第145話 決定!温泉宿の名前は… ~後編~
「他に、案はありませんか?」
温泉宿の入り口から入ってすぐ左側、そこにはイスとテーブルが幾つか置かれたスペースがあり、そこで俺達はこの温泉宿の名前の案を出し合っていた。
このイスやテーブルを置いたスペースは、俺がこの温泉宿を作っている時、元の世界の旅館にはこういうスペースがあったな、なんていう、俺の勝手な旅館のイメージを再現し、作られたスペースだったのだが、今はその勝手なイメージから作り上げたスペースでは、こうして従業員たちと話し合いをするスペースとして役立っているので、作っておいてよかったと思えた。
「じゃあ、この中からこの温泉宿の名前を選びたいと思います」
そう言って、俺は手元にある紙に書かれた、8種類の名前へと視線を向ける。
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・オルリア温泉(3組)
・恵みの湯(恵みの宿)
・精霊王の恵み
・やすらぎ
・この世の楽園
・憩いの里(2組)
・夢のほとり
・大地の息吹
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従業員は全員で26名なのだが、数人でグループになって一緒に考えていたり、名前が被ってしまったりしていた為、温泉宿の名前の案は半数にも届く事は無かったのだが、あまり多すぎたらそれはそれで面倒だったと気づいた俺は、今さらながら安堵の息を吐いた。
その後、手元の紙に書かれている名前の中から選ぶ為、この後に行う多数決をする為の参考になる様、提案した人にその名前を選んだ理由を聞いていったり、自分も提案した名前についても説明をしていく。
因みに、俺の提案した名前は、ティリアのおかげ決まった[やすらぎ]で、この[やすらぎ]という名前には、この温泉宿で、温泉と宿泊で一時のやすらぎを、という意味が込められていると説明した。
手元の紙に書かれた8個全ての名前の由来について聞き終えた俺は、とりあえずこれらを半分まで絞ろうと、多数決を採る事にする。
参加するのは、一緒に来ているミール、エル、レイを除く、従業員と俺の計27名だ。
「選考方法は、多数決にしますが、ルールとして、自分の提案した名前には挙手しないようにしてください。
では、まず最初は……」
俺は上から順に名前を読み上げていき、その結果、挙手の数が多かった次の4つが残った。
・オルリア温泉
・やすらぎ
・恵みの湯
・夢のほとり
「多数決の結果、この4つに絞られたようですね。
さて皆さん、5分程時間を置きますので、その間に今度はこの4つの中からどれにするか考えてください」
流石にすぐに決を採るわけにもいかず、ほんの少しの時間ではあるが考える時間を取ることにし、俺自信もどれが良いのかとい、もう一度これらの名前の由来について思い出していく。
「(さて、どれもこの温泉宿には似合いそうな名前だし、どれにしようか…)」
5分という時間はあっという間に過ぎてしまったが、ギリギリの時間でなんとか俺も一つの名前を選ぶ事が出来たのだった。
そして再び多数決の時がやって来た。
「じゃあ5分経ったので、この温泉宿の名前を決定する為の決を採りたいと思います!」
手元にある紙の名前を順に読み上げながら再び決を採っていき、ついに温泉宿の名前は決定した。
選ばれたのは、27人中15人が挙手した[恵みの湯]だった。
「それでは本日より、この温泉旅館の名は「恵みの湯」とします!」
この一言に、従業員一同から拍手と歓声が巻き起こった。
次回 第146話 従業員達の住む建物名は…
念のために言っておきます。
コメントで頂いていた[やすらぎ]という名前ですが、温泉宿の名前として選ばれませんでしたが、無駄にする気はありません!




