第151話 ハスマ、王都へ帰る
ゆっくりと温泉に浸かり、身体も十分に温まった俺とハスマは、風呂上がりに水分補給をする為にリビングへとやって来た。
リビングでは俺とハスマ以外のメンバーが集まっており、皆で床に座りお喋りしていた。
そんな中、申し訳なく思いながらも、タリアに飲み水を頼んだ。
タリアはすぐに水を用意し、それを受け取った俺とハスマは、一気に水を飲み干す。
渇いた喉に流れ込む冷たい水はとても心地よく、それはただの水であるにも関わらず、すごく美味しく思えた。
「ナツキ様、私達もお風呂に入ってきますね」
喉の渇きが潤せて満足している俺に、そう声をかけてきたミール。
そんなミールに俺は「ゆっくりしておいで」と答えると、女性陣は揃って風呂へと向いリビングを後にする。
それからしばらくの間、俺とハスマの二人でなんて事のない世間話をしながら時間を潰していると、風呂上がりの女性陣がリビングへと戻って来た。
全員がリビングに入ると、タリアは「すぐに飲み物を用意してきますので、少々お待ちください」と言い残し、メイド達を連れて調理場へと向かい、ミール達は椅子へと腰かけた。
そして待つ事数分、ミール達にはよく冷えてそうな水を、俺とハスマにはエマル特製のオリジナル茶が用意された。
俺とハスマはズズズと熱いお茶を、風呂上がりのメンバーはよく冷えた水をグイッと一気に飲み、それぞれがのどを潤す。
すると、エマルのオリジナルブレンドのお茶を初めて飲んだハスマは、その美味さに驚いていた。
「美味い…こんな美味い茶は初めて飲んだわい」
「メイドのエマルさんが趣味で作ったお茶ですよ。俺も最初飲んだ時は、その美味しさに驚きました」
「すまぬが少し分けてもらうことは出来ぬか?」
期待を含む声で頼んできたハスマだが、こればかりはお茶を管理しているエマルでなければわからない。
そこで俺は、ミール達と一緒に床に座り、風呂上がりの一杯を飲み終えて一息ついていたエマルへと尋ねてみた。
「エマルさん、ハスマさんがこのお茶が欲しいそうなんですが、有りますか?」
「…ある。マスターが気に入ってくれてたから、一杯作ってる」
どうやら在庫に余裕があるらしい。
ハスマも、エマルの言葉を聞いて嬉しそうにしている。
「なら、ハスマさんが帰るときに、お土産として用意してあげてください」
「わかりました」
その後、俺とハスマはお茶のおかわりを頼み、世間話の続きをしながらお茶を味わい、飲み終えたところでお開きとなり、各自部屋へと戻り、それぞれの時間を過ごす事となった。
メイド達は明日の朝も早いからと眠りにつき、ハスマは客室でこの村に移り住む方法を考え込み、俺とノアとシアは3人でちょっとアブノーマルに近いプレイを楽しんでいる。
そして未だに扱いを決めかねているコロンについては、以前のようにメイド達の部屋で寝させてもよかったのだが、何となく今はミール達と一緒に居た方が良いだろうと思い、今夜は隣の部屋で一夜を過ごしている。
その何となく思った判断のおかげか、ノアとシアの二人とのプレイに興じる為の防音魔法を使うまで、隣の部屋からは女同士の話で盛り上がりつつ、コロンを励ましているのが聞こえてきていた。
そんなそれぞれの一夜が終わり、翌朝。
朝食を食べ終えた後、ハスマが王都に帰るというので、レイに送ってもらおうかと提案したのだが、ハスマはゆっくり歩いて帰るからと、それを断る。
それならせめて、途中で食べるお弁当位はあった方が良いだろうと、俺はメイド達にハスマ様にお弁当を頼み作ってもらい、エマルのオリジナルブレンド茶と共にハスマへと渡した。
それらを受け取ったハスマは、どことなく軽やかな足取りで、王都へと帰って行った。
次回 第152話 [恵みの湯]の最初のお客様は誰?