしくは借りている宿の外には一人で出る事が許されず、常にご主人様と共に、もしくはご主人様が指名した自分より上の身分の者の同行を必要とされる、という法があったはず。
メイドとして働く間はまだ良いとしても、冒険者ギルドの方で働き始めるとしたら、その辺どうするんだろうか?
そんな疑問が浮かんだ私は、ナツキさんに尋ねてみようと思い、発言の許可を頂こうとそっと手を上げてると、ナツキさんは話したいことがあるなら自由に話して良いと言うと、首輪に備え付けられている制限情報の変更をしてくれました。
私はさっそく自由に出歩くことが出来ないという部分についての質問をしてみると、ナツキさんは「ああ、そういえばそうだったね」なんて言いながら、再び私の首輪に触れ、何かの変更をしたようでした。
「よし、変更完了!これで今後、コロンは自由に村の中を移動出来るはずだよ」
「え?そんな事が可能なのかにゃ!?」
ナツキさんの一言に驚いた私は、つい猫人族の口癖を出してしまいながら聞き返してしまった。
子供っぽいって思われたかな?
けど、そんな事よりも今は自由に行動出来るという事実の方が重要!
そんな、私にとって重要な疑問に、ナツキさんはさも常識のように答えてくれました。
どうやら例外として、ご主人様が手続きをする事で、ランクC奴隷でも個人的財産を持つ事や、最低レベルの人権を持つことが許されるそうです。
因みにこの事は、奴隷商で普通に説明される事らしいのですが、そもそも奴隷を持つような財産の無い私には、そんな事知りもしませんでしたよ。
私を奴隷登録する時も、そんな説明もありませんでしたし。
私の奴隷に対する知識だって、冒険者ギルドの受付をする上で、冒険者に説明するために必要となる最低限の事を教えてもらったものだけでしたし。
ともあれ、こうして私はこのオルリア村限定で自由に行動する事が許され、その上、働くことでお給金も貰える事となったので、いつか奴隷の身分から脱する事が出来るという現実に喜びを覚え、話を終えたナツキさんが、ミールさん達と一緒にお風呂へと入りに行った後、一人鼻歌を口ずさみながら、再びテーブルを磨き始めました。
しかし、後に私は、自分がただのランクC奴隷でない事と、自身にかけられた金額を聞き、奴隷の身からの脱却は不可能とも呼べるレベルだと思い知らされ、地に手をつき項垂れる事となるのであった。
ランクC奴隷(特殊)
名前 コロン
金額 1千万コル
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