第146話 従業員達の住む建物名は…
「さて皆さん、次は皆さんの住んでいる建物の名前を決めますよ」
拍手と歓声が起こる中、俺は続いて従業員達の住む建物の名前を決めようと、少し声を張って発言する。
すると従業員達は一斉に静かになり、全員の視線が俺へと集まる。
「決め方は先程と同じなので、もう一度同じように名前の案を言っていってください」
そう言い、俺は新しいメモ帳を取り出し、書き込む準備を始める。
そして順番に考えていた名前を提案していってもらった結果、4つの名前が候補に挙がった。
・アトレア
・やすらぎ
・フラベルン
・陽だまり
1番目の候補の[アトレア]とは一体何なのだろうかと疑問に思っていたのだが、提案したグループの代表の男の説明によると、この世界の星空で一番明るい星の名前からとったらしい。
2番目の候補の[やすらぎ]だが、これは俺が再び提案したわけでは無い。
俺が提案したのは、昨夜、寝る前になって従業員たちの建物の名前を考えていなかった事に気づき、必死で考えて思いついた[陽だまり]の方なのだ。
一応、従業員達にとって居心地の良い場所という意味が込められている。
この[やすらぎ]を提案したグループの代表はアニータであり、そのアニータによると、俺と同じような考え方で、従業員達にとってやすらげる場所となるように願っての名前らしい。
次に3つ目の候補[フラベルン]、これも知らない単語だったのだが、提案者によるとフラベルンとはこの世で最も美しく気高い花の名前らしい。
そして4つ目が、俺の提案した[陽だまり]である。
「それじゃこの4つの中から選びますので、自分が良いと思う名前で挙手をしてください。
まずは……」
温泉宿の時同様、候補の名前を順に読み上げ、それぞれの名前の横に挙手した人数を記入していく。
そうして4つ全てを聞き終えた結果、なんと[やすらぎ]と[陽だまり]の賛成数が同じ9となり、もう一度多数決を採り直す事となった。
「[やすらぎ]と[陽だまり]が同数になったので、もう一度多数決をしたいと思います。
ですが、今回は先程とは違って、自分の提案した名前に挙手をしても良い事にします。
どちらがいいか、5分程考える時間を設けますので、各自考えて下さい」
俺はそう言うと、自分もどちらにしようかと考え始める。
尚、俺の背後にいるミール達は、開始からずっと傍観者となっている。
というのも、流石にこの3人を参加させると高確率で俺の案に手を上げそうな気がするからだ。
本人の意思がどうであれ、それはなんか不正をしている気がするので、参加させるわけにはいかないのだ。
それが俺の勝手な思い込みだとしてもだ。
そんなわけで俺は相談すら持ちかけず、ミール達に5分経ったら教えてくれと伝え、静かに目を閉じ、考え始めた。
「それじゃ皆さん、5分経ちましたので、最終決定の決を採りたいと思います」
悩み続ける事5分、ミールに呼ばれて時間が来たのを知った俺は、従業員達の方に向かい、多数決の再開を伝える。
そして最後の多数決が始まり、ついに従業員達の住む建物の名前が決定した。
[やすらぎ] 挙手26人
[陽だまり] 挙手1人
「ということで、本日より皆さんの暮らす建物の名前は[やすらぎ]に決定となりました」
この結果発表を聞き、誰しもが納得した表情をしているところを見るに、反対の意見等はなさそうで何よりなのだが、俺としては、何故従業員全員が[やすらぎ]に挙手をしていたのかという疑問が残っている。
その理由を知ったのは、話し合いが終わり、解散して家に戻った後でミールからの質問を聞いた時であった。
次回 第147話 俺はそんなの知らなかったんだ!~前編~
なんか、無理やりまとめた感があるのは見逃してください!