第128話 赤(サラ)と青(ディー)と白(レイ)
一部、設定がおかしな部分がありましたので訂正しました。
(水の国の王族にはすでに女神様の件や、自分の事を話し終えていたのに、して無い事になっていた部分)
9月16日変更部分
131話書いてるときに、ティリアの存在が消えていたことに気付き、この128話、129話、130話の一部を訂正しました。
「『おいサラ!なんだよこれ!こんなスキル手に入れた覚えねぇぞ!?』」
「『僕に言われても知らないよ!気づいたら有ったんだからさ』」
手に入れた記憶の無いスキルに、俺は困惑しながらサラに念話で問い詰めていたのだが、当然だろうがサラも分からないらしい。
「ナツキのスキルがどうのと聞こえたが、どういう事だろうか説明はしてもらえるのだろうか?」
ゴルドの声に振り向くと、厳つい顔が間近で睨み付けていた。
マジ怖い!
「あ~、ちょっとその…」
厳つい顔に責めよられ、俺は視線を泳がせながらもなんと答えようかと思案する。
正直に説明するとなると[世界を蝕む闇]の事についても話さなければならなくなる。
そうなると今度は女神様の事や俺が異世界人だという事も説明しなければならなくなるだろう。
なのでここは適当に誤魔化すしかない。
だがどう誤魔化すのか?
仮に、敵を引き寄せてしまう様なスキルがあり、それのせいだと言ったとしても、俺は数日前からこの国に居たのになぜ今になってという事になる。
と言うかそもそも、明らかに俺も知らなかったような素振りをゴルドの前でしてしまっている。
どうしたものだろうか…
必死に考えを巡らせ続けている間も、ずっとゴルドに睨まれ続けている。
おかげで全く良い考えも思いつかない。
そもそもこの状況を打開できる嘘があるのかどうかすら分からない。
そしてついに俺は考えるのを諦めた。
もういっそ全部話してしまおう。
そもそも、隠している理由だって周りに知られて目立ちたくないからだという理由だっただけであり、別に誰にも話さない様にと言われている訳では無い。
そう思った瞬間、きっと気持ちが前向きになったのだろう。
おかげで余りにも単純な事に気が付いた。
リカルト王やフローリア王女、そしてマルガにはもう話しているから、後はアルベルト王、そしてフレムストとアクルーンのギルドマスターに話しておけば、今後、[世界を蝕む闇]に関連する事件が起こってもありのままに報告する事が出来る。
他に知られぬよう口止めしておけば良いだけだ。
両国のギルドマスターと国王が真実を知っていれば、今後に何かと役立つ事もあるだろうし。
考えが纏まると同時に、先程まで反らしていた視線をゴルドに向けると、至近距離にあったゴルドの顔が離れていき、再びソファーへと腰かけた。
「ゴルドさん、これから話す事はここに居るゴルドさんとティリア以外、リカルト王、フローリア王女、そしてフローリア王女の専属メイドのマルガ位しか知らない、俺の秘密についての事です。
日を改めてフレムストのアルベルト王や、ギルドマスターのハスマさんにも話すつもりですが、それ以外の人には決して知られる事の無いようにお願いします」
ゴルドは「ほう…」と漏らし、真剣な面持ちになる。
続きを話し始めようとしたのだが、今この街に向かって来ているモンスターの事も気になっていたので、先にそちらの対処をして置く事に。
「ですがその前に・・・サラ、ディー、レイ、悪いんだけどここに向かって来ているモンスターの対処を頼む」
「え~面倒くさいよ~」
俺のお願いに真っ先に反応したのはサラだったが、そんなサラに向かいディーは「そんな事言ってると、ヌシ様が実力行使にでちゃいますよ?」と脅し始めた。
俺って、そんな風に思われてるのだろうか?
まぁ、多分しただろうけどね!
ディーの説得を聞いたサラはやる気になったらしいが、その体はプルプルと小刻みに震えていた。
そんな2匹とは違い、レイは最初から殺る気満々の様だ。
ここに帰る途中に襲って来ていたスカイファウル食いまくってたし、食後の運動でもしたいのだろう。
サラは震えながら、ディーとレイは楽しそうな表情で「行ってきます」と言い部屋を出て行った。
「主様、私達も向かった方が良いでしょうか?」
「そうだな、サラ達が討ち漏らした敵が来たらいけないし、念の為に皆は門の前で守りを固めておいてくれ」
指示を聞き、ミール達は返事をしてから部屋を出て行った。
これでもうモンスターの襲撃の事は気にする必要は無いはずだ。
「あの、私は如何致しましょうか?」
一人、指示が貰えなかったティリアが訪ねて来るが、流石に助けてすぐに何かをさせるなんて事は出来ない。
なのでティリアには俺の隣に座るようにと答えるが…
「奴隷の身である私が皆様と同じ高さに座る事など許されるはずが---」
「あ~そういうのは良いから、座って座って。
座ってくれないと、俺、土下座してお願いするよ?」
やはりと言うべきか、ティリアの返事は拒否だった。
しかしそんな事は俺もすでに予想済み。
ティリアの言葉を遮り、ある意味、脅しのような説得をする。
これにティリアは「そんなことをさせるわけには!」と、説得?に応じ、渋々と俺の隣へと腰かけたのである。
「さて、これでゆっくりと話をできますね」
「あ、ああ。いや、それより精霊王であるお二人は兎も角、それ以外の娘達は大丈夫なのか?」
「大丈夫です。あの娘達に勝てるよな存在は[世界を蝕む闇]というモンスター以外は居ないでしょうから」
「[世界を蝕む闇]じゃと?それはどんな…」
全く知らないモンスター名を聞いたゴルドは質問を投げかけて来るのだが、俺はそれを遮る。
「[世界を蝕む闇]についてもこれから話します」
そう言うなり、俺はゴルドに向かい、真剣な表情で俺の秘密について、そして女神様の存在や[世界を蝕む闇]について話し始めていく。
俺がゴルドに話をしている一方、街の西側では、頭から背にかけて炎の鬣たてがみが伸び、背には大きな翼をもった全長10m程はありそうな巨大なドラゴンの姿になったサラが、上空から炎のブレスを吐きオークの群れを薙ぎ払っていた。
そんなサラのすぐそばには、白い鬣に青い体、細く長い耳を持ったディーがサラ同様のサイズになり、サラに向かって文句を言いつつ、サラの吐く炎のブレスによって燃え盛っている草原に向かい、水の魔法を掛けて消化作業に勤しんでいた。
そんな2匹とは違い、街の南側の上空では、全身が白い巨大なドラゴンの姿に戻ったレイが、向かって来る様々な飛行系のモンスターをブレスを吐き、次々と撃ち落としていた。
レイのブレスは炎では無い。
故にサラの様にあちこちを燃やしてしうまう事は無かった様だ。
そんな街の西側や南側で戦うサラ、ディー、レイの姿を、街の門前や西側に集まっていた冒険者達は、ただ唖然とした姿で見ている事しか出来なかった。
次回 第129話 対処のアイテムは見覚えのある物だった