第14話 守護神
馬車に揺られながら、俺達は北の山を目指していた。
道中、ミリーエル王女が王都の町の様子等を聞きたいと言われ、俺達は町の雰囲気の事や、利用している宿のアロンやロークの事を話していた。
話を続ける間、俺は気づけばいつもの口調で喋ってしまっていたのだが、その事に俺は気づいていなかった。
それでもミリーエル王女様は俺の言葉遣いを気にする事も無く、ただ俺の話しを聞いて楽しんで貰えているようだ。
話が一通り終わる頃、目的の山の近くまで来ていた・・・
「ところでミリーエル王女様、夢で見たっていう「私のことはミリーとお呼びください」」
「へ?」
俺の話を中断させ、あろう事か気安く愛称で呼べとおっしゃりましたよ・・・
一国の王女様相手にそんな事したら不敬罪とかになっていしまうのでは?
そう思ったが、本人が呼んでくれといってるんだ、答えるべきだろう
「えーと・・・ミリー王女様?」
「む~・・・まぁ仕方ありません、あとは様をのける事で手を打ちましょう、あと喋り方も普段通りでいいですよ?
無理しているのでしょ?」
どうやらまだ不満の用だ・・・
しかも、無理して喋ってたのばれてたわ
「は、はぁ、では普段通りにさせてもらいます」
なるほど、俺がミール達にしたお願いはこういう気分に鳴るのか・・・
たしかに身分が上の人にお願いされたとしても、気安く名前を読んだり、気軽に話しかけ辛いもんだ。
とりあえず、ごめんな、と心で思いながらミールの頭を撫でておいた。
撫でられてるミールは、「・・・?」と疑問を浮かべ、首を傾げ俺を見ている。
ノアとシアは撫でられているミールを見て、うらやましそうにしていた。
「ナツキ様は奴隷の身分の者でも優しく、そして大事にしているのですね。ミールさん達の身なり、それに髪質や肌も綺麗ですし」
俺達を見ていたミリーエル王女が優しい顔をしながら言う。
「そりゃもちろんですよ、仲間でもあり、家族みたいなものだと俺は思っていますからね」
「あ、ありがとうございます。あの、私なんかより、ミリーエル王女様の御髪やお肌のほうがもっとお綺麗だと思います!」
「ありがとうございますミールさん、あと、ミールさん達も私の事ミリーと愛称でお呼び下さい。」
「で・・・ですが・・・」
そう言いながら俺の顔をチラチラ見ている。
ふむ・・・さすがにこれはミール達からすれば無理難題な事かもしれない・・・が、ここはミリー王女からのお願いでもあるわけだ
そう考えながらミール達にを見ながら頷いておいた。
それを見たミール達は諦め、ミリー王女と呼ばせて頂くようになった。
「わ、分かりました。では恐れ多い事ですが、私共もミリー王女とお呼びさせて頂きます」
話が纏まった?ので本題へ戻そう。
「え~と、話をそろそろ戻して、ミリー王女、昨日夢で見たという守護神様の事を・・・」
「はい、夢の中で私は暗闇の中に私は立っていました。
すると突然私の前に赤々と燃える一つの炎が現れたのです、私にはなぜかその炎が守護神様と理解する事ができました。
すると守護神様は言ったのです「助けて、このままでは闇に支配されてしまう・・・」と、その後すぐ私は意識が無くなっていくような感覚に襲われたところで目が覚めたのです」
「闇に支配されてしまう・・・か」
「そして私がその様な夢を見た事をお父様に相談すると、お父様はすぐにギルドへ依頼を出したのです」
「それでなぜか俺がこの依頼に指名された・・・と、ハスマさんにも言ったんだけど、俺冒険者になってまだ数日ですよ?そんな俺に王様からの依頼なんて重要な事させていいのでしょうかね、あははは」
俺は苦笑いしながらも思った事を漏らしてしまっていた。
「ハスマ様がおっしゃっていました、ナツキ様は奴隷の者にも優しくて、曇りの無いまっすぐな瞳をお持ちだと、それにあのゴブリンジェネラルを御一人で倒せるほどの強さを持っているからこそ、ハスマ様はこの依頼にナツキ様を選んだのではないでしょうか?」
「ハスマさんがそんな事を?」
「私もこうしてナツキ様本人とお話して、そしてそちらのミールさん、ノアさん、シアさんの瞳が活き活きとしてるのを実際に見て、私もナツキ様なら信用に足る人物だと思っているのですよ?」
「あははは、まぁその信用に答えれるよう、頑張りますか」
正面切って信用しているなど言われて照れたのを誤魔化すように、苦笑を浮かべ答えていると、護衛の兵士が山の麓に着いた事を報告してくれる。
馬車から出ると、そこは山に続く森の入り口だった。
これから先は馬車では行けないので、徒歩による移動となるらしい。
そして、守護神様を祭る祭壇は山の頂上付近にあるらしく、今日の明るい内に山頂に到着は無理なのだとか。
なのでこの山の途中にある山小屋で一夜過ごし、明日の朝早く出発して昼前には辿り着けそうだと、護衛の兵士が教えてる。
現在は昼前、これから山を登り始め、休憩しながらの進行となり、山小屋に辿り着くのが夕方頃になるそうだ。
山小屋までの道中、モンスターを警戒しつつ、先頭を俺と兵士二人、中央にミリー王女、その左右に兵士を一人ずつ配置し、殿しんがりをミール達3人という陣形で進んでいく。
途中、一角ラビットやボアが襲ってきたが、ノアとシアが魔法であっさりと撃退していく、そしてそんな彼女達の戦いを見ていて、ふと思い出した。
(そういえば、魔法の練習し始めた時から全然ステータスUPして無かったな・・・
まぁ、モンスターを跡形も無く吹き飛ばしてしまってたから、仕方ないっちゃ仕方なかったんだが・・・
とりあえず、ノアとシアの魔法なら消滅させるほどにはならないし、道中のモンスターからこっそりと奪っておくか)
「あの、ナツキ様は倒したモンスターの方をやたらと気にしている様ですがどうしたのでしょうか?」
俺がアブソープを使いステータスを奪ってる所をみた、ミリー王女はミールに尋ねた。
「え!?えと・・・ちゃんと倒せたかの確認じゃ・・・ないでしょうか?」
「・・・・」
ミールがそれらしい言い訳をしてくれたけど・・・うん、めっちゃ気になってるって目だねあれ・・・
「ほら、一応確認をちゃんとしておかないと、もしもと言う事があるかもしれないからな、確認は大事なことなのですよ」
苦しい言い訳にしか聞こえないが、これ以上に良い言い訳が思い浮かばない!
