第148話 俺はそんなの知らなかったんだ!~後編~
日付変更前までに間に合わなかった!
それ即ち、予定である火曜日にアップができていなかった事になる!
すみませんでした!!!
予定通りの話で終わろうとしたら、あまりにも短く、文字も少なくなったので、あれこれと話をつけたしていたら、結局いつもの倍以上の文字数に!
その結果、投稿まで遅くなってしまいました。
orz
次回予定のタイトル変更しました
コロンの現状が、いったいどういう理由からなのか、俺は静かにハスマの話の続きを聞いていた。
まぁ、大体予想はついているのだが、もしかしたら違うのかもしれないという小さな可能性を考慮しての判断だ。
しかし、やはりというべきか、ハスマの話した内容は予想通りの事だった。
マタタビ酔いしたコロンは、絡んだ客相手に、仕事上の愚痴を吐いていただけだった、しかし、途中から俺の事が話題に上がり始め、そこから我が家でメイドとして働かされたという話につながり、更にはその時に体験した我が家の生活環境の話までしてしまったようだ。
ただでさえ我が家の生活環境は、この世界の常識から見れば特殊なのだから、あまり言いふらして良い事ではない。
他にもオルリア村で暮らす人達は全員が奴隷だという事や、その人達の暮らしは奴隷だとは思えない様な暮らしをしている事など、オルリア村の様子まで話していたようだ。
まぁ、これに関しては、いずれ人が来ればすぐに知られてしまうような事であり、秘密にしている訳ではないから問題はないので、コロンの現状には無関係なはずだ。
「とまぁ、そんな事があったらしい。
仕事の愚痴までならワシも目を瞑ったのだがなぁ」
一通りの話しを終えたハスマは、冷めてしまっているであろうお茶を飲み、話しつかれた喉を潤す。
そして小さくため息を吐いた。
「流石にナツキ殿に関係してくる内容故、後日アルベルト王に報告したところ、どんな理由であれ、コロンのした事はナツキ殿の生活に何らかの影響を及ぼしかねない一件であると考えられ、コロンに与えられた罰は、全財産没収と身分をランクC奴隷へと降格、そして今後はその身と没収した財産の全ては、被害者であるナツキ殿のものとする事が決まったのだ」
「コロンさんも運が悪かったというべきか、はたまた酒癖が悪いというべきか」
ハスマの話を聞き、俺は同情の視線をコロンへと向けると、コロンは未だに顔を伏せたままですすり泣きをしていた。
「一応コロンから話を聞いた者達と店の者達には、絶対に人に話さぬようにと伝えてはおいたが、人の口に戸は立てれぬというからのぉ」
「ですよね。まぁ、今更それをどうこう言っても仕方ないですし、もし何か悪巧みを考えるような輩が出たとしても、とっ捕まえた後、生きている事を後悔させてやりますよ」
最後の部分については冗談のつもりで言ったのだが、ハスマから本気で止められてしまった。
その後、ハスマは奴隷商から預かって来たという[奴隷の首輪]を取り出し、俺はそれを受け取った。
本来なら未使用の物は奴隷商しか持つことは許されないのだが、今回は特別にと、アルベルト王が許可を出してくれたようだ。
俺は早速、コロンの首にソレを取り付け、主従契約を済ませる。
「さて、無事契約も終わったようだし、そろそろ手紙に書いておいた話をするとしようか」
「わかりました。ですがその前に……」
そう言って俺はメイド長であるタリアを呼び、コロンの身嗜みを整えて、その後はみんなの仕事の手伝いをさせておいてと伝えると、タリアは「畏まりました」と答えるなり、コロンを連れて調理場の方へと歩いていく。
二人の後姿を見送ると、俺はミールとエルの二人を交え、ハスマと冒険者ギルドをオルリア村に置く件についての話を始める。
ギルドの建設する場所、建設に必要な材木の準備、建設の依頼先、そしていつから建設を開始するのか?という、冒険者ギルド建設に関する話しをして行き、それらが決まったところで、次はギルドがこの村に、つまり俺の元へと納める税についての話となったので、そこはこの手の教育を受けていた、エルを頼りに進めていく。
そうして話はどんどんと纏まって行き、それぞれが思いつく限りの事を話し終えたところで、俺達は4度目となる紅茶のお代わりを飲み一息ついた。
そんな紅茶を飲む音だけが聞こえる静かな時、ハスマからこの村に来た本来の目的だと思われる話題が上がってきたを。
「ところでナツキ殿、せっかくこの村に来たわけだし、ついでにこの村の名物となる温泉とやらに入ることは出来ぬのか?」
「入れますよ。と言うより、今日は我が家に泊まっていってもらうつもりですから、その時にでも我が家自慢の温泉風呂を味わっていただければと」
手紙の内容から、俺はこれこそがハスマのこの村に来た一番の目的だと知っている。
確かに冒険者ギルド建設の案件も大事ではあるが、きっとハスマの中では温泉に入ることの方がさらに重要度の高い目的となっているはずだ。
そこで俺は再びタリアを呼ぶ。
コロンを連れて行ってからそこそこの時間も経っているので、流石にまだコロンの身嗜みを整えていたりはしないはず。
そんな事も考えているうちに、タリアはリビングへとやって来た。
「タリアさん、ハスマさんは今日我が家に泊まっていってもらうから、客室の方に案内を頼みます」
「畏まりました。それではハスマ様、お部屋までご案内致しますので、こちらへどうぞ」
タリアの案内に、ハスマがリビングを後にする。
リビングに残った俺達3人は、同じタイミングでここ数時間の間の疲れを吐き出すかのようなため息を吐いた。
これでとりあえずは一息ついたなと思っていた時、ミールから「そういえば」と声があがる。
「ナツキ様、一つ確認しておきたい事があるんですけど」
「何?」
そう言って手に持ったカップをテーブルに置き、ミールを見据える。
「すみませんが、その前にナツキ様の知っている[陽だまり]という言葉の意味を教えていただけませんか?」
「陽のあたる暖かな場所って事でしょ?春先にそんな場所で寝たら気持ち良いんだよね」
さも当然のように答える俺を見て、ミールは小さくため息を吐いた。
俺にはその理由が判らず、尋ねてみると、驚きの答えが返ってきた。
「やはり、ナツキ様の知っている[陽だまり]とこの世界で使われている[陽だまり]は違っているようです」
「どういう事?」
「この世界で一般的に知られている[陽だまり]なのですが、実は、動物達が交尾を求めて集まる場所という意味なんです」
……はい?
驚きの内容に、一瞬思考が停止してしまった俺だが、次の瞬間に真面目な顔で、従業員達の住む建物の名前として提案した時の事を思い出した。
俺がこの世界における[陽だまり]の意味を知らないなんて事など、従業員達が知っているはずは無い。
あの時、誰一人として[陽だまり]という言葉に反応しなかったのは、きっとタリアの教育の賜物であり、内心は驚くか、呆れていたに違いないだろう。
そう思った瞬間、俺はミールたちに「ちょっと行ってくる!」とだけ伝え、リビングを飛び出し、玄関から外へと出る。
そして従業員達が居るであろう[やすらぎ]へと向かい全速力で駆けていく。
[陽だまり]という言葉の意味など知らなかったんだ!と心で叫びながら。
次回 第149話 エマルに対する新たな認識