第142話 安らげる場所
タイトル変更しました。
それに伴い、141話の次回予告タイトルも訂正しました。
「おかえりなさいませご主人様」
我が家の玄関を開くと、そこにはメイド一同が揃って出迎えようと待っており、メイド長であるタリアが代表して俺達に出迎えの言葉を掛けた。
「ただいま。タリアさん、こっちは見てわかると思うけど、有翼人族で、名前はティリア。
明日からここでメイドとして働く事になったから、我が家での仕事の方を教えてあげて」
「畏まりました」
「ティリアです。ご主人様には多大なる恩があり、それに報いる為、私は持ちうる技術の全てを掛けて仕えるつもりです。
皆様、どうぞよろしくお願いいたします」
ティリアは一歩前に出ると、そう言いながら両手をお腹に添え、タリア達に向けて深く頭を下げた。
「私はメイド長のタリア、そしてこちらが…」
メイド長であるタリアが代表し、ティリアに我が家のメイド達を次々に紹介していく。
紹介された人も、ティリアに向けて一言挨拶をしていき、全員の紹介が終わったところで、タリアは「ところでご主人様」と言い、俺の、正確には俺の肩に担がれ、グッタリしているミールへと視線を移す。
「俺の心の癒しの為の犠牲となっただけだ」
「?」
タリアは一体何が?と言いたげに、首を傾げる。
「とりあえずお風呂の準備を頼む、食事はその後に」
「畏まりました。ココさんとアルカさんは、直ぐにお風呂の支度を」
「はいにゃ!」
「わかりましたなの!」
指示を受けたココとアルカの二人は元気よく返事をするなり、風呂場の方へと向かい歩き始める。
まぁ、現在の我が家は常時温泉を引いている状態なので、準備といっても精々が人数分のタオルと着替えを用意する程度である。
「残った皆さんはすぐに食事の準備に取り掛かってください。私もすぐに向かいます」
「「「はい」」」
サティア、エマル、クイクリの3人も指示を受け返事をすると、スタスタとリビングへと歩いて行く。
3人の後ろ姿を見送り、その姿が見えなくなるとタリアは再び俺の方へと向き直る。
「それではご主人様、お食事の準備は、30分も後に出来上がるように致しますので、それまでごゆっくりしてきてくださいませ」
「ありがとう」
頭を下げるタリアに礼をいい、俺達は風呂場へと向かう。
もちろんそのメンバーにティリアも含まれている。
ティリアはすでに奴隷としての契約をしているし、自分でも夜伽云々言ってたから、一緒に風呂に入るくらいは問題ないはずだ。
……無い、よね?
そんな事を考えている内に脱衣所へと到着した俺は、担いでいたミールを降ろし、平静を装いながら服を脱ぎ始た。
脱衣中にコソッと周囲を覗き見ると、ミール達はもちろんの事、ティリアも平然と服を脱いでいる。
どうやら問題はなさそうだ。
全員が服を脱ぎ終わり風呂場へと入る。
まずは体を洗おうとしたところで、やはりと言うべきか、予想していた事だが、ティリアが俺の背を流しますと言い出したのでその申し出を受け、気持ちの良い一時を味わせてもらった。
とは言っても、男の象徴だけは断っている。
何故断ったのかと聞かれると、何となく断らないといけない気がしたからとしか言えないのだが…
兎に角、俺の勘が断れと告げたのだ。
体を洗ってもらい、スッキリしたところで、俺は先に温泉の満たされた浴槽へと体を浸し、身体に溜まっている旅の疲れを癒しつつ、視線の先に広がる、女性達が楽しそうに仲良く体を洗いっこする姿を見て、目に保養を与えていた。
心安らぐ一時である。
次回 第143話 1週間ぶりのオルリア村