「なるほど、さすがは危険と隣り合わせに生きる冒険者・・・ということにしておきましょうか」
笑顔でそうは言っているけど、信じていないのは明らかですね、わかります。
そして信用に足る人物という言葉がそろそろ撤回されそうです。
こうして、山道を進み、日が暮れはじめたころ俺達は山小屋に辿り着いた。
山小屋の中、部屋の隅に用意されていた布で仕切りを作り、女性と男性とに部屋を分け終わると、パンに干し肉とレタスを挟んだサンドイッチを皆に配る。
それで腹ごなしが済むと、明日に向けて今日は早めの就寝となり、明日は日が昇り始めるころ出発という事となった。
そして翌日
日が昇り始めるより少し前に起床すると、俺達は出発の準備を済ませ、日が昇り始めたのを確認して、再び祭壇に向って歩き始めた。
道中、また数匹のモンスターが出てきたが、今回はミールにも戦ってもらおう
というのも、念のためノアとシアのMPを温存させておきたかったからだ。
暫く進んだところに、開けた場所に石の柱が立ち並び、その奥の祭壇で、弱々しく燃える炎があった。
「ここが、守護神様の祭ってある祭壇になります、そしてあちらで燃え続けている炎こそが守護神様だと言われているのですが・・・やはり何かあったみたいですね、本来もっと力強い炎だったはずですが・・・」
弱々しい炎を見たミリー王女の顔が困惑の色を浮かべていたその時、突如目の前で激しく光が弾け、眩い光にたまらず目を閉じた。
次に目を開けると、俺とミリー王女だけが先程いた場所とは違う、周りが暗く、弱々しい炎が燃えているだけの空間に立ってた。
そして、辺りを見回していると、弱々しく燃え続けていた炎から小さな光が現れれ、優しくも力強くもあるような女性の声が目の前の光から聞こえてきた。
『よく来てくれた、火の国の巫女よ、そして異世界より生まれ変わった者よ』
「異世界より・・・」
光りから聞こえた言葉にミリー王女が反応し俺の方を見るが、すぐにまた光に視線を戻した。
『我は火を司る精霊の王、この世界全ての火の力の源となる存在、そなたは我の声を聞く巫女か?』
どうやら守護神というのは4大元素の力を司る精霊の王だという。
その精霊王に向けミリー王女は名乗り始めた。
「これは申し遅れました、私は火の国フレムスト王国の王女ミリーエル=フェーン=フレムストと申します。
火の精霊王様のお声を夢で聞き、この地へと参りました」
『よくぞ闇を払う力を扱える者を連れて来てくれた、感謝する』
「あの・・・それはやっぱり、俺のことかな?」
なんとなくだが、精霊王がこちらを見ている気がする。
炎に眼があるわけではないが、なんとなく視線を感じたのだ。
『ああ、運命の女神様からナツキ、そなたの事は聞いている。この世界に生まれ変わったそなたに、我らそれぞれの力を司る精霊王は力になって欲しいと頼まれている。』
「あははは、あの女神様にはホント感謝してもしきれない気がしてくるよ」
俺と精霊王の話しを聞いていたミリー王女は話しに着いてこれないらしく驚き固まっていた。
「あ~えとねミリー王女、今聞いた通り、俺はこの世界に転生させてもらったんだよ、だけどこの事は秘密にしておいて欲しいんだ、一応ミールやノアとシアには話しているんだけどね。」
「わ、わかりました。その事については後日、詳しく聞かせて頂きます。」
「あははは」と苦笑いを浮かべつつ俺は「この件が終わってからね」と答えておいた。
次回 第15話 対峙
なかなか書き直しが進まず、ペースが遅いままですが
どうかお許しください!