第122話 2体目
ティリアの居た部屋から更に奥へと進むと、そこには2階へと続くハシゴが設置されていた。
ハシゴの先からは複数の人の気配を感じる。
どうやらこの先が最奥という事になるのだろう。
とりあえず、この先に何人いるかミールならわかるかも?と思い、一度俺達の周囲に防音魔法を発動させてから尋ねてみる。
「ミール、この上に何人居るかわかるか?」
「すみません、それほど多くはなさそうですが、正確な数までは分かりません」
申し訳なさげに、ミールは耳と尻尾をシュンとさせてしまった。
そんな姿も可愛いなぁ、なんて思っていると、先程の部屋を出発した時から俺の頭上に乗っていたサラから驚きの言葉が発せられた。
「僕の探知スキルによると、この上からは9の反応があるよ」
それを聞き、俺は再び探知スキルで確認してみるが、やはりこのアジトになっている貝殻自体の反応しか無い。
サラと俺のスキルは同じはずなのだが、一体どういう事だろうか?
サラの首根っこを捕まえ、俺の目線に合わせながらどういう事かと聞いてみる。
「それってナツキがこの周辺マップを対象に探知スキルを発動させてるからでしょ?そうじゃなくって、このアジトの内部に意識を向けながら発動しなおせば良いんだよ」
サラの言う通りに、俺は一度探知スキルを切り、アジト内部に意識を向けながら再び探知スキルを発動させてみる。
すると、この上にある空間の9の反応と、このアジト内部事態の構造が頭に浮かんできた。
どうやら俺は、探知スキルをまだまだ使いこなせていないらしい。
これは少し、自分のスキルの使い方を更に知る為に時間を作った方が良さそうだ。
そんな事を考えていると、ノアとシアがお耳と尻尾をシュンとしたままのミールを撫でながら励ましていた。
その役目は俺がしたかったと、少し残念に思いながら、俺は新たな使い道を覚えた探知スキルで知りえた、内部情報について考え始める。
この上の部分は1つのフロアがあるのみだが、広さはそれほどでもない。
むしろ、全員で突入するには狭すぎる位である。
そこで俺は、突入するチームと、ここに残るチームにわける事にした。
「それじゃ今から上に突入するけど、ミリー、エル、レイ、それにサラとディーはここでティリアを守っててくれ」
「「はい!」」
「お任せくださいマスター」
「わかった~」
「お任せください」
「よし、じゃあ行くぞ!」
そう言って防音魔法を解き、俺は2階に向けてジャンプし、それにミール、ノア、シアが後に続く。
下に残ったミリーは、そんな俺達を見て「折角ハシゴがあるのに誰も使わないんですね」と呟いていた。
2階のフロアへと着地すると、正面には7人の下っ端らしき男達が俺達に背を向けるようにして静かに直立しており、奥には白いバンダナを頭に巻き、イスに座った大柄な男が、鞘に収まった剣の柄に両手を乗せ、杖の様にして立てていた。
「誰だ貴様らは」
奥のイスに座っていた盗賊のボスらしき大柄の男が俺達に鋭い眼光を向けながら、少し喉が嗄れた様な低い声を部屋に響かせ、それを聞いた盗賊の下っ端共はこちらに振り返り、それぞれが腰につけていた武器を手に持ち構えた。
「お前たちの討伐の依頼を受けた冒険者だ」
(おかしい、反応は確かに9あったはずなのに、ここには8人しかいない。どこかに隠れているのか?)
ボスの問いかけに答えながらも、素早くこのフロアの中のあちこちを見渡すが、やはりここに居るのは俺達を除いて8人しか見当たらない。
ミール達も数が違う事に気き、周囲を伺っているが、残りの一人は見つからないらしい。
俺達がスキルにあった反応と違いを不思議に感じていると、奥に座っていた盗賊のボスが立ち上がり、杖の様に扱っていた剣を鞘から抜き出した。
抜き出された剣身には黒い靄の様なモノが纏っており、それを見た瞬間、俺は以前戦った事のあるアレに似た感覚を覚えた。
「その剣から感じるこの感覚は…まさか!」
すぐさま盗賊のボスの持つ剣を完全解析スキルで見てみると、そこに表示されたのは…
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世界を蝕むしばむ闇
(武器形態)
LV ??
HP ????
MP ????
STR ????
VIT ????
AGI ????
INT ????
DEX ????
LUK ????
スキル
????
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案の定、それはこの世界に侵入した、封印された魔物の一部が分離した内の一つだった。
「ミール、ノア、シア、気を付けろ!あの盗賊のボスが持っている剣、例の分離したうちの一つみたいだ!」
次回 第123話 戦いの傷痕