第152話 [恵みの湯]の最初のお客様は誰?
投稿画面の途中で寝落ちしてて少し遅くなってしまいました。
すみません。
ハスマが王都に向け出発した後、とりあえずコロンには風呂場と客室の掃除をさせる事にした俺は、ミール達に留守を任せ、一人[恵みの湯]へと向かった。
そして[恵みの湯]に着いた俺は、まず従業員全員を、昨日話し合いをした場所へと集める。
昨日の[ひだまり]の件の事もあり、出来ればあまり皆の前に出たくはないという気持ちもあるのだが、そろそろこの宿を開店させ無ければならないので、そうも言ってられない。
恥ずかしい気持ちを抑えながら、俺は集まってもらった従業員達の前に立ち、話を始める。
「さて皆さん、今日は[恵みの湯]の開店にあたり、皆さんに3点程伝えておくべき事があります」
今日まで礼儀作法と清掃作業ばかりしていた従業員達だが、俺のこの発言により、開店が間近なのだと知り、その表情に緊張の色を走らせていた。
「まず最初に、この[恵みの湯]の一泊当たりの値段設定なのですが、1泊と朝食付きで1名につき1500コルと言う事に決まりました」
この世界の宿は、平均すると1泊朝食付きで大体200コルであり、それに比べて[恵みの湯]は一般的な宿に対し、7.5倍の値段設定である。
因みにこの値段設定については、ハスマと風呂に入ってる間に相談して決めたものだ。
ハスマ曰く「これ程の癒しの効果のある風呂に入り放題という宿ならば、1泊2000コルだとしても、金のあるやつらは利用しに来る!」との事。
俺としても、[恵みの湯]は元の世界における旅館のようなものなので、多少は高くするつもりではあったのだが、流石に2000コルはやりすぎかなと思い、更にハスマへと相談した結果、1500コルという事になったのだ。
そんな高額とも言える料金の事を伝えた俺は、続いて従業員達の仕事内容について話を始めた。
「次に、仕事内容についてですが、料理担当の方達以外は基本的にお客様の使う部屋の掃除と食事の配膳、そして日に2回お風呂場の掃除をしていただきます。
魔力の高い人は、お風呂場の換気扇を動かすための魔力の管理と補充もお願いしますね。
次に料理担当の人達についてですが、その名の通りお客様に提供する料理と食材の管理をお願いします。
食材は基本的に毎日十分な量を届けるように手配しておきます。
もし、足りないと思ったときは、早めに我が家にいるメイドの誰かにお知らせください。
そして最後にハキムさんとエイラさん、お二人は受付とここの経理をお願いします」
質問などは後で受けるつもりの俺は、一気に仕事内容について話し始めたのだが、アニータをはじめ、従業員達は自分する仕事についてメモを取っている。
きっとタリア達から礼儀作法の手解きを受けた時に、こうするように教えられたのだろう。
話を一区切りさせ、その様子に感心していると、一人の少女がジッと俺の方を見ていた。
ハキムとエイラの娘のサリーである。
「サリーちゃんは、パパとママのお手伝いをお願いね」
「はい!」
元気に返事をするサリーに、微笑みが浮かぶが、すぐにまた真面目な表情へと戻し、俺は従業員達に向かいここまでの事で質問は無いか?と尋ねると、従業員達からいくつかの質問が上がって来た。
それらの事は皆で話し合いって解決していき、[恵みの湯]を運営する上で必要な事は全て決め終えたと思えたところで、俺はようやく最後の報告をすることにした。
「さて、仕事内容についてはこれで大丈夫かと思いますので、最後の報告へと移りたいと思います」
最後の報告と聞き、先程まで会議モードで騒がしかった場の雰囲気は一転し、静かなものへと変わる。
「それは、この[恵みの湯]をご利用していただく、最初のお客様についてです」
この言葉に、従業員達の表情には疑問が浮かぶ。
きっと皆は何故最初のお客様についての話をするのだろうか?と思っているのだろう。
そんな疑問を打ち破り、衝撃へと変える言葉を俺は口にする。
「まだ相手の承諾はとれていませんが、記念すべき最初のお客様は、アルベルト王とコーネリア王妃をお迎えしようと思っております」
従業員達は予想外の大物の招待予定を聞き、これでもかという程に目を見開き驚いている。
静かになっていた場の雰囲気は更に一転し、不安と驚きの声が上がり始めた。
従業員達も、まさか王族を迎えるなんて夢にも思ってもいなかったのだろう。
そんな不安を少しでも取り除ければと思い、俺は話を続ける。
「落ち着いてください、一応最初のお客様と言う事と、相手が王族の方と言う事で、今回に限り、我が家から助っ人を出すつもりです」
もちろん助っ人とは我が家のメイド達の事である。
従業員達は、我が家のメイド達が元は城で働いていた事を知っているので、多少なりとも不安の色が取り除けたようにも思えるが、やはり相手が国で(表向き)一番身分の高い方々だと言う事もあり、完全には落ち着ける様子は無さそうだ。
しばらくの間、俺は従業員達が落ち着くのを静かに待つことにした。
次回 第153話 従業員達に安心を!