第124話 戦いの傷痕~後編~
投稿が遅れてすみません。
慣れない戦闘シーンに、訂正を入れまくっていて時間が掛かってしまいました。
(昨日寝落ちさえしなければもう少し早く出来ていたなんて言えませんが)
敵をちゃんと消滅させて無い事を思い出し、止めを刺す所を訂正しました。
「おいおいマジかよ」
刃の半ばまで切り込まれながらも、何とかムスタの剣を受け止めた愛用の武器を見ながら、俺は呟いた。
「受け止めたか、どうやら我はまだこの体に馴染めていないらしいな」
どうやらまだ[世界を蝕む闇]は体に馴染めておらず、本来の力を出せていないらしい。
それでも、俺の持つ剣の刃の半ばまで切り込んでくる程の力があると言うのだから恐ろしいものである。
もしも[世界を蝕む闇]があの体に馴染みきっていたら、俺は今頃真っ二つにされていたかもしれない。
本当に危ないところだった。
だがしかし、今の攻撃を受けたことで分かったことがある。
武器タイプなだけあり、攻撃力はかなり高い様だが、ヤツの言う通り、まだあの身体に馴染めていない事により、スピードは前回戦ったヤツよりかは遅い。
ならばと、俺はミール、ノア、シアの3人に1割程の魔力を込めたクイックを使用する。
多分これでミール達もヤツより早く動くけるだろう。
俺は抱きとめていたミールの体を放しながら、3人に役割を伝えていく。
「ミール、俺があの盗賊のボスをどうにかするから、その後ミールは本体であるあの剣を全力で攻撃してくれ」
「はい!」
そう返事をしたミールは、力強い目で[世界を蝕む闇]を睨み付けながら、白銀に輝く剣を構える。
「ノアとシアはミリー達の方に被害がいかない様に、この部屋自体を魔力障壁で囲っててくれ」
「わかりました!」
「了解!」
ノアとシアも、返事をするなり、すぐに俺達の居る部屋へと魔力による障壁を張り巡らせていく。
二人での障壁ならば、大概の衝撃にも耐えられるだろう。
「話は済んだのか?」
下っ端のパワーアップを邪魔した俺とは違い、ヤツは俺達の準備が整うのを待っていてくれた様だ。
これじゃまるで俺が悪いように思えたが、今は気にしない様にするとしよう。
「ああ。準備オーケーだ!」
言い切るなり、俺は耐久値がほぼなさそうなダマスカスソードを片手で強く握りしめ、ムスタへと駆ける。
俺よりも数舜遅れ、ムスタもこちらへと駆け出し、お互いの攻撃が届く範囲になったところで、俺はムスタの腹あたりを左から右へと水平に斬りつける。
ムスタはそれに反応し、自分の本体である剣で防ぎにかかる。
最初のムスタの攻撃で耐久力がほぼ無い今の武器では、まともに打ち合う事など出来はしない。
だから俺は[世界を蝕む闇]に触れる寸前で攻撃を止め、すぐにバックステップで距離をとりながら、ムスタへと小型のファイアランスを3本放つ。
余裕のある笑みを浮かべながらも、ムスタは向かってくるファイアランスを全て避けていく。
避けられた炎の槍は、壁に激突し小さな爆発が3連続で起きる。
「そんなもの当たりはせんぞ?」
そう言うと、ムスタは闇の炎とでも呼べそうな、黒い炎の塊を手のひらに浮かべ、それを俺に向けて投げて来る。
流石にそんなものを食らいたくはないので、左側に小さくサイドステップで交わすのだが、それを読んでいたムスタは俺へと一気に詰め寄り、逆袈裟から左薙ぎへ、そして唐竹から右切りあげと、流れるような連続攻撃を仕掛けて来た。
手にあるダマスカスソードで防ぐ事が出来ない俺は、回避に徹し続けるしかない。
止まらないムスタの連撃は、その剣筋が徐々に鋭くなってきている。
[世界を蝕む闇]が、ムスタの体にどんどん馴染んでいっているのだろう。
「(あまり時間を掛けていられなさそうだな)」
そう考え思いつつも、反撃するタイミングを待ちながら回避し続けていたのだが、ついにムスタの剣先が俺の腕をかすめ、俺の表情は歪む。
その瞬間、ムスタの口元がニヤリと笑ったのが見えた。
なぜその程度で笑ったのかは分からないが、その瞬間に隙が出来たのを俺は見逃さなかった。
俺はすぐさまダマスカスソードを上段から振り下ろし、ムスタの剣を持つ右腕を切り落とす事が出来たのだが、それと同時に、俺のダマスカスソードも耐久力の限界を迎え折れてしまう。
折れた刃は弧を描く様にして床に落ち、それに続く様にムスタの右腕が床へと落ちる。
[世界を蝕む闇]の本体が身体から離れた事で、ムスタの身体は糸が切れたかの様に床へと倒れた。
「今だミール!あの本体を叩き切れ!」
「はい!」
力強い返事をしたミールは、手に持つ剣に魔力を込め、白銀の剣は青い炎を纏わせると、床に落ちた[世界を蝕む闇]の本体である剣に向け、上段から全力で振り降ろす。
ミールの全力の一撃を受けた闇を纏う剣はキン!と音を立て、刃の部分で二つに折れると、次の瞬間、腕に握られていた側の剣と折れた刃部分は青い炎に包まれ消滅した。
「やり、ました!」
ミールはかなりつらそうな表情でそう言うと、ヘナヘナとその場へと座り込んでしまう。
きっとあの一撃にはかなりの魔力を剣に込めたのだろう。
俺は座り込むミールに歩み寄り、よくやったと褒めながら頭を撫でる。
ノアとシアの二人も魔法障壁を解き、俺達の元へと歩いて来ていた。
「主様、腕の傷は大丈夫ですか?」
ノアに言われ、腕の切られた部分を見てみると、5㎝程の切り傷から血が流れ出していた。
「大丈夫大丈夫、これくらいすぐ治せるからね」
そう言って、ほら!と3人に見せながら癒しの加護を発動させる。
これくらいの傷ならばすぐに血が止まり、傷口が塞がり元通りになるはずなのだが、何故かヤツに付けられた切り傷の痕は治る事が無かった。
次回 第125話 休息を求めて
漸く登場した、主人公にダメージを与える事の出来た存在。
しかし、何話も跨いで戦う程の強さはありませんでした。
というよりも、続かせる気はありません!(予定ではラストの方以外)