第147話 俺はそんなの知らなかったんだ!~前編~
すみません、体調不良につき、途中で区切って前後編させてもらいます。
誤字を一部訂正しました。
それと次回の148話は 22日火曜日 にアップします。
俺は従業員達全員に今日は休むようにと伝えた後、ミール、エル、レイの3人を連れて我が家の前へと戻って来ていた。
カランカランとドアの上部に吊るされている木の棒同士が当たる音を立てながらドアを開くと、そこに見覚えのない靴があるのを見つけ、我が家に客が来ている事を知る。
靴は男物であり、それを見て俺は、ふと昨日タリアから受け取った手紙の事を思い出した。
「(そういえば手紙にはハスマさんが近々来るって書いてたが、もしかして今日来たのか?)」
そんな事を思っていると、後から入ってきたミールにより、家の中にいる客の正体が伝えられた。
「どうやらハスマ様と、コロンさんが来ているようですね」
「コロンさんも?」
ミールによるとハスマだけではなく、冒険者ギルドの受付嬢であるコロンも来ているらしいが、どうみても靴は1足しかない。
どういう事だ?
「お二人の匂いがしますし、間違いないかと」
俺はすぐに探知スキルで確認してみると、正面の扉の先、つまりリビングに二人の反応があり、調理場の方には7人分の反応がある。
我が家にいるメイドは、新しく増えたティリアを入れて全部で7人。
つまり調理場の7つの人の反応がそうであり、このリビングにいる二人の反応は客という事になる。
と言う事は、やはりミールの言う通り、コロンも来ているのだろう。
じゃあなぜ靴がないのか?まさか土足で上がってるなんて事は……無いな。
以前にも一度メイドとして一日働いた経験のあるコロンが、我が家の土足禁止を知らない訳がない。
「まぁ、リビングに行ってみればわかるか」
ここで考えていても仕方ないと、俺達はさっさと靴を脱ぐと、リビングへと続く扉を開いた。
「8日ぶりじゃな」
リビングには、椅子に座り、お茶の入った湯呑を両手で持ったハスマの姿があり、そのハスマの足元には、三角猫耳をペタンと倒し、貫頭衣姿で涙目なコロンが正座していた。
「お久しぶりですハスマさん。ところでそっちのコロンさんはなぜそんな姿を?まるで奴隷にでもなってしまったような…」
俺の言葉がトドメになったのか、コロンの涙腺は決壊し、床に伏せ大泣きし始めてしまう。
一体どうしたのだろうか?
「あ~これはだな…」
その後ハスマより語られたのは4日前の夜の事だった。
その日、ハスマは晩御飯を食べようと酒場に行くと、そこで酔っぱらい状態のコロンが、空のグラスを片手に持ち、他の客に絡んでいる姿を見つけたらしい。
流石にギルドの受付嬢ともあろうものがあのような醜態を晒しているのを放置するわけにもいかず、ハスマはコロンの首裏に手刀をあびせて気絶させ、コロンに絡まれた客達には謝罪してまわったようだ。
何故こんな状況になったのかと、ハスマはコロンを背負ったまま店の者に話を聞いたところ、どうやらコロンは普通のエールを注文していたのだが、最近働き始めた新人のウェイトレスが間違え、他の猫人族の客が頼んでいた少量のマタタビ入りのエールとコロンの頼んでいた普通のエールを逆に運んでしまた事がそもそもの原因らしい。
そうとは知らず、コロンは受け取ったエールを一気に半分ほど飲み、勢いよくテーブルへと倒れ込んだらしい。
そして数秒後、ムクリと身体が起き上がったと思うと、半分ほどのこったエール入りのグラスを片手に、周囲テーブルを渡り歩きつつ、数人の客に絡んでいった。
それから暫く経ったころに、ハスマが店へとやって来た、と言う事だった。
これだけならば、コロンが今のような状況になる事は無いのだが、まだこの話には続きがあるらしく、そこにコロンの現状へと繋がる本当の理由はありそうだ。
次回 第148話 俺はそんなの知らなかったんだ!~後編~