第137話 報酬と別れ~後編~
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ギルドマスターの部屋にやって来た俺達は、ゴルドの座る正面のソファーへと腰かけていた。
「まずは、盗賊討伐の報酬だ」
そう言って、重量感ある音と共にテーブルの上へと、中身がどっさり詰まっていそうな革袋が置かれた。
その音と革袋の見た目に、その中身への期待が膨らみ、俺のテンションは現在大幅アップ中である。
「中に金貨100枚入っている、確認してくれ」
金貨1枚が1万コル。
つまりこの中身は100万コルという事になる。
その高額な報酬に驚いたが、ゴルドによると、Aランクパーティでも対処出来なかった事でこの一件はSランク扱いとなり、それに伴い報酬もアップし、100万コルとなったようだ。
「ギルドが報酬を誤魔化す事はしないと信じているので、数える必要は無いでしょう」
報酬額に内心は狂喜乱舞状態だが、それを表面に出さにようにと気を付けながら目の前に置かれている革袋を手に取とる。
だが、その革袋の重量感を感じた瞬間、冷静という名の仮面はポロリと剥がれてしまう。
『ナツキ、顔がにやけてるよ』
『あ!』
サラから念話で指摘され、すぐに仮面をかぶり直すが、既に手遅れ。
正面にいるゴルドにはバッチリと見られてしまっていたようで、その顔が少し笑っているように見えた。
少しだけ恥ずかしさを感じた俺は、小さく咳払いをし、さっさと報酬の入った革袋をアイテムボックスへと仕舞い込んだ。
「さて、報酬は頂けたので、俺達はこれで」
報酬は貰えたし、気恥ずかしいのでさっさと帰ろうと思い、俺はそう言って席を立つ。
「まてまて、ワシは最初に言ったであろう?まずは、とな」
そういわれ、思い返してみると、確かにゴルドは「まずは」と最初に言っていたのを思い出し、俺は再びソファーへと腰かける。
するとゴルドは懐から一通の手紙を取り出し、俺はそれを受け取ると、手紙は仄かな温もりを帯び、甘い香りを放っていた。
「今朝報告書を持って行った時に、フローリア王女から預かったのだ。帰りにでも読んで下さいとおっしゃっていたぞ」
なるほど、つまりこの甘い香りはフローリア王女の使っている香水の香りなのだろう。
だが、この温もりの方は間違いなくゴルドという、厳つい顔のオッサンの体温による温もりである。
そんなフローリア王女の香水も台無しな事実に悲しさを感じつつ、俺は手紙を丁寧にアイテムボックスへと仕舞いこんだ。
「わかりました。後でゆっくり読むことにします」
「うむ。それからもうひとつ。
リカルト王からウンディーネ様に」
「あら、私にですか?」
突然名前を呼ばれ、エルに抱かれていたディーが反応する。
「【次の水精祭こそ、必ず見付けてみせます。】だそうです」
「わかりました。楽しみにしていますと伝えておいて下さい」
「はい。必ずやリカルト王に伝えておきます」
そう言い、ゴルドはディーに向け頭を下げ、再び俺の方へと視線を移した。
「ワシからの用件は以上だ。
ナツキ達はこの後すぐにこの町を発つのか?」
「はい」
「そうか、ならば門まで見送るとしよう」
その言葉を合図に、俺とゴルドはソファーから立ち上がり、皆揃って冒険者ギルドを後にした。
次回 第138話 いざ帰路へ!